表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/61

第二話 コミュニケーションを図ってみようー1

「え、えぇっと、俺が何を言ってるかは、分かる?」


「え、あっ......はい」


良かった。


会話は成立するみたいだ。


「ちょ、ちょっと待っててね」


落ち着こう。


落ち着くんだ俺。


こういう時こそ深呼吸だ。


はーい、吐いてー、吸ってー。


もう一度、吐いてー、吸ってー。


うん、深呼吸はやっぱり読んで時の如くかな。


はい、改めて。


なんということでしょう、ビルだらけ、建物だらけの都会とは違う新鮮な空気!


街灯もなく、ありのままの大自然!


夜の冷ややかさもあってか、幽霊でも出そうな雰囲気です。


さて、周囲をご覧下さい。


祠のようなものの周囲が切り開かれており、満月なのでしょうか、天然の光が優しく照らしてくれています。


まさに月光浴!


擦り切れた心も癒されるというものです!!


うん、最高ねジョニー!


君もそう思うかい、ジェシー!


そんな、深夜にやってる海外通販のやり取りが右往左往。


んなこと考えてる場合かい。


財布も、ある。


中身も、大丈夫。


アイフォンもあるし、車や家の鍵もある。


十得ナイフもある。


なんでこんなものポケットにーーあぁ、雑誌の付録であったの入れてたんだっけ......


まぁ、概ね問題なし。


ていうか、拉致とか誘拐の可能性は低いのか。


誘拐なら財布とか、アイフォンとか取られそうだし。


「えっと、待たせてゴメン。俺は橘。橘蓮。君は?」


「私は、ネア。グラガ村のネアといいます」


ネアさん。いや、ネアちゃんかな。


うーん、グラガ村なんて聞いたこともないぞー。


ここは外国で、ネアちゃんは外国人なのかなー?


黒髪じゃなさそうだしなー。


日本語が上手だなぁーこりゃ見習わないとなあっはっはー!


ーーって、んなわけがあるかっ!!


状況だけで整理したらあれだ、いたいけな幼い女の子を無理矢理山の中に連れ込んだクズじゃん......


最底辺まっしぐらだ。


世間様にどう弁明したらいいものか。


「うぅ」


思わず、頭を抱えてしまう程度には悩み所だ。


「大丈夫ですか、頭が痛むんですか??」


「あ、いや、大丈夫、大丈夫だよ」


こんな子に心配させるわけにもいかない。


しっかりしなければ。


「ネアちゃん、いくつか質問してもいいかな?」


「あ、はい」


じゃあ、無難なところから。


明らかに見知らぬ土地だ。


俺がいたのは、東京であったはず、なのだが。


「ここは、日本、なのかな?」


「ニホン、というところでは、ないです」


日本じゃない。


なら当然、東京でもないわけで。


じゃあ、これはどうだろ。


「これ、何て言うか知ってる?」


「っわ、すごく光ってます。魔術道具か、何かなんですか?」


アイフォンは分からないらしい。


魔術道具なんて言葉まで出てしまった。


まさかとは、思う。


あんなのは、あくまでもファンタジーの要素であって、ありえない話だと思う。


けど、確認はね、大切......だよね。


多分。


「ここは、俺がいた世界とは別の世界ってことで、いいのかな?」


「あっ......そう、だと思います。多分、私が召喚しました」


なるほど、異世界召喚されたわけか。


いや、どういうことだよ。


「はあぁぁ」


体からふっと力が抜けた。


何がどうしてこうなったのやら。


「あ、あの、タチバナレンさま」


イントネーションが違う。


タチバナレンって、どこかの蓮の品種みたいだ。


確かに俺の名前は蓮の花からきてるけれども。


「レンでいいよ。大丈夫、現実をみていくらか落ち着いてきた」


なってしまったのならどうしようもない。


起こされたり、起こしたりしたミスだってしょうもないんだ。


こういうのは、気持ちの切替が大切だと割り切ろう。


さって、いくら幼いからってちゃんと見ないのは失礼な話だよな。


ーーと、ネアちゃんに顔を向けて見る。


傷みのようなものが残る、使い古したであろう服に身を包んだ女の子だが、顔立ちは整っている。


間違いはなく、綺麗な顔立ちだ。


きっと、数年後には美人になるね。


所々で擦り傷や、葉っぱとか小枝をつけている辺り、相当急いでいたのかもしれない。


「改めて、レンだよ。ネアちゃん、でいいかな?」


「はい、レンさま」


「さま付けはいただけないな。慣れてないんだ」


「じゃあ、レン、さん」


「うん。ところで、ネアちゃん。こちらの世界では、君みたいな女の子が、こんな夜に......ここ、山の中でいいのかな。こういうところにいるのは、安全といえるの?」


「......いえ。危ないと言われています」


「なら、お父さんやお母さんだって心配するはず。早く戻ってあげることを進めるよ」


「危ないことだって、分かってます!!」


「おっ」


しまった、配慮が足りなかったか。


「すみません、急に大きな声を出してしまって」


「いや、大丈夫だよ。事情を説明してくれるかい?」


「村が、襲われるんです」


「襲われる。誰に?」


「ゴブリンの、軍勢に」


「ゴブリン、ねぇ」


緑色で、人型の原始的な生物。


イメージだけだと、こんぼうを振り回していたり。


「お願いします。村を救うために力を貸して下さい!」


俺がゴブリンのイメージを固めるより先に、ネアちゃんは長い髪を月明かりに濡らし、綺麗に頭を下げていた。


『皆のこと思ってるこーんな小さな子のお願い断ったら、死んだ後でもぶっ殺す!』


なんて、あいつの物騒な声が聞こえてきそうだ。


ファイティングポーズまでとってそう。


そんなことを考えたら、悩んでいること自体がどこか可笑しくて。


少しだけ、少しだけ口の端が上がってしまっていたように思う。

※何ごとも、確認は大切だと思います。

 できているかどうかは別として......

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ