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真面目にお仕事いたします  作者: さくらりん
7/10

敵に回しちゃいけない人っているよね?

恐る恐る、栗林の隣に座る。なぜか、二人の回りに空間があるような気がするが、気のせいだと信じたい。


「あ、要ちゃんっ!待ってたのよっ!ちゃんと説教していたから、もう心配しないでねっ!」

先程の妖艶さが全くなくなった、タダの酔っぱらいがそこにいた。これは近くにいきたくない。

栗林いわく、歓迎会前の職員室でのやり取りを、どっかから聞いたらしく、セクハラ、パワハラの定義をきっちり教え込んだとのこと。仲が良いのはよいことだが、時と場合と相手の機微を見逃すなとのことでした。まぁ、事実がどうであれ、至極真っ当なことだし、酔っぱらいだしで、桜は抵抗せずに話を聞いていたらしい。そして、周りも栗林の今日の獲物として桜を差し出し、触らぬ神はなんとやらを決め込んだようだ。


「ありがとうございます。栗林先生。次なに飲まれますか?」

酌ばかりして飲み足りなかったので、手酌で日本酒をお猪口に。ぐっと飲み干してから尋ねた。これは、辛口の冷やだ。銘柄はわからないけど、今日の料理にぴったりで、もっとおかわりしようと決めた。

「あらー!要ちゃん飲めるのね!ほんと最高!」

突然の圧迫感といい香りに驚くと、栗林が抱きついていた。桜が見てくるから、いいだろうと目線を送る。

「お前。ご愁傷さまだな。栗林先生のお気に入り認定されたぞ?」

「何が悪いんですか?」

「説教と愚痴飲み会の誘いがすげーんだよ。旦那さんいるとはいえ、もともと、女の子好きだしなぁ。酒も飲めるとなりゃ離さんぞ?」

うん、何が悪いかわからない。1人酒も好きだけど、誰かと飲むことにも苦痛を感じないため、全然オッケーだ。さらに、相手が自分に好意を持ってくれているなら、嫌な酒にはならない。説教なんて兄に比べれは、優しいものだし。不思議で、首をかしげてしまう。

「もぉー!ほんと要ちゃんかわいいっ!でもどっかでみたことあるのよね。」

「いえ、ここにくるまで初対面かと。」

「そうよね?んー、雰囲気とかちがうんだけどなぁ。1度あったことある人に似てるのよね?ほら、桜先生の友人の方よ!」

「どいつっすかね?よくわかりませんねー。あ、栗林先生、追加で頼みますよー。」

いつものスキル発生かと思ったら、まさかの兄の知人だったとは。全く似ていないと言われる兄妹を見抜くとは。今まで栗林のことは話にも出てきたことないから知らなかった。そして、桜も調査に支障を来すと判断したのか、流すことにしたらしい。

「びーるー!そっかぁ、勘違いかぁ。ちょっと鈍ってきたかなぁ。」

栗林も納得はしていないものの、酔いがまわっているせいと捉えたらしい。そのあとは、終始ご機嫌な栗林の腕を組まれて、美味しいごはんとお酒をいただいていた。桜は「それはパワハラにならないのか」とぶつくさ言っていたが。

帰り際、経理の古川に何故かいたく感謝されたのが、疑問だ。むしろタダ酒ありがとうと言いたい。

お店を出て直ぐに、栗林は黒のセダンにのせられて帰宅した。何でも、好きなだけ酒を飲んでもいい許可は有るが、旦那さんとの決まり事があるらしい。その様子を慣れたように見送る職員たちからみても、上役も公認しているようだ。

「栗林先生何者?」

「養護教諭ですよ?」

「いや、あの女はそれだけじゃ説明つかんだろ。本場アメリカでの心理学者の資格持ってるんだぜ?そして、心理学だけじゃ説明できない第六感的なものもあるし。噂じゃ、校長と副校長の弱味も握ってるっ、無くなったものは聞けば全部居場所答えてくれるって。もう、魔女でいんじゃね?」

「美魔女ですか?」

「年齢不詳ですよね。まぁ、僕は資料で年齢知ってるんですがね。」

古川と桜と最寄りの地下鉄に向かう。そうか、栗林先生は敵にまわしちゃいけないのか。確かにあれだけやらかしてる感たっぷりなのに、誰もなにも言わなかったのは、いつもの事というのもあるが、下手に近寄って腹探られるのもって感じだったのかなぁ。

「まぁ、お前は仲良くしとけばいんじゃね?色々助かるだろ。」

色々のところで、古川が首をかしげるが、桜が古川の肩を組んで歌い出したので、肩をはずそうとするのにいっぱいいっぱいのようだ。

確かに、彼女は色々つかえる。保健室は情報が入りやすい。協力を、あおればもしかしたら、有力情報が得られるかもしれない。だが、そうそう話をしてくれるとは思わない。セクハラ、パワハラについてあれだけ語るのだ。ルールに厳しいのだろう。よほどの事がない限り、守秘義務をしっかりまもると思われる。

じゃれてるとしか思えない二人のあとを、ゆっくりついていく。地下鉄駅につき、別れ、1人電車に乗り込む。金曜日、一次会で終わったとはいえ、いい時間からかそこそこ混んでいた。上手く出口付近に場所を見つけ、窓から外をみる。真っ暗闇のなか、たまに駅を素通りする。

教師1日目。授業もこなせ、同僚とも仲良くなれそうだ。

調査1日目。早速対象者が動きを見せた。そして、情報ソースをひとつ手にいれた。

まずまずの1日だったと思う。予想以上に疲れたが、まだ仕事はある。帰って、調査書をまとめなければならない。

そう、1日しかたっていないが、明日は週末。兄に報告しなければならないのだ。まぁ、これからの方針も確認できると思えばいいのか。

駅についた。ほんとは家で飲み直したいところだが、今日は我慢だ。明日の()との対決に備えよう。


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