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ズル

二つ目のパン焼き窯を納入してから、僕は毎日魔石を手に入れる為火鼠狩に出ている。

二つ目の為の魔石がまだ5個足りていないし、それ以外の普通のお客さん用の魔石も月に5個必要だ。

いや違った、エリス家のパン焼き窯は最初に作った交換式だから4個が普通用になる訳だけど、繰り返し使える魔石の予備がないから、そっちがもう1個で、えーと、結局とにかく10個の魔石を早急に用意しなければならない。

狩をする以外にも、魔石に回路を組み込んだり、それまでのお客さん用の普通の魔石には自分で魔力を込めなければならなかったりで、それから半月以上休みなく働く羽目になった。

そして20日が過ぎたところで、やっと魔石の数の帳尻が合って、ゆっくりした時間が作れるようになった。

この間、繰り返し使える魔石に魔力を込めるのは、アークが一手に引き受けてくれていた。

流石にエリスの家の分は頼めないから、残りの8個をアークが込めたことになる。何だか半分の利益しかアークに行かないのが悪いみたいだ。

「何言っているんだよ。 魔石用意するのは全てカンプに任せちゃっているし、窯作りの代金も大きくもらっている。

 俺の方が本当に申し訳ないと思っているよ。」

アークも半月を過ぎたところからは狩にも行ってくれている。


僕は一月の狩で10個の魔石を得ることを目標とすることにした。

この数を狩、必要な魔石に魔力を込めたり、回路を組み込んだりすると、僕の大体25日分の魔力となり、少し日常に使っている魔力を考えると僕の能力目一杯なのだ。

アークは今まで自分の顧客を持っていなかったから、その分の余力がまだあり、15個の魔石を狩るつもりだと言う。

リズは元からの顧客で8個の魔石を月に使っていて、まあ経済的にはそれなりにほぼ安定していたので、魔石狩りには乗り気でなかったのだが、一月くらい経った頃から急に狩に付き合うようになった。 新商品を考えているのだとのことだ。


まだまだだけど、少しづつ僕たちは仕事のサイクルが出来てきた。

そんな時に、またおじさんの店から使いが来た。

急いで僕はおじさんの店に向かった。

そこにはどういう訳か、ベークさんと共に二人の男性が待っていた。

「カランプル君、こんにちは。

 また、お客さんを連れて来ましたよ。 こちらは隣町の同業者なんです。

 この二人もカランプル君たちの作るパン焼き窯が欲しいとの事で案内して来ました。

 話を聞いてあげてくださいね。」


隣町のパン屋さんが僕たちのパン焼き窯を買ってくださるというのはとてもありがたいのだけど、一つ大きな問題があった。

それは2軒のパン屋さんに同時にパン焼き窯を設置して欲しいという要望だった。

何でも、意図した訳では全くないのだが、この町の後から設置したパン屋さんは、窯の設置を待つ間、店の経営がとても大変だったらしいのだ。

単純にお客がベークさんの店に流れただけでなく、なぜベークさんの店のように一度にたくさんのパンを店頭に並べないのだという苦情がとても多くて苦労したらしい。

流石に完全に同時ということは無理だが、同じ日を休みにしてもらい、午前と午後でそれぞれの店に窯を設置することになった。

期日は急いで欲しいとの事で10日後と決まった。

急に忙しくなった。


僕たちにはもう一つ問題があった。 魔石が足りないのだ。

一生懸命に魔石を狩っていたつもりなのだが、手元にある自由になる魔石は全部合わせて10個しかなかった。

「仕方ない。 残り10個は買おう。」

魔石を買い、ミスリルを買ったら、僕たちは金銭的余裕が全くなくなってしまった。

「またまた、ごめん。 俺全く金を出すことができなくて。」

アークがまた小さくなって謝っているが、それは分かっていたことだから、何も問題ないと僕とリズで慰めた。


もう一つの大きな問題は、魔力を魔石に蓄える時間がないことだ。

リズが焦った声で

「今から誰かに魔力を込めてもらうといっても、そんな人を探している余裕もない。

 どうしよう、最初少しだけ魔力を込めた魔石で猶予をもらうしかないかしら。」

「いや、僕にちょっと考えがある。

 やりたくなかった奥の手だけど、背に腹は変えられない。

 今回だけは、ちょっとズルをする。」

僕はリズにお願いをする。

「魔力が無くなると色が変わるライトと逆に、魔力がほとんど一杯になったら色が変わるライトってできるかな。」

「できるけど、そんなものどうするの?

 魔力を魔石に込めていけば、入らなくなるから分かるでしょ。」

「ちょっとそういうのが、どうしても必要なんだ。」

「ま、良いけど。」

僕は木の棒の天辺に魔力を吸収する魔石を付け、棒の真ん中あたりにリズに作ってもらったライトと魔力を貯める魔石を付け替えられる魔道具を作った。

僕はその魔道具と、魔力を貯める魔石を持って、火鼠の元に行った。

僕は火鼠を怒らせる。

火鼠は魔力を放出して攻撃してくる。

いつもはその魔力を自分の魔力で相殺して、火鼠の魔力切れを待つ訳だが、今回は棒に付けた吸収の魔石で火鼠の放出する魔力を吸収して、貯める魔石に魔力を貯める。

火鼠が魔力切れで倒れた。


僕はついでに火鼠の魔石を取り出した。

そこで僕は気がついた。 これなら魔石買う必要なかった。


最初は怖いので、1匹だけの火鼠を狙ったのだが、魔石1つに貯えねばならない魔力は火鼠4匹分だ。

すぐに僕は2匹でいる火鼠を狙うようになり効率が上がった。

それ以上は吸収の魔石が魔力を吸収しきれるかが不安でやめておいた。

実は2匹を最初狙った時もかなり緊張したのだ。


8個の貯める魔石に魔力を貯めるのに3日かかったが、それと共に32個もの魔石のストックが出来た。 これで当分は困らない。

8個に魔力を貯めたのだが、実際は怖いので完全には貯めきっていないので、不足分は後から3人で補った。


10日のうち1日は、僕たち4人で隣町に行き、下見をした。

また前日にアークは窯の材料となる土や白砂をそれぞれの店に運んでいた。

窯の設置は予定通り、午前と午後に1窯づつ設置することができた。

今までの窯との違いは、魔力切れの警告ランプが点くタイミングだけだ。

隣の町なので、魔石の交換に時間がかかることになるので、その分早めに点灯する様に調節したのだ。


翌日、僕はエリスを連れて組合に行った。 ちょっと憂鬱だ。

組合の中に入るとすぐに声を掛けられた。

「やあ、カランプル君、この間魔石をたくさん買って行ったから、そろそろ来るかなと思っていましたよ。」

「はい、今度は隣町にパン焼き窯を売ることができました。

 その話はエリスとお願いします。

 僕は、また新しい魔道具の登録何ですけど・・・。」

いつもの職員さんがちょっと小声になった。

「カランプル君、また問題がある魔道具なの?」

「はい、すみません。 かなり問題かな、と。」

「カランプル君、ちょっと待っててね。 また組合長に話してくるからね。」

エリスは違う担当の人を付けられて、今回の貯える魔石の組合に支払う分の話をしている。

僕はエリスに、「そっちが終わったら先に帰っていて、たぶんこっちは話が長くなると思うから。」と言っておいた。


「おい、カランプル、また問題がある魔道具を作ったって。

 今度はどんな問題がある魔道具を作ったんだ。

 あらためて問題があるということは、今までの問題とは違うんだな。」

組合長は最初から僕に雷を落とす気満々な感じだ。

僕は、火鼠の魔力を吸収した棒の魔道具について説明した。

「そういうことか、火鼠の数が急に減ったという報告があったが、ありゃカランプル、お前の仕業か。」

「え、そんな報告が組合にあったんですか?」

「まあな、火鼠を専門に狩っている冒険者もいるからな。」

「すいません。 そこまで考えていませんでした。」

あ、もう1発目を落とされた。

「全く32匹って、普通お前みたいなレベル1の魔技師だったら1ヶ月毎日狩に行って、やっと狩れるかどうかって数じゃないか。

 それをたった3日で、お前はその道具のお陰でそんなに苦労もなく、狩ったという訳か。」

「すみません。 狩らずにそのまま放置しておけば、まだ良かったですね。」

「そういう問題じゃねえ。」

雷2発目。

「とにかく、今回の魔道具も登録はするが、極秘扱いだ。

 お前も絶対とは言わないが、なるべく使わないようにしろ。

 それから人には見られるな。

 わかったな。」

雷3発目。


僕も家に戻ると、もうアークもリズも家に来ていた。

売った窯が4つになり、毎月交換する魔石が16個となったので、アークに利益を優遇する必要がなくなったのだ。

これからどの様に利益を配分するかを四人で話し合うのだ。

「今回、魔石やミスリルを買うお金に苦労したわ。

 やっぱりお店としてある程度お金を用意する必要はあると思うわ。」

リズが最初にそう言った。

「今回は考えてもいなかった2窯同時受注だったってこともあるけど、やっぱり店としてのお金は必要だと私も思ったわ。」

エリスも賛成する。

「えーと、出る利益って、竃を売った時の利益の他は、毎月の交換する魔石の利益よね。

 私、魔石に魔力を込めたら、込めた人が普通の魔石を売った時に得る利益は取るべきだと思うのよね。

 問題はその分を引いた後の利益なんだけど、竃を売った利益もそれも、半分はお店のお金としてキープして、残り半分を5等分して、私とアークとエリスが1、カンプが2でどうかしら。」

「いや、何で5で割ってるんだよ。 普通に4で割ればいいだろ。」

僕は反対した。

「それはどう考えてもおかしいわ。

 この店はカンプの店なんだし、魔道具の回路もほとんどはカンプが作っている。

 これでカンプと私たちが同じ評価では、逆に私は居心地が悪いわ。」

「俺は1/5はもらい過ぎな気がする。」

「それを言ったら、私も同じだけ貰えるのはおかしいわ。

 私は魔法が使えるわけでもないのに。」

「アークは、今この店唯一の商品を作るのに必要不可欠なことでは私と同じよ。

 エリスは面倒なことを一手に引き受けてくれているのだから当然よ。」

うーん、一応僕の店ということになっているのだけど、何となく発言権が低い様な気がするのは何故だろう。

結局リズとエリスの話し合いで物事は決まっていくんだな。


こちらはまだ12話目ですが、

こっちは150話を越えました。 R18規制に引っかからない方はこっちも読んでいただけると嬉しいです。

ただし、R18要素はほとんどありません。

「気がつけばラミアに」  https://novel18.syosetu.com/n9426fb/


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