VS マーレイ
「おい! マーレイとルナが勝負するらしいぜ!」
「まじか! サングラス用意しねーと!」
場所を移し、第一トレーニングルーム。ここでは魔力の放出が許可されており、魔法の実験に生徒達が利用する場所である。今は試験の為の戦闘ルームとなっている。
「さあ、始めようか! 光よりも輝くバトルを!」
「なぁ、こいついつもこんな感じか?」
「う、うん……」
やる気に満ち溢れているマーレイとは対照的に、やる気を吸われたかのようにどんよりとしているルナとハンス。
「よく似た奴を知っているから余計に疲れる」
「似た人は三人いるって本当なんだね」
「そっちが行かないのなら僕から行かせて貰おう!」
マーレイは腕を後ろに伸ばし、前かがみになると、
「ダッシュレイ!」
マーレイは矢の如くルナに向かって高速で移動し、一瞬でルナの目の先に辿り着く。そして両手を大きく広げると、
「フォトンフラッシュ!」
部屋全体が光で覆われ、観客は少しの間状況がわからくなる。そして光が消滅すると、場にはルナの姿だけがあり、マーレイの姿は見えない。ルナはマーレイが魔法を使う直前で目を瞑ったが、至近距離で発光された為目をチカチカさせている。それでも消えたマーレイを探そうと辺りを見回す。
「おい、一体どこいったあいつ!」
「あいつ消える魔法なんか使えたか!?」
観客達が下を向く中、ハンスは上を見上げる。
「……! ルナっ! 上だ!」
ルナが上を見上げると、天井スレスレのところにマーレイが飛んでいた。
「光とは、人々を照らす為に上存在するもの。そう、今の僕のように!」
光の翼で空を飛ぶマーレイの周りにはいくつもの光の矢が。
「そして光とは、時に人々を蝕む厄災となる」
マーレイが手を振りかざすと、光の矢が不均一に落とされた。
「……っ!」
ルナは走り回ったり転がったりと始めは器用に光の矢を避けるが、遂に角にまで追いやられる。
「チェックメイト」
「まだまだぁ!」
残りの光の矢がルナに向かって襲いかかる。しかしルナはハンスを振り下ろし呪文を唱える。
「ヒートウェーブ!」
炎の波がルナを包み込むように出現する。波は光の矢を通さず、全ての矢を焼き尽くす。
「あれを無傷で済ますとは……!」
「今度はこっちの番………」
ルナは言葉を切った。マーレイを見ると何故か身体を震え上がらせている。そしてゆっくりと息を吸い、
「素晴らしい!」
突然マーレイが叫び、ルナは勿論、観客の大勢がビクッとした。
「ああ、やはり僕の光を簡単に受け止めるその魔力! 僕の光はまさに君の為にあるもの!」
「おい、何言ってんだこいつ」
「ワカンナイ」
マーレイはゆっくりと降り、ルナに近づく。
「僕の目に狂いは無かった。ルナ、俺の光になってくれ!」
マーレイの言葉に観客は凍りつき、ルナの目に光は無かった。
「ふっ……照れるのも無理はない。しかし僕はそんな君を受け入れ――」
「ボルガノン」
マーレイの言葉を最後まで聞かず、ルナは至近距離でマーレイに向かって魔法を繰り出した。
「サンダーストーム、フローズンエッジ、クラッシュインパクト」
火炎弾、雷の嵐に氷の刃、そしてそれら諸共ぶつける強大な衝撃。しかし、これだけでは終わらずルナは高く飛び上がりハンスを投げる構えに入る。
「スゥーパァー」
ハンスの先端に凝縮された魔力が込められる。
「メテオ!」
ハンスはマーレイめがけて一直線に飛んでいき、トレーニングルームは大きな爆発音と共に爆風で覆われた。
「ビューティフォー……」
マーレイに当たる直前、ハンスはそんな事を耳にしたらしい。
――――
「何やってるんですか! このすっとこどっこい!」
まさかナーシャの口からそんな言葉を聞くとは思ってなかったハンスとルナ。
あれから残りの組全てが終わり、後は結果を待つだけであった。だが――
「トレーニングルームを壊して! ヤーロン先生また残り少ない髪の毛を悲しそうに弄ってたよ!」
明らかにいつもと別人のように罵るナーシャ。それもそのはず、マーレイは試合終了後すぐに医療室に運ばれた。マーレイの魔力量ではクラッシュインパクトを受けた時に魔力が底をついてしまい、次の攻撃を生身で受けてしまった。担架に運ばれるマーレイの姿は何故か満足感で溢れていた。その時手伝いとして一緒に行動していたナーシャに向かってマーレイは、
「君は、僕の僅かしかない視界に舞い降りた天使か……?」
それ以降もマーレイはナーシャを口説き続け、ストレスが最高潮となりかけた時にルナがまたいろんな先生に注意され、ナーシャに慰めてもらおうと迫って来たのでナーシャの堪忍袋の緒がプツンと切れたのである。
「大体、ハンスもルナちゃんの魔力を全くコントロールしてなかったじゃないですか!」
「……すまない、つい俺もイラッと来て……」
「私も反省はしています……でも後悔はしていない!」
その後、ルナとハンスに雷が落ちたのは言うまでもない。