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伝承の狂詩曲《エッダ・ラプソディ》  作者: えすこう
出逢い
5/25

仕事の依頼2

 そして今回もまた面倒な仕事をレンに押し付けた。

「その伊達ではない名前で苦労するのはいつも俺だ。何故たまには自分で動こうとしないんだ」

「無茶言わんでくれよ。ワタシは運動は苦手だ。それにおいそれと魔術も使えない身なんだぜ?」

「・・・・・・」

もっともな理由にレンは口をつぐんだ。

「まぁ今回の仕事だってただ窃盗集団をとっちめればいいだけの物だ。何も暗殺や魔物の討伐ってわけじゃないんだ」

「とっちめれば、とは言うがどうせ生死は問わないんだろ?」

「それは、そうだな。だが向こうも死人を出させているんだ、殺られても文句は言えまい。どうせこの国に真っ当な法は無いんだ。公的身ではないとはいえ、犯罪者を殺しちまっても何か課せられることはないよ」

物騒な事をツァオは何でもないように言った。

ロイス公国には普通の法律は無い。

倫理観なんぞ鼻から考えていない魔術士の国だ。魔術の発展を妨げる程のものではない限りは罪に問われることはほとんど無い。

その弊害として混沌区画(カオスブロック)なんてものが出来上がってしまっているのだが、それこそ魔術の探求のためであれば手段を問わない魔術士達にとって、然したる問題ではないのだ。

「それなら構わないか、いや面倒なことには変わりないが」

「お、頼まれてくれるか、よろしくな~レン」

適当なツァオを尻目に、レンは食べ終わった朝食を片付け、自室に戻り仕事の準備に取り掛かった。

準備といっても大層なことではない。

ただ戦闘に陥っても構わないように硬化魔術が編み込まれた手袋をするだけだ。レンは格闘術をメインにした戦闘を行う。

ちなみにレンは魔術士ではない。

なのだが、立場的にはツァオの助手や(認めてはいないが)使い魔を務めており、ツァオに舞い込んだ仕事を彼がこなしているのだ。


準備を終えたレンがさっそく出発しようと玄関に行くと、杖を携えたツァオが後から付いてきた。

「・・・・・・なんだ?」

「いや? これといって何があるってわけじゃないけどね。ただお見送りが必要かな、と思ってね」

「子供じゃあるまいし」

レンは迷惑そうに言った。

「何を言う、ワタシはお前の母代わり。ならば見送りをしても問題はあるまい? それにな、レン。お前はまだまだこどもだよ」

その言葉にレンは不機嫌そうな表情(かお)になる。

「どこがこどもだよ。毎度飯作って、毎度別に自分の仕事じゃないのにせっせとこなして、毎度こどもみたいな年まグハッ!?」

「なんだって? ん?」

レンが失言を言い終える前より早く、ツァオの杖が彼の鳩尾を抉っていた。

「ゴフッゴホッ! あ、ああ・・・・・・すいませんでした、言葉が過ぎましたうら若き魔女様」

「うむ」

レンの(思ってもいない)褒め言葉に、ツァオは満足そうに頷いた。

「話を戻すようだが、お前のそういうとこが子供だと言うんだ。自分がこなさなければならないと思っているなら文句を言わずにやりたまえよ。それが余計な言動で己を傷つけない秘訣だよ」

「暴論だな、それ」

「ああ、だが事実だったろ?」

恨めしそうに言うレンに、ツァオはにやけながら言葉を返した。

「分かったよ、素直に行きますよ」

「それでいい。・・・・・・あぁちょっともう一つ待ちたまえ」

ドアに手をかけたレンを呼び止めたツァオ。

「なんだ?」

「んん~、お前今朝森の鳥が騒がしいと言っていたよな」

レンは頷く。

「ふむ。まぁワタシには聞こえなかったわけだが、そういう時には何かしら起きることもあるだろう。何があってもお前がそうしたいと思ったことを為したまえよ。それは人生を上手く、楽しく生きる秘訣だ。ではいってらっしゃい」

ツァオはそんな不思議なアドバイスを残すと、廊下の奥に消えていった。

「? 何のことだ?」

レンはやはり不思議そうに首を傾げたが、一応それを心に刻んで出立。霧の森を抜けて首都レギンに向かった。

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