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良し悪しの色とりどり  作者: 黒檸檬
一章 能ある鷹は爪を隠す
18/18

18. みーつけた!


 昨夜は結局、夜遅くまでトランプをしていた。途中で、学校から支給されたドライフルーツやカロリーメイトを分け、軽い食事を取ったりもしたが、片手間で食べれるせいで中断することなく続いた。


 最後の最後で葉月はづきさんがジョーカー引いて、そのまま負けてもう1度。篠原しのはら 紅里あかりが勝ち続けて、1番になりたいと葉月さんが文句垂れてもう1度。ビリになった俺に向かって葉月さんが煽るせいで、悔しいのでもう1度。


 小学生かよってくらい、子供っぽく3人でババ抜きに没頭していて、気づけば1時くらい。

 ようやく、篠原 紅里があくびをしたので、葉月さんが彼女を気遣ってトランプは終わりとなり、みんなで寝た。


 誰も毛布を持ってきてなかったのだが、これまた都合良く学校が用意した鞄に【圧縮】された毛布が6枚あったので、それを敷いていて体は痛くない。おまけの1枚を体にかけて肌寒さも防ぐことが出来た。



「キュウ、キュー!! キュー!!」


 上述の通り遅くに寝たせいで、まだ眠いと言うのに、小屋の外が騒がしい。俺は朝弱いんだ、今何時だか知らないが、あと1時間くらい寝かせて欲しい、外の獣は静かにしていてくれ。

 

「ーーふわぁぁ……んー? この声は『もぐ』……おっきな岩見つけたのね……みーたーて君起きて、起きて、もう日が出てるよ。朝だよー、紅里ちゃんもー起きてー、女の子の朝は大変でしょ……身だしなみ整えないとだよ……」


 女の子の起きたてすっぴんを、彼氏でもない男が見て言い訳がない。それにジャージから制服に着替えるなら、絶対に見てはならない、殺される可能性だってある。

 なので俺はもう少し寝ます。準備が出来たら起こしてください。


 ーー急に寒気が。毛布を被っていて俺には見えないはずなのに、何者かの冷たい視線を感じた。

 好奇心と恐怖から、ちらりと毛布の隙間から顔を出して見ると、葉月さんが俺をゴミを見るかのごとく見下していた。


御盾みたて君……、あたし達が準備してる間は許したげる。もし、戻ってくるまでに起きてなかったら、分かるよね?」


 こわいこわい、目がマジのやつだ。

 あと5分だけ寝たら毛布から出よう。念のためスマホのアラームもセットしてと、お休みなさい。







ーーHello, hello〜〜〜〜


 俺の好きな歌がスマホから流れてますね、おはようございます。

 5分ってあっというまでした。けど2人が戻ってきた気配は無いので、今からゆっくり起き上がれば大丈夫だろう。


 全身を覆っていた毛布を名残惜しみながら、取っ払って身体を起こす。寝起きの顔を洗いたいが、女子2人が使ってるだろうから洗面所は空いてない。

 

 起きたてで、頭の重みにすら耐えられず、ふらつく状態のまま暫く待つことにした。



「お待たせー、ちゃんと起きてる? おー起きてるじゃない。出発の準備はどー、終わってる?」


 起きてからさほど時間が経っていないのに、普段と変わらないテンションである。もちろん、身嗜みの方も同様だった。

 そのテンションに対応するには、せめて顔を洗わせてほしい。とびきりの冷水で、顔面から全身を叩き起こして回復した思考で、やっと彼女と戦えるのだ。


「顔だけ洗わせてくれ、そしたら行ける」


「もちろん。そろそろ紅里ちゃんも洗い終わってるはずだから、いってらー」


 会話を済ませた俺は洗面所に向かった。彼女が言うには篠原 紅里が洗い終わってるそうだから、廊下ですれ違うかもしれない。


*****


 洗面所の扉が開けっぱなしである。そして、すれ違うと思っていた篠原 紅里とは出会ってない。まだ身嗜みを整えてる最中だろうか?

 急かしにきたみたいで鬱陶しいかもしれないが、一応覗いてみよう。途中だったら申し訳ないので、そっとな。


 洗面所の扉に近づき、顔を覗かせてみると篠原 紅里の後ろ姿があった。

 まだ途中なのを確認したので、もといた部屋へと踵を返そうとしたら、偶然洗面所の鏡に目がいった。

 

 そこには、泡だらけの顔で手をぱたぱたさせながら、水道の蛇口を探す姿が映っていた。

 顔のパーツが全部泡に塗れてしまっていて、見当違いの方向を手探りしているのが面白い。意外と抜けてる人かと昨夜認識を改めたが、さらに上方修正しておこうと思う。


 微笑ましい光景だけど、泡が目に染みてきたら大変だ。それに、このままでは俺に洗面所の順番が回ってこない。自分から女子と話すのは苦手だが、ここは頑張るとしよう。


「ーー篠原 紅里さん。水を出すのは俺がやりますから、一旦手を止めて。えっと、それから顔を流すまで口も開かない方がいい、気をつけて」


 不器用ながらも助け舟を出そうと声を掛け、洗面所に入り、目当ての蛇口の方へ向かう。篠原 紅里に触れてしまわぬよう注意して、俺は蛇口へ手を伸ばし、水を出す。


 蛇口から流れる水の音で、おおよその場所を把握できた彼女は、自分の顔を覆う泡を落とし始めた。ぱしゃぱしゃと念入りに顔を洗い流した彼女は、タオルを手に取り、濡れた顔を拭いて、こちらに向き直る。


「ーーありがとう。御盾君のおかげで助かりました」


 彼女は丁寧な礼とともに、にこりと俺に微笑んだ。それは、これまで彼女が見せていた、転校してきたばかりで緊張感の残る顔とは異なる、柔らかな表情だった。

 まるで友達といった親しい相手に見せる顔のようで、見てるこっちが照れてしまい、頬が熱くなるのを感じる。


「そりゃ目の前で人が困ってたら助ける。ささ、葉月さんが1人で暇してるだろうから、早く行ってやってくれ」


 熱で頬が赤みを帯びてしまう前に、適当な理由をつけて退室してもらうよう促す。彼女は、「先いってるね」と言って部屋の方へと向かっていった。


 冷水を顔にぶつけずとも、このやり取りで眠気の方は少し飛んでいったが、このベタベタした顔を落とすためにも顔を洗うとしとしよう。


 時は4月、季節は春を迎えているものの、水はまだ冷たい。手に水を溜めて顔にかけて濡らしていく。全体的に濡らしたら、節約のためここで水を止める。他人の小屋を勝手に使ってる身であるので、せめてもの配慮という意味合いも込めて……。


 勝手に使ってる時点で今更な気もするが、公園内にあるのだ、みんなのものと解釈しておこう。

 もし何かあった時には、ここを会場にした学校のせいにして逃げようと思う。

 

「は、ひどい言い訳だな」


 洗顔をプッシュして出した泡で顔を洗いながら呟く。

 俺の顔を洗ってるシーンなんてカットすればいいのにな、文字数の都合か知らないが、自嘲めいた台詞を零さなくてはならないらしい。


 そんなのに付き合ってられないので、早急に顔を洗い終えようと、蛇口に手を伸ばす。

 先程の彼女のように、顔面を泡だらけにした訳じゃないので簡単な作業だった。


 泡を全て洗い落とし、タオルで水気を拭いて終了。水の冷たさで完璧に目が覚めて、思考もクリアになっている。


 これで準備完了、標的の先生を見つけにいける状態になった俺は、洗面所を後にし、2人の待つ部屋へと向かった。


 

「もー、おそいよ。他の人が見つけたらどーするの」


「悪い。あとは支給された鞄持って向かうだけだから、すぐ行けるよ」


 部屋に戻ると葉月さんが頬を膨らませて、外へ出る扉の前で、俺が戻ってくるのを待っていた。

 その声音からも分かる通り、怒ってる訳じゃないみたいだが、急ぎたい気持ちは伝わってくるので、鞄を持ち彼女等のもとへ忙ぐ。


 ちなみに、使っていた毛布はというと、丁寧に畳んで小屋の外にほっぽってある。

 家主の分からない小屋に置きっぱなしにするのもどうかと思い、学校側に片付けさせようと、昨夜トランプをしながら決めたからだ。


「よし、みんな準備できたね。それじゃ『もぐ』案内お願い」


 葉月さんが地中から顔を出す小動物に号令をかけることで、朝っぱら小屋の外で騒いでいた極悪人がいたことを思い出す。

 この場合人ではなく動物なのだが……いや、葉月さんのインクで生み出した土竜は果たして動物と言えるのだろうか? あくまで、動く絵に過ぎないのだろうか…………。

 うーん、そもそも生きてるかの検証が必要になるのか? とりあえず理系っぽい検証はおいとくとしよう。

 昨夜生み出した土竜の片割れが戻ってきたということは、先生……或いは能力で擬態した岩を見つけたということか。


 直接、俺達の誰かが確認したわけじゃないが、土竜が活動する地中に埋まる大きな岩なんて、怪しいにもほどがある。おそらく当たりだろう。


 無駄な思考を回してる間に、号令を受けた土竜の『もぐ』は地中に潜ってしまった。


「……葉月さん、葉月さん。地面の中にいっても場所は分かるのか?」


 葉月さんの肩を軽く叩き、小声で問い掛けた。彼女のインクについては、能力に関するデリケートな問題であるから念のための小声だ。


「……ううん、わかんない」


 じゃあどうやって? と疑問を投げ掛けようとしたタイミングで、少し距離をとった地点から土竜が顔を出して、こちらを振り返る。


「……こんなふうに、助けてもらわないと位置も分からないの。あたしの能力インクじゃないからねー」


「……そう言うが、あれを生んだのは葉月さんの技だろ。描いたものが本物になる? そんなインク聞いたことがない。それに、正確な指示を出さなくても、あれは貴女を助けてくれてるんだろ。そんなの能力と大差ない」


「………… ごめんね、朝から迷惑かけちゃって。人を慰めるのとか苦手でしょ? でも頑張ってくれてね。嬉しい、ありがと御盾君」


「……どういたしまして」

 

 俺の下手くそな慰めで、葉月さんは元気が出たのか土竜がいる方向へと早足で向かった。

 それから、離れた所でくるりと俺の方を振り返って、「はやくはやく」と得意げに笑いながら言う。

 

「ーーはぁ、俺たちもいきますか」


 置いてかれたもの同士、今日は振り回されましょうという心の内が伝わったのか、側にいた篠原 紅里は肩を竦める。けど、その顔自体は笑顔のままで、内心この状況を楽しんでるのが分かる。

 

「そういえば、小屋の周りにあったバリケードって片付けたの?」


 彼女の言うバリケードとは見え難い細い糸に、銀をコーティングして周囲に生えてる木々に張り巡らせ、小屋を囲っているものだ。

 3本の糸を複雑に配置していて、一箇所だけ糸を繋いでいない。そこが出口にあたるのだが、分かるのは【保護】した俺、【電気】を流して確かめられる篠原 紅里だけ。

 

 昨日確認のため、篠原 紅里には能力を使ってのレクチャーをしたからか、ちゃんと頭に残っているのだろう……。


ーーなら、直接レクチャーしてない葉月さんは?


「ーーきゃ」


 バリケードにぶつかり、短い悲鳴を上げて葉月さんは尻餅をついた。


 お、遅かった……、寝起きの頭で気付くのが遅れ、おまけに危険に気づいたのに間に合いもしない、これじゃ護衛としては失格だ。


 俺は慌てて葉月さんの元へと向かう。

 

「痛たた、なに? 見えないかべ? もしかしてオカルト!?」


「ーーあの、葉月さんごめん。バリケードがあったの忘れてた……本当にごめん」


「急いでたあたしも悪いけど。このー、おっちょこちょい! あたしじゃ出口分かんないってやつでしょ、はやく案内してよね、もう」

 

 ぶつけたお尻を摩りながら話しているのは不安だが、元気そうでよかった。

 

 ひとまず安心したところで、俺はバリケードの糸に触れて【保護】を辿っていく。そして、一箇所木と木が糸で結ばれていない場所を把握し、2人を先導していく。


 葉月さんがぶつかった場所からさほど離れていない地点だったので、土竜を見失うことはなさそうだ。

 

「そこかー。あたし惜しかったね。もうちょっとでぶつからずに済んだのにー」


「元気そうで良かったよ。その調子でいつまでも明るくいてくれ」

 

 何事もなかった安心感から、適当すぎる台詞が口から出てきてしまう。それを聞いて怒るでもなく、笑ったまま頷く彼女に俺も笑って見せた。

 

「うわ、笑顔ぎこちない! 普段使わない筋肉を急に使うからだよー。紅里ちゃんも見て見て!」


 む、笑っただけなのに酷い。そのうえ、話に混ざってなかった篠原 紅里を態々俺の正面まで連れてくる。これ以上笑いものにされるのも面白くないので、顔を元に戻そうとしたら……、上がる時は自然に上がったはずの頬が、なかなか戻らない。

 まずいと思って両手で顔を隠そうとした時には、2人の目線はこちらを向いていて、葉月さんは先程より大げさに笑っていて、篠原 紅里も手で口を押さえて笑いを堪えるのに必死な様子だった。


「ーーはぁ、仕方ないだろ。苦笑いはよくするから得意だが、笑顔とかTV見てる時しかしないし……人前に限って言えば愛想笑いさえしないんだよ……。話の流れでそれっぽく笑っただけなのに、こんなに馬鹿にされるとか。二度とするか、くそ」


「えー、そう言わずに練習しなよ。できなくて困るのは御盾君だよー」


「私はゆっくりでもいいと思うけど……、笑顔は出来た方がいいんじゃないかな」


「2人して寄ってたかって、そこまで酷いのか……。そうか……笑顔の練習……、検討しとく」


 俺の笑顔がやばいって話は、今後俺自身がどうにかするということで決着した。随分と長い無駄話をしていた気がするが、俺たちは葉月さんの生み出した土竜の案内に従って先生が隠れていると思われる入り口付近へと、足を進めた。


*****


「キュウ、キューウ!」


 木々が開けて、昨日俺たちが入ってきた地点が近づいてきた頃。先行していた土竜が鳴き声を上げる。それに答えるように地中から顔を出したもう一匹の土竜も鳴き声を上げた。


「キュキューー!」


「あー『ぐら』だ。よーし2人とも! ついたよ、あそこでちょっと飛び出てる石が、例の先生が化けてる岩……かもしれないやつだね」


 というのも、昨日ここから森に入る際、篠原 紅里が躓き転びそうになったのだが、その時の原因があの石らしい。石といっても、強固に埋められたか、或いは大きな岩が埋まっているかのようにびくともしなかったと言う。だからその石こそが、先生ーー第一試験かくれんぼのターゲットの1人である有岡先生(能力【岩石鎧】)ーーだと考え、土竜に調べさせていた。


「いよいよか……。見つかった瞬間暴れ出されたら困るから、俺が調べてくる」


 2人がどのくらい強いかは与り知らないところではあるが、少なくとも俺なら死なないだろうし、白守〈しろもり〉流護衛術で反撃出来そうな自信も、あるにはある……。


「おけー、お願いね」

「お願いします」


「ーーああ、任された」


 2人を少し離れた場所に残し、俺は石の元へと向かう。

 この手で触れられる地点まで辿り着く、傍には心配そうに「ーーキュ」と鳴き声を上げる土竜……、確か俺に懐いていた方の『ぐら』だ。危険な位置なのに、俺を気遣ってるのかもな、かわいいやつだな。

 少し心が癒されたところで、そろそろ石を調べようと手を伸ばす。念のため全身を【保護】し、石に触れた手から能力を使うイメージを思い描き『詠唱(仮)』を唱える。


「ーー『俺はあらゆるものを護る防人』」


 すると、俺の手を始点として恐ろしいほど素早く【保護】が行き渡っていく。能力の対象となる物の形が感覚として脳に送られてくる。

 は、俺たちの予想は正解だったらしい。地表に露出している石は、大きな岩の一部でしかなく、その形は岩の巨人が丸まっているようで、中心には人がいる気配もある。間違いない、有岡先生だった。


 確認は済んだので【保護】を解除して、離れた場所で見守っている2人に頷き、手を振って呼び寄せる。


「……ねぇ御盾君。こっからどーするの? 御盾君が地面に埋まった岩を持ち上げられる力持ちだった記憶はないんだけど……」


「……記憶力だけが取り柄の俺にもないわ……。持ち上げなくても岩をどうにかする考えはある」


 葉月さんが小声で心配事を問いかけてくるけど、安心して欲しい。この試験が『かくれんぼ』であるならば、鬼の俺たちが、隠れる者である先生を誘い出す為の最強の方法がある。

 その発動条件も今さっき満たしたところだ。


「……2人ともこの試験名を思い出して欲しい」


「……もったいぶらないで、教えてよ〜」

「……『かくれんぼ』だったよね……、あ、そっか、ならあれだね」


 折角、わざと勿体ぶってかっこつけてるのに、それをぶち壊そうとしてくる葉月さんは真面目に考えようとしてないので思い至らなかったようだが、篠原 紅里には伝わったようだ。


 「え、どゆこと? ねぇ、ねぇって……教えてよー、御盾君、謝るから……ちょっとキメようとしてたのを邪魔しちゃったのーーーー」

「あー! 分かった。分かったからそれ以上言わないでくれ」


 少しかっこつけて伝えようとしてたのがバレバレだったらしく、慌てて話の途中で止めに入った。結果的に俺が折れに折れてる感じだが、大抵いつもこんな扱いなので仕方ない、諦めよう。

 そして、葉月さんにも分かり易いように教えるべく続ける。


「鬼側でかくれんぼをしてて、誰かを見つけたら言う言葉があるだろ。あれを言えば先生も出て来ざるを得ないはず……って話。分かったか?」


「流石にわかるって。けど、それならそうと、さっさと言ってくれれば良いのに」


「仕方ないんだよ、男の子には色々あるの。それと一応、篠原 紅里も大丈夫か?」


「私は最初ので分かったから大丈夫。言う準備も出来てるよ」


「そうか、頼もしい。葉月さんも大丈夫か? 貴女のお望み通りさっさと言うぞ」


「あたしもいつでもいいよー、大声出すのは得意だもん、そこは安心して!」


 無駄にかっこつけようとしたせいで、準備が整うまで時間がかかってしまった気がする。


 先生が出てきたら、恐らく戦闘になるだろう。念のため一度周囲を見渡す。けど森の入り口付近と、場所が場所であるせいか人の気配はない。このまま始めても良さそうだと判断する。


「じゃあ、せーのでいこう。ーーでは葉月さん、後はお願い致します!」


 大声出して音頭をとるキャラじゃないですもの……。葉月さんみたいな人前に立ったり、誰かを引っ張ったりに慣れた人がいれば丸投げします。学校での俺はそういう人間だ。

 そんな駄目人間に役目を押し付けられた彼女は、目をぱちくりさせ、声まで出して驚きを表現した。


「ーーえ!? ここで、あたし? 御盾君が珍しく取り仕切ってるなー、と見てて感心してたのに、なんでこうゆう展開になっちゃうのかなあ……。

 どうせ問いただしても、今更考えを変えるはずないし。もう! ほんと変な人なんだから。はいはい、あたしが言えばいいんでしょ。それじゃあ! せーの!!」


「「「先生、みーつけた!!!」」」


 俺達は証拠を持ってして、先生の存在を指摘した。


 鬼にみつけたと言われてなお隠れる者は、この遊びのルールに反する。そんな奴を鬼はもちろん仲間さえも許さないだろう。遊びを冷めさせる奴など、以降誘われない事は間違いない。次の日から休み時間の全ての集団から排斥され、いじめに発展いてもおかしくない。


 それに、学校側がこの試験名に『かくれんぼ』と名付けておいて、そのルールを先生が順守しないのは、教える立場としてあってはならないだろう。


 3人で響かせた声が鳴り止み、森が再び閑散を取り戻したと思われた。


 しかし、一瞬静まった直後、真下から地響きが聞こえ出すとともに、石の周りが盛り上がった。その影響で揺れが発生していく。

 地響きと揺れは強さを増して、隠れていた岩の一部が見え出す。

 もう石とは言えない大きさまで正体を現したところで、野太い男の笑い声が耳を打つ。


「ーーハッ、ハッハッハッハッハッハ!! そうか! これが『かくれんぼ』であるなら、確実にそこにいるのだと、証拠も見つけられた上で鬼に見つかった俺は、出て来ざるを得ない……。とても巧い手法だった。普通の『かくれんぼ』ならここで全員合格にしてあげたいところだが、この【岩石鎧】に覆われる胸の機械に攻撃を当てねばならんぞ? そこは試験内容として譲れない。さあ、少年少女……俺は手強いぞ?」


 能力【岩石鎧】で全長およそ3mを有する岩の巨人と化した有岡先生が、全身を完全に地表に出現させた。

 その恐ろしい光景を見て、足を竦める者はいない。俺も葉月さんも篠原 紅里も揃って岩の巨人を、力強い目で見上げて身構える。


 さあ、いよいよ第一試験も終盤。地響きを聞きつけた人が集まる前に合格を得れるよう、音頭の役目を押し付けた分、全力で取り組むとするか!


 ようやく第一試験終幕が見えてきました……

 つまり慣れない戦闘シーンを書かないといけないですね、がんばります

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