女の子の話は脈絡がないもの
一応、社会科の先生達に許可をとり、昼休みに準備室を使用することにした。まぁ、社会科の主任からは「あまり生徒と馴れ合うのはいかがなものか…」とのお言葉もいただいたので、週一か隔週にしとこうかなと、思案中。
そして、昼のチャイムがなってすぐ、3人が準備室に流れ込んできた。ノックの大切さを訴えつつ、ソファーに促す。
「えー、準備室って意外と広いんだねぇ。」
「うんうん!資料しかないと思ってたー。」
確かに、私もそのイメージが強い。筒上の資料や地球儀など。ここの学校の準備室は、手前が資料、奥にテーブル、ソファ、机と椅子が数個あり、大学のゼミ室のようだ。まぁ、大学も様々だが、私の大学はこんな感じだった。
みんなが、お弁当やパンを並べる。ちなみに私もパンだ。自炊もするが、調査や指導などの臨機応変を考えて、パンにした。
ペットボトルの紅茶を飲みながら、早速話をふってみる。
「ねぇ、クラスの雰囲気はどう?」
「そんな変わんないよー。去年とほぼ同じだしね。」
「だね。メンバー入れ替えもう少しあるかと思ったけど、案外入試実力反映できてたんだね。」
「うんうん。って、かなめっち、去年知らないかっ!」
「そうね、今年からだもの。」
「えっと…。うちの学校成績順でクラス分けするんだけどってこれはしってるか。んー。何を言えばいいのかな?」
「そうね、クラスの雰囲気とか、誰と誰が元カレ元カノかとか?」
私の返答に一瞬、呆けたあと、3人は笑いだした。
「かなめっち、いいねぇ。」
「やっぱ気になるよね!」
「でも実は少ないよね?付き合ってる人。」
「そうなの?今時の高校生って結構頻繁に付き合ってるのかと思ってた。」
「「「それ偏見!」」」
「確かに中田あたりは、とっかえひっかえって感じだけど。」
「ちがうちがう、奴はハーレム王子だよ。」
「なんだっけ?『皆でなか良くできないなら、無理だね。』だっけ。」
神山の物まねに、似ていないと大爆笑し始める3人。確かに、そんな気取った風に言っていたら、回りのハーレム要員もこぞって逃げていくだろう。
「えっと、そうそう、今クラスで付き合ってるのは、祐実と勇人だけでしょ?って、この二人は幼馴染みで勇人がベタぼれだから、別れることないしね。」
勇人というと、山口兄弟の1人。そうか、彼はクラスに彼女がいるのか。
「他は他校に彼氏、彼女がいるでしょう。といっても、数人だよね。」
「そんなものなの?」
「そんなもん、そんなもん。とっかえひっかえのこもいるけど、あんまりクラスないではないかな?入学していろんな行事こなして半年くらいで、同士っぽくなっちゃったって感じ?だから、王子達見ても、目の保養にはなるけど、付き合いたいとは思わないかなぁ。」
「とかいって、付き合ってって言われたら付き合うでしょ?」
「もちろん!写真とってもらう!」
雪谷の即答に、また3人で笑い始めた。クラス事情はここまでにしておこう。もっと踏み込みたいけど、怪しまれると次がなくなる。
「なら、今年も何事も起こらず、平和に過ごせるかしら。」
「あー、かなめっち、楽しようとしてるっしょ?」
「楽できるならしたいのが、人間ってもんでしょ。」
「「「確かにー!」」」
「あ、でも、今年は波乱ありでしょ!」
「あー!姫っ?!」
「姫って、柳田さん?」
「そうそう、かわいいけど、あれダメなやつでしょ?なんだっけ?ヒロイン症候群?」
「それは悲劇のヒロインでしょ?あの子はお花畑ちゃんでしよ。」
「どういうこと?」
「んと、柳田さんは、きっと自分がかわいいこと知ってて、小説とかのヒロインだって思ってそうってこと。じゃなきゃ、遅刻して前の扉から入ってこないでしょ!」
「わかるー!あたしなら、恥ずかしくて、ばれるの承知で、後ろの扉から静かに屈んで席につくよ。」
そこは、チャイムなるまで保健室だとか、サボっちゃうとか話がずれていく。って、柳田、もう性格ばれてるよ。登場シーンでばれちゃうって、もうつんでない?つい、食べ終わったパンの袋を握りつぶした。
「かなめっち!大丈夫、遅刻なんてしないからっ!」
「そぅそぅ、落ち着いてね?」
「えっと、それより姫!だよ、姫!ホームルームのあと、早速川村んとこ行ったんだよねー。」
「隣スルーの前の前に話聞きに行くって、ちょっと笑っちゃったもん。」
「で、川村の無難な返しにご満悦ってわけ。」
「無難ってなに?」
「川村って、優しそうに笑ってるけど、他人みんなにあんな感じなんだよね。」
「わかる!山口兄弟と中田の前くらいじゃない?嫌みいったりするの。」
「だから、なに言ってたかまでは知らないけど、適当に話し合わせたんだろうなって。」
「それでオッケーみたいだし、そのあとは、もう、ボーッと見つめてるしね。」
接触済みか。会話内容がわからないのは痛いが、報告漏れにはならなさそうだ。
「なら、柳田さんは川村くんに夢中になりそうかしら?」
「どーだろ。川村モテるけど、すぐ皆次にいくんだよねー。」
ここから、また、川村のことを好きだった女の子が他校のバスケ部と今付き合ってるらしいという話で盛り上がり始めた。
「ねぇ、柳田さん浮いてる?」
無理やり話をもとに戻す。そこは、ちょっと心配性の副担を装う。
「大丈夫っ!それはないよ!」
「そうそう、まぁ、変わった子だけど今までいなかった訳じゃないしね。」
「王子達の回りって変なの多いし。」
そこから、また、今までに見たおかしな人の話になりそうだから、またまた無理やり話を元にもどす。
「いじめとかほんとやめてほしくってさ。」
「かなめっち、本音言い過ぎだよー。」
「でも、いじめはないと思うよ?恋愛波乱はありそうだけど!」
「その根拠は?」
「だって、皆忙しいし。1年の頃ならまだ余裕あったかもだけど、来年は受験ある子もいるし。今年中に来年の下準備と、行事とか楽しまないとっ!」
「わかる!わかる!人虐めてる時間あったら、彼氏探しにいくよね!」
また、笑い出した3人にほっとする。この子達は当分大丈夫だろう。本心から今の言葉をいってるのがわかる。
「恋愛からいじめにならなきゃいいんだけどね。」
「気になるなら、なんかあったら教えるよ?」
「今時、いじめ加害者だけじゃなく、担任も叩かれるもんね。」
「初めてのクラス受け持って、いじめあったら、やってられないよねー。」
3人が同情の眼差しで見てくる。本当は、報告が面倒だと思っていただけにばつが悪いが、ありがたい申し出なので、否定しないでそのままお願いしておく。
「あ、そのかわり、はじめちゃんの情報ちょうだいっ!」
「えっ、好きなの?桜先生のこと。」
「「「違う!高く売れるの!」」」
今時の女子高生、怖い。