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町で用事を済まして

「あら、エリスまで戻って来ちゃったの。」

「うん、向こうに居てもまだ私は仕事にならないから、カンプにくっ付いて来ちゃった。」

「そう、それはなんだか嬉しいわ。 すぐにまた向こうに行くの?」

「んーん、3日ほどこっちに居るつもり。」

エリスはおばさんに自分たちの予定を話している。 おばさんが機嫌が良い感じなのは、単純にエリスも来たからというだけでなく、やはりちょっと寂しかったからだと思う。

なんだかアークとリズも入れて6人で食事したりするのが普通になっていたから、それが急に2人になったら、それはやっぱり寂しいと思う。


翌日、僕らはまずやって来たラーラたちと話をする。

まず最初にラーラだ。 僕とエリスは馬車の中で、今回馬車と馬を買うのに、ラーラとラーラの旦那さんに一緒に立ち会ってもらおうと話し合っていた。 今度買う馬車は、主にラーラの旦那さんに御者として乗ってもらおうと考えているので、特に馬はラーラの旦那さんとラーラに見て選んでもらいたいからだ。 ラーラの旦那さんには、まず最初には御者として働いてほしいという話は、僕たちが最初の視察から帰って来た時に、ラーラを通じて頼んであり快諾を得ている。

「ラーラ、明日、ラーラの旦那さんに使ってもらう馬車と馬を買いに行きたいのだけど、ラーラとラーラの旦那さんの都合はどうかな。 もし明日都合が悪いなら、今日これからか、明後日にでも構わないのだけど、ただその場合明日ほど時間はかけられないけど。」

「カンプ、馬車と馬を買うって、どういうこと。 馬車と馬は視察に行く時に必要だからってもう買ったでしょ。」

僕の言葉に、ラーラが何を言っているの、という感じで反論して来た。

「ラーラ、いざ本当に向こうに行ってみたら、常に向こうで馬車が1台は必要なことが分かったのよ。 最初の計画では、買ってある馬車と馬をラーラの旦那さんに使ってもらうつもりだったのだけど、それはずっと向こうの領地で使いたいから、ラーラの旦那さんが使う馬車と馬も必要になっちゃったのよ。 それで私も、その買い物に付き合うためにも戻って来たのよ。」

「エリスが戻って来たのは、そういう意味もあったのか。 私は子供がまだだと、エリスはまだカンプにくっ付いていたいのかと思ったわ。」

「ま、確かにそれもあるけど。 それはラーラも同じでしょ。」

「私は最近は、家に戻ると子供が動き回って手がかかるようになってきたから、旦那の方には気が回ってないかも。」

「そういうものなの?」

「ま、そんなものよ。」

うーん、男としてはなんだか悲しい話というか、どう評して良いのかわからない話になってきているぞ。

「で、ラーラ、時間はどうなのかな? 取れるのかな?

 取れないと僕とエリスとで適当に買うことになるのだけど。 あ、ラーラは一緒に行けるか。」

「カンプ、ちょっと待ってて。 旦那のところに行って、聞いてくるわ。」

ラーラが一旦、旦那たちの元に戻って行った。


ラーラが不在の間にフランとリネとも話をする。

「2人とももう移住の準備は出来ているかな?」

「はい、大丈夫です。 もう持って行く荷物もまとめてありますし、家族との別れも済ましてありますから、いつでも向こうに行けます。」

フランがそう答えた。

「1日出発日が後ろにズレちゃったけど、大丈夫かな ?」

「はい、問題ありません。 今まで住んでいた場所は契約期間はあと10日残っていますから。 何も問題ないです。」

「でも生活用具とかももう荷物にまとめちゃったんじゃない?」

「あ、それも大丈夫です。 砂漠の中間点で必要だからと思って、私も携帯用の調理器も買いましたから。

 実は、女の子らしくないと言われるんですけど、私もああいうギミック好きなので、欲しくもあったんです。」

リネがそんなことを言った。 携帯用調理器を女性に欲しかったと言われたのは初めてで、ちょっと嬉しかった。


出発日が1日ズレたのは、ダイドールが王都の貴族局に行くことになったからだ。 僕とエリスは貴族になる前、いや家名を名乗る前に結婚していたから、こういう面倒はなかったのだが、貴族が婚姻する場合、貴族局に届け出をして許可を受けなければならないことになっている。 何か余程特別な理由がない限り、届け出された婚姻の許可が出ないことなどないから、届け出を出せば終わりなのだが、とにかく届け出を出さねばならないことには変わりない。

ダイドールはアークとリズにその届け出を頼まれたのだ。 お役所仕事の例に洩れず、単なる届け出なのだが1日仕事である。 そしてせっかく王都に行くのだから、ダイドールにはカンプ魔道具店の傘下になった元王都光魔導師組合や、そこと無理矢理な契約で縛られていた関わりでそのまま傘下になった魔道具店を見て回ってきてもらうことにした。 一応、僕たちの店の傘下となっているからには、それらの店の様子も気にしなければならない。 書類として届く売り上げなどは悪くないから問題は起きていないのだと思うが、実際に会って話をしてみることは重要だからだ。 ダイドールは王都で一泊して、それらの仕事をこなす。


僕とエリスは、戻ってきたラーラから、ラーラの旦那さんが翌日を空けることが出来たと聞き、その日は組合に行くことにした。 組合にはこの間に作った交換の魔石を持って行く、全部で210個だ。 内訳は僕が60個、アークとリズが20個づつ、ダイドールが30個、そしてフランが80個だ。 この他に僕は火の魔石を20個、リズは光の魔石を25個作っている。 アークが20個と少ないのは、領地に行く時の馬車の中で作った量だけで、その後は魔力を他の事に使っているからだ。 僕の量が他より2人より多くなっているのは、領地への行きと戻りの時の両方が入っているから。 そしてフランはこの10日、全く休まずに働いた結果らしい。

「フラン、10日間も休みなしに働いているのは、ダメだろう。」

「カンプさん、そんなこと言ったって、リネが休みなく水の魔石を作っているのですもの、私も仕方なしにその時間に付き合うからそうなっちゃうのよ。」

そういえばフランはこの10日間でまた水の魔石を60個作っていた。 うん、休みなく作っていたのね。


組合で、魔石を納め、いつものようにエリスは僕たちの店の専属になっている会計さんの所に行き、僕は組合長の部屋に行く。

「おう、カランプル、領地の方はどうだ? 何にもない土地のようじゃないか。」

「ええ、組合長、何もありません。 領地って言ったって、範囲が広いだけで、領民は200名少し超えるくらいで、3つの村に分かれているだけのほとんど砂漠ですから。」

「領主様も大変だな、そんな所にこれから5年も住まなくてはならないのだから。」

「まあ、そうなんですけど、王都から遠く離れますから、あまり貴族とか関係なくなるのは嬉しいです。 僕、やっぱり貴族とかって慣れないんですよね。」

「はははは、カランプルは貴族は性に合わないか。」

「どうも、そうみたいです。」

「ところでカランプル君、領地の方に組合の土地を確保していただけましたか?」

「はい、今日はその話をしようと思って来たんです。」

「ああ、そうだった。 前に話していたことと、1つ変更点ができたんだった。 それをカランプルに伝えておかなくちゃな。

 カランプルはこの組合の正式名称は知っているか?」

「はい、流石に知ってます。 東魔技師冒険者組合ですよね。」

「ああそうだ。 それでお前の領地に作る新しい組合の名前をどうしようかという話になったんだが、ここで1つ問題点が見つかった。」

僕は何が問題なのだろうと、不思議な顔をしていると。

「交換の魔石は全てこの組合の管轄下に置くという取り決めがあるじゃないか。 お前さんらが領地に行って、そこの新しい組合との取引がほとんどになったら、その部分がややこしくなって困るんだよ。」

あ、なるほど、確かに交換の魔石は全てここの組合の紋が特別な方法で入れてあり、ナンバーを入れて登録管理している。 新しい組合と主な取引を全て行う事になっても、その部分を壊すと、交換の魔石の管理が難しくなるのだ。

「なるほど、確かに問題かもしれないですね。」

「という訳で、お前の領地に作る組合は、ここの支部とする事に決まった。 だから正式名称は東魔技師冒険者組合ブレイズ支部だな。」

「何なんですか、そのブレイズ支部っていうのは、単に支部でいいじゃないですか。」

「ブレイズ子爵領の支部だから、ブレイズ支部でおかしい事はないだろう。」

くっそー、組合長、とても良い笑顔でそんなことを言う。

「カランプル君、大丈夫ですよ。 ここだって正式名称が使われることなんてほとんどないのですから、カランプル君の領地に作った組合も、単純に組合とか、支部とか呼ばれるようになりますよ。」

「という訳で、そいつの呼び名は向こうに行けば、支部長だな。」

「はい、それには同意です。 支部長さん、これからもよろしくお願いします。」

「何だかそんな風に言われると、照れてしまいますね。

 こちらこそ、よろしくお願いします。 とりあえずは私と今エリスさんと話しているカンプ魔道具店専属会計が、そちらに行く事になります。」

「えーと、支部長さんのご家族は来られないのですか?」

「ええ、とりあえず向こうの様子が分かるまでは、家族はこっちに残して私だけそちらに伺うつもりです。 落ち着いてから、向こうに呼び寄せようと思っています。」

「そうなんですか、大変ですよね。 僕は日常生活はエリスに頼り切りなので、アークにまでバカにされるのですけど、1人の生活って考えられないんです。」

「ふふっ、そうですね、カランプル君はエリスさんに頼りきりですからね。 でもまあ、私も1人とはいっても会計の彼女も一緒ですし、将来的には支部も5-6人の規模で考えているのですよ。 カンプ魔道具店の仕事量を考えれば、そうなるのもすぐだと思っているのですよ。」

「そうならば良いのですけど、なかなか厳しくて、まだどうなるか分からないのですけど、なるべく早くそうなるように努力します。」

「おっ、カランプル、今のは領主らしい言葉だな。」

「もう、組合長、からかわないでください。」


それからは具体的に領地の方に組合支部を作る話になった。 僕は持ってきた計画図を取り出して、組合支部を作る場所を教えたり、現状と将来の計画を話したりした。 砂の吹き込みを防止するために建物の周りに高い塀を作る必要があることや、下水処理の仕方や、それを利用して木を育てる事などの場所の特殊技術なども教えた。 それから移動時の注意や砂漠の道の中間点に泊まれる小屋がある事も伝えておく。


「それで、いつ頃領地の方に来られますか。 僕たちとしては、なるべく早く来ていただけると、魔石の問題がなくなるので嬉しいのですけど。」

「そうですね。 組合でも魔石の流通が滞ってしまう事は避けたいので、なるべく早くカランプル君の領地に支部を作りたいと考えているのですよ。 今現在は6日後にここを出発しようと考えています。 組合に所属する土の魔導師を2人ほど連れて行きますから、3日もあれば建物などの形は整うでしょう。」

「はい、了解しました。 向こうでお待ちしてます。」


次の日はラーラ夫婦も一緒に馬車と馬を買いに行った。 ラーラの旦那さんはペーターさんというのだと言う。

「お前、子爵様夫妻を呼び捨てで話し掛けるって、いくら何でも不敬じゃないか。」

ペーターさんが、ちょっと焦った調子でラーラを叱っている。

「ペーターさん、気にしないでください。 僕たちとラーラは、僕が爵位をもらうずっと前からの友達ですから、互いに呼び捨ては普通なんです。 何の問題もありませんから。

 それにペーターさんも僕の事は、子爵様とかカランプル様とか呼ばないで、ラーラと同じようにカンプと呼んでくださって構いませんから、エリスも同様です。」

「だから言っているでしょ、子爵夫妻って言っても、ずっと前からの友達なんだって。」

「まあ、それは知っていたけど、それで良いのかな。」

「はい、全然構いませんよ。 私も様付けで呼ばれたりすると、逆に困ってしまいますから。」

エリスもペーターさんにそう言うと

「それでは、カンプさん、エリスさんと私も呼ばせていただきます。」

「はい、それで全然構いません。」


ペーターさんが選んだ馬車は、僕たちが買った馬車よりも少しだけ荷馬車よりの馬車だった。 つまり御者席の後ろに人が乗る部分があるのだが、その部分が少し狭くて、その代わり僕たちが買った馬車にはついていない荷台が後ろに付いているのだ。

僕たちの馬車は人が乗ることが主目的なので、荷物は屋根の上に乗せるか、人が乗る部分の片方の椅子を跳ね上げて載せるかしかできないが、ペーターさんの選んだ馬車は最初から荷台があるから、確かに使い勝手が良さそうだった。 その代わり人が乗っての居住性は落ちるけど。

馬も気性の穏やかそうな馬が見つかったので、ペーターさんも満足そうだった。

「これから領地に向かうまでの間に、馬と馬車に慣れておきますよ。」


そしてその次の日には、戻ってきたダイドールと共にフランとリネの荷物を荷車に積んだり、残った雑事を大急ぎで片付けて、またその次の日の朝には慌ただしく領地へと向かった。


中間点の小屋に新たに3箇所植えておいた種は、もうしっかりと腰丈の木になっていた。 毎度のことなのだが、本当にこの木の成長速度の速さには驚いてしまう。 この調子で成長したら、一体どれだけの巨木になるのだろうかと思うのだが、村長によると決してそんな事はないという事だ。


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