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クロノ・レボルト〜2度目の革命〜  作者: 田坂屋台
交流会編
14/26

忘れもの

 ――眼に映るのは崩れ落ちる塔。それを見た人々は逃げ惑い、中にはその場でしゃがみこみ、瓦礫に当たらない様にする人もいる。

 辺りに黒い生物が次々に湧き出てきて、急いで塔に向かって走る。

 崩れ落ちる塔の中、少女は立ち竦み、上を見上げる。そして彼に気づいた少女は振り向きざまに微笑む。――その笑顔は一瞬にして瓦礫に隠された。


「――ハッ!」


 ハンスは驚いたように目を覚ます。しかし視界は真っ暗で何も見えず、寝ている時と変わらない。わかる事は生地の上に寝転がっており、タンスの中に居るということである。


「ああ、そういやまたタンスの中に入れ込まれてたな。――今何時だ?」


 ハンスはいつもより部屋が静かであると気付く。ルナの慌ただしい物音が聞こえず、至って静かである。


「――フェアリー・フレンズ」


 ハンスは狭いタンスの中に対応した大きさのフレンズを生成し、引き出しを内側から開けさせる。

 タンスから出ると、ルナのベッドの上は散乱しており、カーテンも開いている。


「ま、まさか――」


 その頃、ルナはナーシャ達と共に行動していた。マカナ学園三年生全員が与太話しながら会場に入る。

 今日は交流会当日、マカナ学園の生徒以外にもルフトラ学園の生徒もゾロゾロと会場に入る。


「遂に来たね、ルナちゃん」


「う、うん」


 ルナは落ち着かない様子で辺りをキョロキョロと見渡す。


「? 緊張してるの?」


「そりゃそうだよ、こんなに大勢いちゃ」


「そんな時は深呼吸すれば大丈夫だよ」


 ナーシャとルナの間にクルシュが割り込む。


「卒業したらこういう事もあるかもしれないし、いい機会と思って、思って!」


 クルシュはルナの背中を叩き、軽い足取りで前の人混みの中に突っ込んでいる。


「うー、そんなこと言われたって……」


「ルナちゃんには集中力が足りないんだよ! そうだなぁ……あ、あの人を見習って!」


 そう言って、ナーシャは指を指す。指を指した方角にはアレクサンダーが独特な呼吸法で人を遠ざけながらゆっくりと歩く。


「――流石に見習う事は出来ないよ……。でもなんか緊張はほぐれてきたよ」


 ルナは手をギュッと握りしめ、会場の中に入った。


「さて、全員揃ったね!」


 控え室にクルシュ達四人が揃う。ナーシャはルナがナーシャの手を離さないのでそのまま控え室に入る事になった。


「ルナちゃん……そろそろ離してくれないかな」


「あ、ごめん」


 ルナはパッと手を離す。


「心頭滅却。周りなど気にせず己が最高のパフォーマンスをすれば良し」


 手を合わせ、アレクサンダーは言う。


「そう言えばルナちゃん、杖はどこ?」


「え?」


 ルナは両手が空いているのに気付く。ポッケに手を入れたり、軽くジャンプをする。


「あれ?」


「ま、まさかとは思うけど――」


 ルナの顔が青ざめる。


「忘れたーー!!」


「置いていきやがった!」


 ルナはその場でへたり込み、ハンスは深いため息を吐く。


「え!? 嘘!? 本当に!?」


 クルシュは慌ててルナの肩を掴む。


「心頭滅却。心を落ち着かせればそのような事態も――」


「ルナちゃんはハンス君が居ないとスイッチの無い道具みたいに機能しなくなるの!」


「なんか今酷い事言われたような気がする」


「わ、私、取りに行ってくる! 寮のおばさんに開けてもらえればルナちゃんの部屋に入ることが出来る!」


 そう言ってナーシャは慌てて会場を飛び出す。


「ナーシャちゃん……」


「とりあえず、私達は私達で出来ることをしよう。試合の順番だけど、ルナちゃんを最後にして――」


 一方、ハンスは一人部屋の中で考えて居た。


「さて、今の状況を整理しよう」


 ハンスは時計を見つめる。時計の針は八時半を指しており、交流会開始の時間まで後三十分というところだった。


「おそらくルナが取りに帰ることはない。一人で行くしかないか――。フェアリー・フレンズ」


 ハンスは今までの小人サイズでは無く、成人の男性サイズのフレンズを生成する。


「よし、感覚は十分戻っているな」


 フレンズはハンスを担ぎ、ドアを開ける。寮を出るとき、おばさんが腰を抜かすのが見えたが、とりあえず後にした。


「――いや、よくよく考えたら俺、交流会の場所知らなかったな」


 ハンスは慌てて寮に戻り、おばさんに場所を聞こうとするが、口をパクパクしており、話せる様子ではない。

 仕方ないのでハンスは街まで行き、片っ端から探すことにした。


「さて、間に合ってくれよ――」


 ――


『さあ、やってきました! 第三十六回ルフトラ学園&マカナ学園の交流会! 実況は私、ルフトラ学園より、リリー・マーチと』


『この僕! マカナ学園より、マーレイ・フライライト!』


『解説は、両学園理事長、ギリス・アルミスとロイド・ハイドでお送り致します』


『よろしく』


『よろ』


 会場が歓声で包まれる。


『さて、マーレイさん、今回の交流会、どちらが勝つと思いますか?』


『んー、そちらの選手の情報が無いので今までの戦績で言うなら、十八勝一七敗でこちらに軍配が上がりますが――』


『今まで私達は勝って負けての繰り返しだった為、去年勝つ事は出来ましたが、今年も連勝をストップされるかも知れませんね』


『当たり前だ。我々の精鋭は過去最高と言っても過言ではない』


 ロイドの自信満々な宣言にルフトラ学園の生徒の士気が上がる。


『流石うちの理事長! 傲慢な態度が私達生徒の士気を上げていくー!』


『と、言うことですが、理事長、何か意見は?』


『ま、大丈夫でしょ』


 ギリスの言葉にマカナ学園の生徒から笑い声が出てくる。これはマカナ学園が負けるわけ無いという自信の表れでもある。


『――おっと、ここで初めて両学園出場選手の情報が出て来ました!』


『――! これは面白いですね』


『お互いカードは伏せたまま今日まで温めてきたからな。選手達も誰か来るか、顔を合わせるまで分からないという緊張感もあるからな』


『だから組み合わせによっては完敗もあり得るんだよねー』


『それでは、一回戦! 選手の入場です!』

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