アルレシア
「おにーさん探しているの? じゃあ私も探すの手伝ってあげるよ!」
「ふんっ、手伝いなんて必要ないわ。兄の場所が分からなくて妹なんてやってられないわ。それじゃ」
女の子はスタスタと人混みの中へと歩いていった。
「なんだったんだろ? あの子?」
しかし、しばらくすると別の方向から人混みを抜けて先ほどの女の子がルナの前に現れた。
「あ……」
「あっ……」
二人の目が合い、しばらく沈黙が続いた。そして先に女の子が言葉を発した。
「……ちょ、ちょっと人が多くて動きづらかっただけよ。別に道が分からなかったわけじゃ……。し、仕方ないから道案内の役をやらせてやってもいいわよ」
ルナは笑いを堪えながら、
「仕方ないなぁ。こんな小さな子を放っておいたらマカナ学園の生徒の名折れだしねぇ」
「ちょっと子ども扱いしないでくれる?私はこれでも十六よ」
「どっちにしても子どもじゃん」
と、ルナは噴き出した。
「うっさいわね! もう、さっさと案内しなさい……えーと……」
「ルナだよ。あなたは?」
「アルレシア」
「じゃあ行こっ! アルちゃん!」
ルナはアルレシアの手をとって人混みの中へと突っ込んで行った。
「ねーねーアルちゃん。お兄さんってどんな人なの?」
しばらくしてルナは思い切って聞いてみた。
「な、何よ急に。あとその呼び方やめて」
「だって探そうにも私お兄さんのこと知らないし、何か特徴があればなーって」
ルナの言葉にアルレシアは考え込み、
「そうね……私の兄はとても優しくてみんなを引っ張ってくれて、だけど時々目的の為に周りに迷惑をかけて困らせるような人よ」
アルレシアは不敵に笑う。
「だけどそれもみんなの為に頑張ろうとした結果迷惑かけたのならしょうがないんじゃない?」
「そんな訳ないでしょ」
急にアルレシアは立ち止まり、そんなことを呟いた。
「え?」
雰囲気の変わったアルレシアにルナは少し驚いて振り返る。
「兄は私達を裏切ったの」
「それってどういう――」
――ワァァァ――
ルナが聞こうとした時、大広場で歓声が湧き上がる。
「ん? なんだろ?」
気になってアルレシアは大広場に向かう。ルナはアルレシアの兄について聞きそびれてしまったが、ルナも大広場の方に仕方なく歩いて行く。
「ニツサパール!」
「ギルブラスト!」
大広場では二人の魔導士がお互いの魔法をぶつけ合っている。
「ちょっと! 止めなくていいの? こんなところで闘ったりして!」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。ここはバリアで守られているから。ここはこの国で数少ない魔導士たちがトレーニングとして闘えるところだから」
たしかに広場の周りにはギャラリーが闘いをみて盛り上がっている。それに周りの建物も魔法による外傷は見当たらない。
「ねぇ、ルナ。つまりここなら誰でも闘えるってこと?」
「ん? そだよ」
「そう」
確認を取ったアルレシアはふわりと飛び上がり、バリアの中に入れる入り口を通り抜ける。
「……! おい! 嬢ちゃんあぶねぇよ!」
アルレシアが入って行くのを見ていた男がアルレシアを止めに入り口に向かおうとする。しかしアルレシアは既に広場の真ん中に立っていた。闘いに夢中になっていた魔導士二人はアルレシアの小ささに気づけず、互いの魔法がアルレシアに向かって行く。
「アルちゃん!」
「大丈夫だ」
ルナも助けに行こうとするが、直前でハンスが止める。そして二つの魔法は衝突し、大きな爆発が起こり、煙で広場は包まれる。
「ねぇ、ルナ」
煙の中から魔法を受けたはずのアルレシアの声が聞こえる。
「ちょっと気晴らしに私と勝負しない? あなたの実力、ちょっとだけ気になるし」
煙が晴れ、立っていたのは自分の二倍の大きさはある斧を持ったアルレシアであった。魔導士の二人はお互いにバリアにめり込むように空中にぶら下がっていた。
「別に無理に闘う必要はない。しかしお前が闘いたいのならそれを止める必要も俺にはない」
ハンスの言葉を聞いてルナは少し考え、
「うん! わかった!」
アルレシアと闘うことを決意し、ルナはアルレシアの元へと飛び出した。