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真面目にお仕事いたします  作者: さくらりん
6/10

飲みニケーションって意外とまだある。

お昼休みを終えて、なんとなく、教室まで一緒に向かう。いや、なんとなくではない。柳田を見に行くのだ。お昼休みは、結構自由に動ける。そう考えると、柳田観察に当たるべきだったのかな?いや、毎回副担が近くにいるって気持ち悪い。


教室を除くと、柳田は隣の席の中居林と話していた。中居林は、見た目は大人しめの女の子。でも、1年から書道部副部長に抜擢される才能と、皆をまとめる力を持っている子だ。にこやかに会話が進んでいることから、心配いらないようだ。


「かなめっち、心配しすぎ。」

小声で林が言う。そして、ちゃんと見ておくからと、背中を叩かれた。10歳以上年下の生徒に心配される、副担。生徒達が頼もしくもあるけど、これ、兄に知られたら、確実にバカにされる。いや、むしろ、哀れだと本気で慰められるかもしれない。


ありがとうの意を込めて、3人に手をふり、教室を出た。


午後の授業も滞りなくすぎた。まぁ、2-Sが最優秀クラスと言うだけあって、授業がやり易かった。それを最初に経験したため、少し戸惑ったとこもあったが、普通はそんなもんだろう。Sクラスが特殊だと思って、授業計画を練り直さなくては。


この高等学校は、50分X6時限。水曜日に、LHRがある。そして、普通であれば、始業式当日には授業をしないと思っていたのだが、ここは違う。わざわざ、早く登校し、軽い始業式、HRをして、通常授業となるのだ。

そして、授業が終わったと同時に下校が可能となる。今時、連絡事項は、ネットを通して行われ、口頭連絡やプリント配布も減った。今日も過去問題配布の際、タブレット活用したらどうだと生徒から提案された。

なので、副担任とはいえ、そうそうクラスにいるわけでも、生徒と触れあうわけでもない。やはり、調査内容が甘くなりそうだ。

ふと、職員室から窓の外をみる。下校時刻で帰宅する生徒がちらほらみられる。そこに、ふわふわなライトベージュがいた。回りには、中居林と、他の数名の男子生徒がいる。柳田もみんなと一緒に笑っている。その姿は、普通の女子高生で。常に警戒していた自分にあきれてしまった。


「あれは、隣のクラスの川村の取り巻きだな。」

ん!?取り巻き?!驚いて隣をみると、桜がいた。

「あの、男どもだろ?川村は認めてないが、よく近くによってくメンツだな。すげぇな、この一日で手下を手中にってか!やっぱなんか術でも持ってんじゃねぇの?」

微笑ましいワンシーンが、きな臭い場面に変わってしまった。素晴らしい情報ではあるが、仕事が増えたのには変わらない。

「術だったら、弟子にしてほしいですよ。なんなんですか、その情報力と行動力と魅了力。」

「ほんとになぁ。それがあったら、ボッチになんてならないのになぁ。」

ニヤニヤして見てくる桜の足を思いっきり踏む。

「いって!!」

「あ、すみません。そこにいるとは思わず。てか、良く近くに来ますね?ストーカーですか?接近禁止命令出すようにしましょうか?」

「お前っ!今普通に会話してただろうが!」

「ここ職員室なんですけど、静かにしていただけますか?」

足を踏んだあたりから、声が大きくなり、周りが注目していたのは知っていたので、あえて冷静に注意をしておいた。

すると、見ていた職員達がクスクス笑いだす。主任クラスは少し眉をしかめるが、それでも、口元は緩んでいる。ここの職場環境は良いみたいだ。もちろん、例外もいるが。


「おふたりとも、歓迎会はいつものレストランですよ?早め移動でお願いします。」

経理の古川主任に声をかけられた。そう、今日は歓迎会がある。帰って早く調査書仕上げたいのに、とも思うが、歓迎される側が欠席はあり得ないだろう。最近では、平気で断る新入社員がいると聞いたことはあるが、酒好きの私が、タダ酒を断るわけがない。

「はい、楽しみです。」

「そういってくれると助かりますよ。お手数ですが、何人かには挨拶にいってください。古い風習といわれてますが、やはり、喜ぶ方がいらっしゃるので。」

まだ、涼しい時期なのに、額の汗を拭きながら、申し訳なさそうに告げる古川主任は、今までに飲み会で相当嫌な思いをしたのだろう。気持ちはすごく良くわかる。私もそうだった。まぁ、うちの場合は、(上司)が飲み会を断っていたが。でも、顧客との接待飲みをオブラートに断るこっちの身にもなってほしかった。まぁ、生産性をもたらすなら、ランチミーティングで十分だっていう、兄の言い分も解らなくもないから余計に辛いんだよね。


それから、歓迎会会場へは皆タクシーで移動。総勢60人弱で、居酒屋割烹へ。席は決まっておらず、ついた順に奥に押し込まれるかたちになった。

「レストラン?割烹って感じなのに。」

「人前では、ごはん食べる場所は何でもレストランっていわないとね。居酒屋、飲み屋は外聞悪いし。割烹ってのも、お金かかってますって思われがちだし。」

呟きを拾われていたらしい。隣には養護教諭の栗原が座っていた。栗原は、既婚者の美魔女だ。物語の登場人物、特にギャルゲーといわれる分野に出てきそうなプロポーション。むしろ、高校の養護教諭担当ってやめた方がいいのではと思ってしまう。

「結構大変なんですね、先生って。」

「あら、佐藤先生も先生よ?」

ケラケラ笑う姿に、ついポーッとみいってしまう。この人を射止めた旦那様をものすごく見たくなった。めっちゃ可愛いぞ、栗林っ!


ほぼ全員が揃ったところで、乾杯の合図。隣の栗林に断ってから、上役へ、酌をしにいく。席を取っておくわと、手をふり見送ってくれる栗林。本当に素敵だ。

そして、歓迎会も中盤、席に戻るとなぜかそこには、栗林に説教されている桜がいた。




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