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クロノ・レボルト〜2度目の革命〜  作者: 田坂屋台
交流会編
15/26

王家の姉妹

『マカナ学園より! クルシュ・ワーグナー!』


 マカナ学園の生徒が一斉に歓声を上げる。クルシュは観客席に向かって満面の笑みと合わせて手を振る。


『そして、相対するのは! ルフトラ学園より! メイア・ワーグナー!』


 観客席の生徒が驚きで一瞬、声を失う。


「あらあら、私には何も無いんですの?」


 ルフトラ学園の生徒はハッとして、一斉に声を上げる。


「ふふふ、まあ驚くのも無理ないですわ」


 クルシュはただジッと、メイアを見つめる。


『さぁー! なんと! 一回戦はワーグナー姉妹同士の対戦となったー!』


『これは驚き』


『――クルシュ殿は来るだろうと思っていたが、まさかメイアと当たるとは』


「いやー、ついているのかついてないのか分からないなー、こりゃ」


 クルシュはニコニコしながら頭をかく。しかし、メイアはそんなクルシュを睨みつける。


「お姉様、お父様も見ていられるのだから態度を改めてくださいまし?」


 そう言って、メイアは観客席より更に上の特別席に立つ男性を見る。


『ご存知の通り、二人は国王の実の娘! クルシュ選手が姉だということですが、マーレイさん、何か知っていることは?』


『いやー、彼女はあまり身内の事は話さないので僕も詳しくは知りませんが、元々メイアさんはマカナ学園に入学する予定だったという噂はありますね』


「あらあら、随分口の軽い実況者だこと」


 見た目は笑っているが、言葉に怒りを感じたマーレイはサッと後ろに引く。


「まあまあ、いーじゃん。ここで決着をつければ」


 クルシュは大剣を取り出す。


「そうですね。あなたを打ち負かして私が上ということを証明します」


 メイアは弓を取り、めい一杯弦を引く。


『では、一回戦、スタート!』


 開始の合図とともにメイアは弦を離す。矢は一直線にクルシュに向かう。


「また、不意打ちなの!」


 クルシュは大剣を盾にして矢を弾く。そしてそのままメイアに突っ込もうとするが、


「エアーズ・ロック」


 クルシュの前に風が渦巻き、クルシュが風を切ろうとしても弾かれてしまい、後ずさりしてしまう。


「そこ!」


 その瞬間をメイアは見逃さず、エアーズ・ロックを解除し、矢を放つ。しかし、クルシュは大剣を支えに態勢を変え、ギリギリのところで矢をかわす。


『おーっと! クルシュ選手、ピンチを乗り切ったー!』


『――いや、あれは避けると分かってて矢を放ったな』


『お? それはどういうことでしょうか、マーレイさん』


『代わりに私が答えましょう。メイア君はクルシュ君には絶対に近づかせないという意志を感じますねぇ。後、あんたくらい簡単に当てれるのよ、という事をクルシュ君に分からせようとしていますね』


『メイアは徹底的にクルシュ殿の対策を練っていたということだ』


 理事長達の解説を聞き、ルフトラ学園の生徒は大きな歓声を上げる。


「ふふふ、やっぱり理事長は見る目がありますね」


「ちょっとー、周りに気をとられすぎだぞー」


 クルシュはふてくされている。


「お姉様は私に触れる事無く負けるので、ちょっとしたパフォーマンスは必要でしょう?」


「あーそっかー。じゃあ近づかないでおくー」


 そう言って、クルシュはクルッとメイアに背中を向ける。


「後ろを向くなんてお姉様らしくありませんね!」


 メイアは再び弓を引く。それでもクルシュは一向に前を向かず、歩き続ける。


「ストーム・ショット!」


 放たれた矢に風螺旋状に纏い、クルシュに向かっていく。――しかし、矢はクルシュのところには届かず、虚空の中に消える。


「リバースゾーン」


 そして矢は消えた場所から再び現れ、メイアに向かって飛んでいく。

 しかし、矢はメイアの横を通り過ぎ、壁に突き刺さる。


「あれれー? 少しズレちゃったかなー?」


「ふふふ、止まっている人に当てられ無いなんて鍛錬が足りませんのでは」


 二人の間に入りにくい雰囲気が漂う。


『どちらも引くことのない勝負ですが……なんだか姉妹ゲンカを観ている気がするのは気のせいですかね』


「私達ってさー、双子なのにお互い全然知らないよねー」


 ふと、クルシュはメイアに語りかける。


「ええ、私達はいつも競い合って……いつも私が負けていた。私がマカナ学園を蹴ったのは姉様から逃げたかったかもしれません。――けど、今はこの学園に来て良かったと思います」


 メイアの周りに魔力が集まる。


「今、姉様に勝つことが出来るのでね!」


 ――その頃、街の大通りではひそひそと何人かで固まり、怪しむ目で同じものに目を向ける。中央を横切る人の形をした白く光る物体が杖を持って走っているので、その異様な光景に目を奪われるのは致し方ないことだろう。


「どうしようか。話しかけようとしても避けられる。しかし、がむしゃらに進んでも時間を消費するだけの可能性の方が高い」


 ハンスがそのように考えている間もフレンズは走り続ける。フレンズが場所を知っているのか、はたまたただ単に走っているだけなのか、それはハンスにも分からない。

 ふと、ハンスは路地に見覚えのある姿が走っているのに気付く。


「――あれは」


 ハンスはフレンズに路地に向かうよう指示する。


「ここどこー? まさか近道しようとしたらこんなところに迷うなんて……とりあえず人通りの多いところに――」


「何やってるんだ。ナーシャ」


 ナーシャは声に反応して振り返る。その目はパッと見ただけで涙目になっていることがわかり、服は蜘蛛の巣や土などで汚れている。


「ハンス! 助かった……」


 ナーシャはフレンズに抱きつく。フレンズはどうしたらいいか分からず慌てている。


「ちょうど良かった。ナーシャ、交流会の場所はどこなんだ?」


「あそこです」


 ハンスとナーシャは大通りに出て、ナーシャは王城の方を指差す。


「あそこって、城じゃないか!」


「うん。国王が趣味で地下の闘技場を貸してくれてるの」


「すごいな……。しかし、場所が分かったから後は走るだけだ――」


 ハンスは咄嗟に先程出た路地の方を見る。

 その奥は建物の影とは違う――禍々しい黒色の水溜りのようなもの。そこからフェアリー・フレンズとは違う、黒い生物が這い上がってくるのであった。

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