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第十一話 剣の扱いと考察する無能

「剣でしたら、主人の使い古しでよければ」


という好意に甘え、武器は手に入れることができた。


これは所謂、ロングソードというものだろうか。


「刀、ではないけれど、手ぶらよりマシか」


古武術を習っていた関係で、どうしても刀に比べてしまうが、ないよりは断然いいはずだ。


「少し、試しで振ってみますね」


外に出て、剣を構える。


刀のように正眼で構えてみるのだが、刀身がやはり重い。


バランスをとれば、もう少しだけ重心を落として……うん、これくらいか。


呼吸を落とす。


肺に入った空気を全て出し切るように、全てを出し切るように。


ゆっくりと目を閉じて、ゆっくりと呼吸する。


流れを感じる。


気配もある。


変わるのは、魔力というものがある程度。


剣もまた、体の一部。


切先を高く持ち上げる。


意識するは、空に繋がるように。


そして、振り落とす。


何千、何万と繰り返した作法を持って、異国の剣を振るう。


縦に、横に、斜めに。


剣を扱うに値するのか、剣に問うようにして。


この手は無し。


剣の先まで。


円の回転を描くようにして。


腕だけで振るうのでなく、体全身を使って。


扱うのではなく、扱われるでもなく、互いが一つであるかのように。


――遠いようで、近いところに、石の音がする。


……っは、夢中になってしまったようだ。


愕然とされてるし。


いや、お恥ずかしい。


「お見事、です。私は、剣には疎いのですが、レン様のいらっしゃったところでは、皆様がそのような剣を振るわれるのですか?」


「いえ、違いますよ。場所や伝えというもので、少しずつ型は変わっていますし、習う人もそうじゃない人もいますから」


「そうなの、ですか?」


「はい。私の師は、剣の他にも、体術――あぁ、体の作りや構造、骨や筋肉を生かした術もやっていまして。棒切れ一本で圧倒されてたくらいなんですよ」


極心空手に、合気道の経験者。


オマケに、古流体術に加えて、剣術と居合いの達人。


刀で刀を叩き切った化物だ。


噂によると、どこぞの国立大学のプロテクトを組んだとか。


IT、医療技術と何でもござれな頭は回るぶっとんだユーモアのはげ頭。


ラジオ体操第一ぃ~


みたいなノリで、


はーい、今から腹切切腹の練習ーっ! 


とかいわれたっけ。


面と向かって、クソじじいと言っていたのは俺だけだったみたい。


定番のやりとりは、


「このクソじじい」からの「なんだこの将来のクソじじい」


全く、本当に困ったものだあのクソ爺には。


元気でいるだろうか。


元気でいてくれるといいんだが。


「そうだ。ノアさん、良かったら魔術を見せていただいてもいいですか?」


「え、ええ。少し、離れていてください。あの木に向かって、土の弾。アースバレッドを放ちます」


土の弾。


なんだか仰々しい。


いや、夢やロマンがあるというべきか。


「大地よ、魔球となりて我が敵を撃て。アースバレッド!」


ふわっと、ノアさんの前に文様のようなものが構成された。


ぱっとみた感じではα、β、Θ、ω、T、Bみたいな6文字。


その中心に土が集まったかと思えば、球体となり木にぶつかり、木の葉を舞わせている。


「すごい」


「「え?」」


親子で驚かれて、


「え?」


今度は、こちらが驚く番だった。


「えっと、あれが、土系初級魔術のアースバレットです」


これで初級らしい。


中級とか上級になったらとんでもないことになりそうだと予想はしておくことにした。


ともかく、気になったことは実践しておくこと他にない。


「問題なければですが、今度は土だけって出来ます?」


「えぇ、はい。大地よ、我が前に姿を表せ」


魔術陣に浮かび上がったのは、α、β、Θ、ω、Eの五文字。


つまり、球もしくは弾丸はBってことらしい。


バレットかな。


Eは土なのかな。


「ルゥ、水だけ出すってできる?」


「デキルー。ミズ、デロー」


同じように試してもらえば、α、β、Θ、ω、Wだ。


ふむふむ。


じゃやっぱり、Tは大地とか土。


Wのような文字が水という認識で間違いない。


α、β、Θ、δの四文字は恐らく、魔力の収集、土や水、形状の構築、その形状を維持、そして発動ないし、開放といったところだろうか。


そう仮定しておこう。


プログラミング言語のようなもの。


アレ、意外とすんなり?


ならば、先ほどの水晶の原理はどうだろうか。


魔力を収集して、感知。


その者の属性に合わせて光る。


あるいは、色を溶かすようにするもの?


絵の具を入れる水が変わるように、かな。


つまり、何かしらその人特有の魔力。


毛並みの違いというもの。


ということは、だ。


「すみません、先ほどの水晶、また見せてもらってもいいですか?」


「え、はい。どうぞ」


水晶を持ち上げてみる。


見た感じただの透明な球体。


だが、光にかざしてよく見ればそこにある。


うっすらと刻まれた模様。


αのような文字が見られる。


「なるほど、簡単な謎々みたいな感じだったかな」


「レン様、何を」


「あ、もしかしたらと思ったので少し。ルゥ、もう一回、魔術で水を出してもらえる? 魔術の陣のところに、この剣を少し入れるけど、怪我はさせるつもりはないから」


「ワカッター。ミズー」


ルゥが言うないなや、空中に陣が構成される。


陣の構成自体は、早い段階で行われているらしい。


その浮かび上がった文字の一つ、αに剣を通してみた。


俺の予想が正しければ、これでいいはず。


「デロー」


と掛け声はあるものの、出ない。


うん、間違いない。


「デナイー。ミズデナイー」


「うん、そうだね。水でなかったねー」


「レンさん、今、何をされたんですか?」


「あぁ、ネアちゃん。これはね」


既に出ているであろうと予想して説明してみる。


いやだって、こんなのはとっくに出てそうだしね。


「魔術が発動する前に、魔力が集まるのをやめさせたんだ。水を出すのに必要な魔力が集まらないから水が出なかった。多分、それだけだよ。同じような原理で、魔術を発動させない術があると思う。もうとっくに出てるものだとは思うけどー」


「いえ。いいえ。レン様、違います。それは違うのです」


「え、どういうことです、ノアさん?」


「魔術を止めてみせる。あるいは、その効果を消滅させるのは、同じ領域の魔術をぶつけるという方法でしか、私も知らなかったのです」


「はぁ……つまり?」


「鉄の剣で魔術の発動を止めたのは、レン様が初めてということになるのです」


はぁ、そうなんですか。


こんな単純なものでそうなるならば、この世界の魔術師はさぞぼったくりなんだろう。


隠匿してる可能性だってある。


下らないマネで汚い金集めをしているようならぶん殴ると、心のメモ帳に刻み込んでおくことにした。


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