プロローグ
「もう、5年も経つんだな」
目前に広まるのは、西の王国ゼネルス。
その障壁。
門前には軍が滞在。
それはもうご立派な隊列を組んでのお出迎え。
もちろん歓迎ではなく、危機感を察してだと思う。
その証拠に、前列じゃ銃とか引っ張り出してる。
弓はまぁ、分かるし納得もする。
銃とかさ、誰がその知識持ち込んで作らせたわけよ?
魔術のある世界に銃とかさ。
いや、多分転生した勇者とかなんだろうけど。
余計なもの残しやがって。
ないわ。
魔術で発展している文明にんなもん持ち込んだらどうなるか、分かるだろうに。
火縄銃っぽいのがまだ救いだけど、ないわ。
内通者がいたんだろうな。
仲間も連れていたなら、どうとでもなったのは間違いないんだろうけど。
これは、俺個人のわがままだって、一人で抜け出してきたもんな。
「白旗でも掲げたら......って、そもそも白旗になるようなものがないか」
諦めよう。
諦めて、自分なりの筋を通すことにしよう。
片手に刀を携えながら一礼。
戦いたいわけではない。
人殺しなんかゴメンだ。
だけど、譲れないものだってある。
村を蔑ろにし、村の長を殺め、妹のように慕う子の両親は殺された。
その後も辱めを受けたと聞いた。
本当ならば、許せない。
許せるはずもない。
納得のできる理由が欲しい。
求めているのはそれだけだった。
村の多くの人達に助けられている。
家族だと、思ってる。
俺にだって、守りたいものがあるのだから。
こっちに来る前は、何もかも失ったかのような錯覚に襲われてた。
それでも、仕事をして、食べて、寝て、生きていた。
空っぽだった。
惰性で生きている。
いや、生かされてしまっている。
そんなことを考えてしまうくらいには、見失うものが多かった。
大事な人は、一度失ってしまった。
だから、二度目は、三度目はもう嫌だと、大切なものを作ることをやめた。
感情なんてものはいらないと、何度だって捨てたいと願った。
いっそのこと、機械にしてくれと願ったことだってある。
でも、それはきっと、自分を騙すための嘘だった。
だって、俺はこんなにも......大切だと思えるもののために、戦うことができているのだから。
それはきっと、この世界に呼ばれた意味なんだと思う。
神様というのが気まぐれでくれたチャンスなのだと、そう思う。
とは言えーーいざ戦闘になったらまず無理っす。
無能ナメんな!
魔術が使えないくらいなんだ!
って考えてた時期もありますが、ぱっと見500人とか明らかに越えてますよね。
普通に考えてまず無理。
いやーーでも、行っちゃうんだけど。
話し合いたいだけで、敵意を向けるつもりはない。
売られるなら、全力で買い占めるけど。
ま、その時はその時だ。
死ぬ覚悟だってできている。
余命5年って言われてるし、それが早いか遅いかってもんだ。
背水の陣ここに極めりってね!
「兵、闘いに挑む者、皆陣列の前に在り」
心を落ち着かせるために唱える。
深く呼吸するよう、静かに。
昔を生きた人達は、こんな気分だったのかと思う。
大切なものを傷つけられ、踏みにじられ。
それでも、大切なものを守るために。
心にはもう、迷いはない。
さて、一歩踏み締めて見ましょうか。
「グルガ村が無能者、推して参る」
※俺TUEEE作品ではありません。
単独無双とか無理ゲーな作品ですが主人公が初っ端から暴走しています。
それでもよろしければ。。。