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良し悪しの色とりどり  作者: 黒檸檬
一章 能ある鷹は爪を隠す
11/18

11. 日曜日、今を縛っている過去

 

 

 昨日は橙火とうかちゃんと携帯のLINNEっていうアプリで話して、すごく緊張した。

 ここ1年間、誰ともメールとかせずに過ごしていたせいか、返事を考える度に手が止まって頭を抱えたけど、上手く返せたと思いたい。

 それより、今時はメールじゃなくてアプリなのよね……私も高校生らしく早く使いこなさないと。


 私がこんなんなのは、以前通っていた学校で色々あったせい……。だから新しい学校では、なるべく地味に、残りの2年間を過ごすつもりだった。

 それが偶然、席の近かった2人に誘われて、能力試験に参加することになりました、はは……。


 予定では、「慣れてないので見学を……」とやり過ごす気でいた。それを橙火ちゃんと御盾みたて君の2人に誘われてしまって、自己紹介での一悶着から助けられた手前、断れなかった。


 転校初日から【水】を使う人から助けてもらって、出会って日も浅いのに親睦会まで開いてくれて、既に下の名前で呼び合う仲になってるくらい。

 そういう経緯もあって、悪い人では無いことは分かった。むしろ良い人達なんだろうな、ああいう人達って。


 でも、いくら良い人達で、私なんかと仲良くしてくれても、試験は別。

 大勢に晒されてしまう公の場では、二度と全力を出してはいけない。

 きっと嫌われて、妬まれて、最後にはみんなに避けられて、いないものとして扱われる。あんなのはもう嫌だ。


 でも、もしかしたら、環境が悪かったのかもしれない。そんな希望抱くことが愚かなことくらい、分かっている。分かっているから、手を抜く。

 それを許してもらうための正当化。違うか、自分勝手な免罪符として、自分の過去を思い出して、私を縛りつける…………


*****


 過去の私は、ここからはずっと遠い場所に暮らしていた。

 高層ビルが立ち並び、大型ショッピングモールや高級レストラン、お金持ちが大好きなものが集まったような都会と呼ぶべき街だった。

 お父さんが国の機関に勤めていたおかげで、家族3人、何不自由なく暮らしていた。笑顔の絶えない、いい家族だったと思う。何よりすごく。すごく幸せだった。



 だけど、そんな生活は面白いくらい、意外とあっさり崩れてしまう。

 ある日突然、お父さんが、まだ中学生だった私とお母さんを残して蒸発した。

 国の機関をクビになったお父さんは、無職だということを隠す事に、耐えられなくなったんだよ。と後からお母さんに伝えられた……けど、だからといって納得できるわけがない。


 まだ私はお父さんを許せていない。家族なんだから、ひと言でもいいから言ってくれればよかったのに……。

 こんな事を後から、お母さんが他人から伝えられた、そんなの酷すぎると思った。

 夜遅くに1人泣いている姿を、お父さんは想像さえできなかったのか……

 あぁ、嫌いになりそうだ。


 そんな酷い親でも、借金をしないで居なくなってくれたことだけは、救いだった。もし、借金があったら迷わず嫌いになってたかもしれない……それは現金だと否定しますか? 所詮、この世で生きてくにはお金が必要なのだから、否定するのは、お金持ちの綺麗事でしかない。


 だから、私はこの道を選んでしまったのだろう。今思えば、ここが原点だった。


 それからは、安いアパートに引っ越し節約して暮らしていた。

 暫くの間は、周りの目を誤魔化せていたが、当然私の状況に気づく人はいて、噂はあっという間にクラス中に広がる。お約束通り、私は仲間外れにされていく。

 いくら能力が強くて才能があっても、浮く時は浮く世界。それは能力があってもなくても変わらない、世の理かもしれない。


 けど、私はそれを1人で耐えた。1人で勉強し続けて、ただ1人であっても真面目を装った。


 せめて、給付金を貰える学校に行って少しでも、お母さんに親孝行を……楽をさせてあげたいと思ったから。

 

*****


 1年後に、漸くその努力は報われる。偶々見かけた高校のパンフレットに、魅力的にもこう書かれていた。


『4月初旬の能力試験で優勝したものに学費免除に加え、給付金を月に5万。能力教育の特別授業を上位40名に受けさせる』


「うんっ、ここなら行けそう」


 自慢じゃないが私の能力は強い。


 【電気】を自由に操れる私は今まで誰にも負けたことが無かった。帯電状態の私に近づける者なんていないし、遠くにいる相手には放電で対処する。


 私はすぐにこの学校に行くことを決め、真面目が功を奏して楽々と入試に合格した結果、ここに入学できるすることになった。


*****


「ーーさぁ! 皆さんお待たせ致しました! これよりお待ちかねの最終試験の準決勝を始めます!! まだ準決勝だからと気を抜くことなかれ、この試合の見応えは保証しましょう。対戦者たる2人の紹介だー!」


 妙にテンションの高い司会者が叫ぶ。毎回毎回この調子で紹介してるんだから、既に私は飽きていた。

 しかし、会場の熱気は司会の声と共に上がっていく。


「初めに紹介しますのは、弾丸を自在に変え、全てを撃ち抜くガンマン。故に彼が狙った者には、誰1人同じ傷は残らない! その名は、(くろがね) 銅屋(とうや)!!」


 紹介と共に会場へ対戦相手は出たようだ。かくいう私は反対側の扉で待機中のため、拍手で判断しただけ。

 ともあれ、次に紹介されるのは私だ。ここまで来たら、もう気持ちを引き締めるしかない。

 あと2人に私は勝つ……。まずは遠距離主体のガンマンとやらだ。


「さぁ、対して、彼の銃に挑むのは……! 未だ彼女に傷をつけたものはおらず、雷を操り、目にも留まらぬ速さで敵を感電させてきた。まさに雷の化身! その名も、篠原しのはら 紅里あかり!!!」


 紹介された私は、会場に出る。そして私は観客席など見向きもせず、目の前のガンマンを観察する。


 まずは手。拳銃が握られているが、何発入る銃なのか、この距離じゃ確認できない。

 続けて、全身を見るが、銃の入ってないホルスターが1つ。見た限りで2丁目の銃は見当たらず、接近戦用のナイフやらも見当たらない。


 その銃だけなのかな。近づけさえすれば圧倒的に有利になりそうだけど……それを許さない、余程の格闘術でも持ってるのかな。

 最初から近づかせないつもりかな? でも遠い方が彼に有利なのは間違いない。一応近づくのは様子を伺った後にしよう。なんてったて負けられないから、慎重にいこう。


 その他にも何個か対応を考えていたが、もう始まるようだ。


「では、準決勝開始!」


 開始早々、弾が飛んでくる。流石に銃弾を見てから躱す技は、身体能力が人間の私には出来ない。

 だから、私は前方5メートル程先に【電気】の壁を造る。


「【電気】で弾が防げる訳ないでしょ、僕の毒弾をくらえ!」


 彼の言う通り、今使ってる弱い【電気】じゃ無理。だけど、私の目的は防ぐことじゃない。

 半ば強引に、【電気】の壁と、私の脊髄とを繋げてやる。少し痛むが、勝つためだから気にしない。

 こうすれば、壁にあの弾が通った瞬間、繋がりを通って脊髄へ電気信号が届く。


 あとは、銃弾を危険と判断した脊髄が、反射で動かしてくれるだろう。

 中学生の時に、理科の授業で思いついて以来愛用してる使用方法だけど、無駄な信号を取捨選択する感覚だけは慣れなくて、今でも苦労してる。

 でも、今回の銃弾みたいに、壁を通る物に1つとして、当たっちゃいけない時は、伝達される全てが必要な信号だから、楽だけど。


 すっ、と私の真横を銃弾が通り過ぎていった。正確には、【電気】の壁が正常に働いて、身体が勝手に銃弾を避けていたが。

 この仕組みに気付いたのか伺うため、ガンマンを見る。


 すると、避けられると思ってなかったのか、予想外の事態に慌てる姿が目に映る。

 慌てながらも、また1発、さらに1発、と多彩な弾を打ち込んでくる。

 だが、その全てを難なく避ける。やがてやってくる弾切れを待つために。定石通り、弾が切れる隙を狙う。 

 でも近づきはしない。あちらに何か策があったら面倒くさいから慎重に……


「ーーっ、次の弾を」


 よし、最終確認。弾切れを起こしたように思えたが、すぐさま掌に新しい銃弾を造っている。


 能力は弾の創造か、それなら弾丸を自在に変えるという司会の紹介に納得がいく。私と彼との距離が、もっと遠かったら危なかった。

 永遠に撃たれてしまい防戦一方を余儀なくされたかもしれない。


 まぁ、もしもの話はいいか。

 戦隊ヒーローやプリティな女の子達の悪役みたいに変身を待ったりしない。

 彼が弾を創造して、その装填を待たず、この隙に私は勝負をつけにいかせてもらおう 


「放電、弱化、感電撃」


 目にも止まらない速さで、私の手から放たれた光が一直線に彼を貫いた。


 最も自信のある【電気】の使い方。ただ真っ直ぐに【電気】を放出するだけの簡単なもの。


 それと今回は殺しちゃ駄目だから、感覚で弱く調節するだけでなく、さらに『言葉』も使って弱いと規定して念押しをした。


 何故『言葉』かと言うと、『言葉』を用いると能力が制御しやすかったり、威力が上がったりするのだと、昔……まだお父さんがいた頃に教わった。お父さんの仮説では『言葉』には『想い』? が乗りやすいとか。なんて胡散臭い仮説なんだか……。


 でも、これで私の勝ち。

 終わったと思い込んでいたら、まだ彼は倒れていない。


 流石に準決勝まで勝ち進んだ人。『言葉』を使ってまで制御したのは、弱めすぎたか……。


 けど彼は満身創痍。全身が痺れて、ろくに弾を込められていないようだ。

 おそらく立っているだけで精一杯なこの状況、これなら近づいても何の問題ないか。


 とどめを刺すために、彼との距離を一気に詰めよう。

 だからといって、【電気】を流して脳のリミッターを解除するやり方は好きじゃない。だから別のやり方でいく。

 ほんの少しだけ、身体を電気に近づける。


 電気の速さは光にさえも匹敵する。つまりは、その速さをほんの少し、私の体に再現させた。

 今の私は、電気本来の速さとまではいかなくても、十分過ぎる速さがあった。


 そして、一瞬で彼との距離をゼロにする。

 まだ麻痺が残っているようで、近づいても撃たれなかった私は、利き手である左手に【電気】を纏い、彼の身体に触れて電流を流し込み、さらに感電させる。


 元から限界だったのか、2度目の感電によって、その身を痙攣させて、倒れ込んだ。手加減したから死んではないだろうけど、医療班が急いで駆けつけてくる。

もう1度電気ショックを与えて治せなくはないけど、後は任せて平気か……。薄情と言われようと、ここは能力を温存させて頂こう。


「……はっ? 終わったんでしょうか。すみません! こっ、これにて準決勝を終了いたします! 勝者は、篠原 紅里! 電撃を飛ばしてからの、追撃はまったく見えませんでしたよ。まさに瞬殺! 決勝進出おめでとうございます!!」


 不思議な程驚いた司会者が印象的だったが、これで……やっと、やっとゴールが見えてきた。

 あと1勝。あと1人倒せばお金が貰えて、お母さんに楽をさせられて、高校にも通える。



「ーーぐうっ! はっ……はぁ……負けた。これじゃ幻滅される……不味い。とっても……不味い。あんた、篠原しのはら 紅里あかり……だったか? 名前は覚えた。確実に要注意の学生……それが分かっただけ良かった……か」

 

 医療班のAED処置と回復系の能力によって、意識を取り戻した彼が何か呟いてるが関係ない。

 はっきり言って、決勝まで1時間しかないため、気にしてる暇がない。少しでも体を休めて挑みたい。さっさと控室に戻ろう。


「ではでは、このまま決勝戦へ参りましょう! 運営側からの通達で急遽予定を変更するそうです!! わたくしとしても面白い試合がすぐに見れるので大歓迎です。篠原 紅里さんには悪いですが連戦でお願い致します」


 戻ろうと踵を返した途端に、アナウンスが入った。

 内容を聞いてみると。はぁ、つまり私には休憩タイムは無いらしい。

 相手さんの試合は、私達の前に行われていたため多少の休みを取っている。

 早く終わるに越したことはないけど……。

 嫌な予感がする。敢えて不利な状況にされたような。


「さぁ、銃VS電気対決に勝利した篠原 紅里と闘う進出者は……。大財閥の御曹司にして、入学早々にも関わらず、知らない者はいない人気者! 金城きんじょう 成次せいじ!! お二人共、今大会で一度も傷を負っていません。つまり無傷対決! では、司会の紹介は短めで、早速決勝戦……始め!」


 なんだかなぁ。この司会の人テンション高すぎだよね、私は好きじゃないけど天職だと思うよ。


くろがねが決勝で会いましょう。なんて言ってた気がするが……違うのか。まぁ、所詮、平民。いや貧乏人だったか? いずれにせよすぐに終わるか、はぁ……つまらん。まだ、鉄との闘いは、銃弾がころころ変わって面白いのだがなぁ」


 うちの家が貧乏だと知ってるのは中学の子達だけで、この学校に入学した人はいないはずなのに知っている。まるで、私の事を調べてるかのような口振りだ。

 それに御曹司だかなんだか知らないけど、お金があるからって上から目線、ほんと気分悪い。


「だんまりか、この俺と話せるだけでも光栄だと言うのに、無礼な奴だ。そんな貴様でも、決勝まで来れたのだ、特別に出し惜しみはしないでやろう!」


 名前すら呼びたくないので、これから嫌味を込めて御曹司って呼ぼう。

 さてと、御曹司さんは何やら、持参したアタッシュケースを開き不敵な笑みを浮かべて、こっちを見ている。

 対する私は何をしてきても対応できるよう、準決勝と同じ電気の壁を展開する。万全の体制で構えていたが……


 驚いたことに注視していたアタッシュケースから溢れ出てきたのは……。

ーーーー大量の一万円札だった。


「最新の科学力は凄いだろ? この小さいサイズに何百億も入るのだ。父様に無理言って作らせた俺も、初めはこの出来に驚いたくらいだ」


「えぇ、そう……ですね」


 会話も交わしたくなかった金持ちに向かって、咄嗟に変な言葉遣いで、返してしまうほど気が動転した。目にした事ないお金を前にして、目が奪われたわけじゃない、流石にそこまで落ちてない。


 それより、あの金で何がしたいのか理解出来ない。金で買収? 大人数が見ている中で? そんな生々しそうな事はしないよね、ね? もしかして、札束で叩いてくるの……いやまさかね、だって絵面が悪すぎる。

 

「ふん、綺麗だろ? 知っての通り、この国で1番価値のある紙だ。俺はこの札以外は動かさんし、認めん。貧乏人が使うような細かい紙屑らは、存在するだけで気持ちが悪い。だがしかし! 硬貨は別だ、あれには確かな価値があると、俺は思っている。お前には分からない話かもしれんがな、なにせお前らとは基準が異なる。おっと、無駄話はこの辺でいいか。では決め台詞的な……。うむ、これが金の力である。くらえ」


 大量の一万円札を使った攻撃は至ってシンプルで、札束が次々に、まるで波のように押し寄せてくるものだった。

 これが見た目以上に厄介で、電気の壁による反射でも、範囲が広すぎて避けきれず、私は札束の波に飲み込まれた。


 やばっ、重い……身動きが取れない。お金ってこんな重いの……。  


 恐ろしい量の札束が、勢いよくぶつかってきた事によって、うつ伏せにされた私の上に、積もり積もっていき、飲み込まれ遂には動けなくなる。

 止まる事なく札束が積み重なり、覆い被さり、光を完全に遮ってしまい、身動きだけでなく視界までも奪われてしまう。


 さて、どうしよう。少し、というか凄く勿体無いけど私のお金じゃないしね、燃やそう、今出てる分は全部燃やしちゃおう。


 私は両腕から電気を発し、バチバチと放電させる。


 所詮、お札は紙。飛び散った火花が引火し、札束が燃え盛る。


 当然その場にいる私も火傷してしまうので、炭化し脆くなった部分を狙い、全身に電気を纏ったまま脱出する。態々纏ったのは、たとえ灰であっても熱いものは熱いので念には念を、です。


「ごほっ、煙たい……」


「は!? お……俺の金が燃えているーーなんてな、ざっと50億ほどだが、はした金だ気にしないさ。さぁ次の波だ、今度は更に多いぞ」


 うぅ、金持ち自慢をそれとなく混ぜてくるのが嫌すぎるけど、これは流石に、お金持ち過ぎる……。

 それは、札束の波なんてもんじゃない。札束が津波のように高く、質量を持って襲い掛かろうとしている。

 それにまず、【電気】の壁が触れる。流れ込んでくる情報から、真正面から見えている以上に、札束の津波には奥行きがある事が分かる。これに飲まれて抜け出せるか分からない。途端に不安になるけど、やられっぱなしではいられない。この闘い、絶対に私が勝つ。


 ポケットに手を入れ、伸縮させた状態で仕舞っていた警棒を取り出す。と同時に左手で振り出し、構える。


 御曹司の札束が沢山入るアタッシュケースとは違い、これはネットで売ってるような、普通の警棒でしかないけど、女子で小柄な私が補いたい、近接戦でのリーチが稼げて、鉄製だから私の【電気】とも相性の良い武器だ。

 いや、あくまで護身用としておこう。その方が女の子らしい。


 手に能力を使う時と同様に【電気】を警棒に纏わせる。これで叩けばスタンガンの容量と同じく気絶、あるいはもっと電力を注げば感電死させられる。


 けど、この場で使いたい機能ではない。

 私は警棒に纏わせた【電気】をさらに増やしていく、そして可視化できるまで【電気】を纏った警棒で、この札束の波を貫き燃やす。


「ーーはあぁ!!」


 深呼吸で全身の力を抜き、札束の波に向かって一気に駆け出す。札束を貫くように警棒を向けて、思いっきり駆け出したスピードのまま突進する。


 はじめに接触した警棒は、溜められた過剰な【電気】によって、大量の火花を散らし、接触した札束を燃やす。さらに全力で【電気】を放電させていき、燃え移り続けていった炎は、あれほどあった札束を着実に消し炭にしていった。ここまで予定通り。

 


 次に本体……。札束の津波を抜けようとする瞬間、その勢いのままに、御曹司が札束で姿が隠れてしまう前にいたところ目掛けて、警棒を突き立てようとした。


 が、視界が開いた時、御曹司はその場にいなかった。私は急いで攻撃を中断し、身体を翻し周囲を警戒する。


 彼は札束に紛れて、既に遠くへ移動していた。


「なっ……。じゃあ放電」

 

 ただ真っ直ぐに【電気】を放出する。準決勝の相手には『言葉』も使って手加減をしたけど、弱すぎたから今回は様子見といこう。


「それのことか……。なるほど。周りが電気には気をつけろと煩かったからな。だがまぁ、それが電気であるならば、対策のしようもある」


 アタッシュケースから追加の札束が溢れ出し、少しずつ積み上がっていく。


「紙は電気を通さないから、貴方の代わりにはならない」


「なに、俺には当たらんさ」



 あれで避雷針代わりになるのか知ったことじゃ無いけど、御曹司と同じくらいの背丈に積み上がっていった札束の山は、未だ完成には程遠い状態。

 だから、そのまま金城に向かって電気は進んでいくはずだった。なのに【電気】が進路を変更し、未完成の紙の塔へと逸れて燃え盛る。


「……アタッシュケースね」


「おぉ、よく分かったな。貧乏人にしては頭が良く回る。回らなければ生きられぬものな」


 おそらく、あの紙の中心にアタッシュケースがある。

 紙を積み上げていたのではなく、下からアタッシュケースを持ち上げていた。だがら、金属に引き寄せられ同じくらいの札束の山へ逸れてしまった。

 つまりは、予想以上に札束を自由に操れるらしい……本当に変わった能力だ。


「なかなか楽しめた。では俺の方も、そろそろチェックメイトをかけにいこうではないか」


「やれるなら、どうぞ」


 最初っから続く、上から目線に少し腹が立つ。私は負ける訳にはいかないんだから、なんせお母さんと私の生活が懸かってる。

 こんなの、お金持ちには分からない気持ちでしょうけど。


「なら、いくぞ。俺の全財産、全万札!! 1枚も残さず出てこいぃ!!」


 小さな山となった札束の中心にあるアタッシュケースから、今までの比じゃない量の札束が溢れ出す。

 このまま会場を、埋め尽くすんじゃないかと思えるほどの勢いで溢れる札束は、元々あった山に積み上がり、被さり合っていき、圧縮に圧縮を続け、やがて人の形をとっていく。


「はっはっは、これぞ俺の全力! 驚け、ひれ伏せ、讃えよ、金の、いや俺の力をーー!! 《財は巨大なる王の象徴(ギガンティア・ゴルド)


ーーそう、御曹司さんは知っているみたいだ。能力の辿り着く先を……。


 溢れ終わった札束が、完全に人型となった。

 その高さはおよそ20m。どこかの埋め立て地にあるロボットくらい大きい。あの体を構成している札束の量が多すぎて、どれだけの重さなのか予想がつかない事が怖い。

 

 完成したと思われた巨人が、さらに全身を発光させたのち、その表面に薄らと金色を帯びていく。これも能力によるもの……。それを私はお父さんに教えられたから知っていた。

 間違いない。これは、必殺技と呼ばれているものだった。


「ははっ、凄い」


 あまりのスケールに思わず称賛してしまった。こんなのに勝てるだろうか。ううん、お金の為にも勝たなきゃ。

ーーーーって、目の前に、私の欲しいお金は沢山あるんだけどなぁ…………


 なんて虚しさを感じていると、札束の巨人は動き出し、その拳を私に向かって振り下ろした。

 私は身体を【電気】に近づけて全力で駆け出すことで、拳を躱した。直撃した床の凹みから、絶対に当たってはいけないと臆する。だからこそ足を止めちゃいけない。


 あの巨体から繰り出される攻撃の範囲は広いが、幸い動きは遅く、私の速さなら避けるのは何とかなりそうだ。けど、倒せるのかな、これ。私もそれなりの力を使わないと無理かな。


 巨人は、最初に振り下ろした方とは逆の拳を叩きつけてくる。それに対し、こちらも全力で躱していく。

 どれ程の時間だっただろうか、巨人が拳を叩きつけ、私が躱すを延々と繰り返していた。


 互いに互いを攻めあぐねていたが、先に限界を感じたのは、私だった。


 体力が奪われ、結果、躱し損ねてしまい、私の背中を拳が掠めた。そんな私の限界に気付いた彼が、こちらは、まだまだ余裕だと示すような声で、巨人の肩から話しかけてきた。

 それと、本体はそこにいたのね……気づかなかったよ。


「貧乏人にしては頑張った方だと思うぞ。うん、良くやった。俺も久しぶりに楽しめたからな、礼を言う」


「何勝手に私の負けを決めつけて、こっちにだって奥の手ぐらいあるんだから。恥ずかしくって人前で使った事は無いけど、使わないと貴方に勝てない、だから、特別に使ってあげる」


「ほう、奥の手……まだ俺を楽しませてくれるのか、では、それは何だ?」


必殺技・・・よ」


 小さな声で言ったはずが観客側まで届いてしまった。さっきまで御曹司を応援してた人も、戦いを真剣に見入っていた人達からも笑いと野次が飛んでくる。

 その中には、「小学生かよ!」や「必殺技とか、アニメや漫画じゃねぇんだから笑」といった言葉まで含まれていた。


 しかし、私の必殺技という言葉を最も間近で聞いていた御曹司さんだけは違った。


「ーー黙れ」


 その一言で、一瞬にして観客全員が黙りこみ、会場は静まり返った。


「必殺技とはな……。良く知っていたな、俺でさえ知ったのは最近だ。それも金に物を言わせた手段でだ。それだけ知られていないはずなのだ。それをお前は知っている……ふははは! いい、いいぞ! 今日1か……いや、ここ数年で1番面白い!! 俺はこの闘いを心の底から楽しいぞ!!」


「す、凄いテンションね……。えっと、必殺技の話は昔、お父さんから教えてもらったの。最初はふざけてるって思った。けど実際に効果はあるから驚きだよね」


「全くだ。必殺技なんて名前ふざけてるとしか思えない、極めつきに名前のダサさも相まってふざけている。だが、俺の必殺技を上回る必殺技を、貧乏人のお前が使えると? そこに興味が湧いてきた、さぁ存分に撃ってこい」


 まさか、私以外に必殺技を知ってる人がいるなんて驚いた。

 どうしてか1番最初、パンフレットで給付金の話を見た時から、完全に慢心していた。何の苦戦もせず、悠々と優勝できる気でいたらしい。我ながら恥ずかしくなる。


 だからって、負けられない。私の出せる全力を、北欧の神様に御名前を拝借した、私だけの必殺技を叩き込む!!


 手始めに、能力である【電気】を遥か彼方の天空へと展開し、四方八方に巡らせる。すると、青白い光が空を駆け抜け、そこかしこに小さな雲が生まれる。

 雲は雨だけでなく、雷を生み出し落とすもの。なら【電気】を生み出せれば雲を生み出す事も、あり得る。

 だってこれは必殺技、多少の物理現象ぐらい捻じ曲げられなきゃ必殺技なんて呼べない。


 その間も雲は作られ集まってを繰り返し、やがて青かった空に、黒い積乱雲が発生した。けど私の能力はあくまでも【電気】だから雨は降り出さない。これは雷を落とすためだけの雲でしかない。

 その積乱雲の中では、通常通りに静電気が発生し、雷を落とすべく成長していく。けど、その中に向かって私はさらに【電気】を織り交ぜていく。

 このまま、通常を超える量の電気を、溜め続けていき……


 ついに、雲の中では自然法則の限界を超えていく。


 限界の限界を超えた雷が、積乱雲の真下からはみ出していた。落ちようとする雷を私は強引に押し留める。まだ、巨人を一瞬で消し炭にするためには、威力が足りないし、これじゃまだだ、まだ必殺技じゃない。


 世界に漂う【電気】。と言うか小さな小さな電子からも【電気】を集めて雲の中へ溜め込む。ついでに、私の手からも更に電気を放出する。

 そして、雷は限界の限界の、そのまた向こうにある、限界へと突入していく。


 積乱雲からはみ出していた雷が色を変える。その色は紅。まるで炎を思わせるように恐ろしい色だが、それでいて鮮やかだとも感じられる紅色の雷が、地上に落ちる瞬間を、今か今かと待ちわびている。

 しかし、変化は色が変わっただけでは、終わらなかった。ただはみ出して、不定形だった雷に形を与える。


 その為に言葉を、想いを、紡ぐ。


「『現世うつつよあなたはいない』、『今尚、担い手を失った雷搥は』『遼遠の空にてこの日を待っていた』!!」


 この世の何よりも、紅い搥。

 馴染み深い言葉で表すなら紅いハンマーだ。

 それが今、私が生み出した雲から突き出ている。

 黄昏の時より、遠い時が巡り、今、再び地上に振るわれる事を歓喜しているかのように雷を煌かせている。

 あぁ、楽しい。この雷搥が私に相応しくなかろうと、あの灼熱のような紅で、この身が滅びようとも構わない。

 そんな私には似合わない感情ばかりが、浮かんでくる。きっと、強すぎる概念を模した弊害だろうけど。

 これこそが、私の全力。お父さんと一緒に、カッコつけまくって考え合った必殺技。


「必殺ーー《トール・ハンマー》!!」


「ーーこれだ、これだ! こういう胸躍る闘いを求めていたんだ俺は!!」


 その場の誰もが、紅里と金城の全力がぶつかり合う瞬間を待ち望んだ。たが残念な事に、この決勝戦の幕引きを飾る応酬に水を差す者がいた。


「ーーバンッ」


 突如会場に煙が充満していく。目の前が見えなくなり、狙いが定められないと悟った2人は、攻撃を中断せざるを得なかった。


「えー、機材トラブルでしょうか。直ちに原因解明、ならびに問題の解決を行いますので少々お待ちください」


 司会の放送は、このような緊急事態においても抜かりなく入った。


 一応、私は周りを注意深く見渡し、原因を探したが何も見つからない。襲撃を警戒して、自分を中心にして、囲うように電気の壁を展開した。今回は脊髄と繋がず、あくまで感覚器官の延長として利用する。けどおかしい。


 会場は私と御曹司の2人だけのはずなのに、2人、いや3人が私に向かって歩いてくるのを壁が感知した。


「やぁ、篠原 紅里君。まずは決勝戦を邪魔して悪かった。優勝まであと少しのようだが、君に頼みたい事があってのぅ。単刀直入に言うと金城君を優勝させて欲しいのじゃ」


 なんと、勝負が決まりそうな時に八百長を持ちかけられた。予め声をかければいいものを何故という疑問はあるが、それよりこのお年寄りは誰なのか。


「その前に貴方は誰なんですか?話はそれからでお願いします」


 正体不明の3人組のうち、杖をついた年寄りが話しかけてきたが、警戒を続ける。


「これは失礼。儂はこの学校の理事長をやってるものじゃ、横の2人は… 護衛みたいなもんじゃから気にせんで。お望み通り自己紹介はした。煙幕が切れるまで時間が無い。本題へ移らせて頂くぞ。実を言うとな、あの子の親御さんにこの試合、勝たせてくれって言われててのお。虫のいい話じゃが寄付金をたんまり貰っとるから、断る訳にはいかないのじゃ。もちろん君の目的である給付金に加え、定期的にお金を出しても良い。勝たせさえすれば儂らには、それだけ払っても問題ない寄付金が貰えるからのぅ。してどうする?」


 金か……当初の目的も金。ならいい話とも言えるか……。


「もしも断ったら?」


「優勝したとて給付金は出さんなぁ、君に勝たれると困るでのぉ」


 はぁ、それじゃ選択肢は1つしかないと同意だ。条件をのむしかない。

 まぁ正直言って、魅力的な話でもある。だって私は優勝したい訳じゃなく、給付金目当てで頑張ってるだけだから。勝っても貰えないなら、この条件で負けた方が私の得だ。


「いいですよ、別に。それっぽく負ければいいだけですよね?」


「おぉ、話が早くて助かる。なるべくバレないようにな。約束の金は必ず。では、儂らは観客席へ戻らせてもらおう。鉄ら、行くぞ」


 理事長と名乗る人との話も終わり、3人は煙の中に姿を消していった。


 3人が居なくなると同時に、対戦中の御曹司の声が聞こえてきた。どうやら彼に説明している様子はなく、故意に負ける事を、悟られてはいけないようだ。

 気を付けよう。と言っても必殺技を使おうとした事による消耗に見せかければいいか。これは案外楽かも。


「平民!! 何処へ行っていた、続きだ。俺は続きをやりたい」


「ーーそう。必殺技はもう使えそうにないけど……あなたを倒す」


 こんな感じ。あとは徐々に力を弱めていけば。


 火花で札束を焼き。時には札束がばらけ竜巻のように舞い上がりながら襲いかかる。私はそれに警棒を突き立て、振り下ろし、必死になって(・・・・・・)破っていく。


 破れたお札が地面に散らばっていき、覆い尽くしてく。

 しかし、札束を焼こうと発した火花が破れたお札にも発火し、地面は灰や煤だらけ。


 私も御曹司も靴を筆頭に、全身を黒く汚しながら戦い続ける。私は警棒で本体を狙っていくが、その悉くを避けられてしまう。


 が、そろそろいい時間だろうか。うん……。ここで終わりにしても、誰も文句は言わないはず。


 それに、ね。御曹司も接近戦を仕掛けてきそうだし、丁度いい。


「埒があかないな。やはり、お前は面白い」


 御曹司は僅かに笑い、アタッシュケースを閉じ。それを持って私の元へと近づいてくる。

 私は警棒を構え、受け止めようとする。


 そのまま御曹司との距離は縮まり、互いの武器がぶつかりあう距離まで近づいた。

 御曹司は勢いよくアタッシュケースを縦向きに降り、私はそれを警棒の両端を両手で持って受け止める。


 結果、甲高い音が会場に響く。


 その状態のままアタッシュケースを上から押し付けられ、鍔迫り合いのようになるが、御曹司の方は重さに加え位置の有利がある。

 私の護身用武器が下で御曹司の武器が上……。これに耐え続けるのは普通の人、まして女子には難しい。故に今が好機とも言える。


 私は警棒を持つ力を僅かに弱める。当然、警棒では耐えきれず地面に弾かれてしまった。

 御曹司はアタッシュケースを再度勢いよく私に向かって振るう。防ぐものが無くなった私は、ただひたすら目の前のアタッシュケースの動きに集中する。


 振るわれた攻撃自体の動きは単調で、真っ直ぐに向かってきているのを確認し。最低限の怪我で決着に持っていくため、右手を前に出し攻撃を防ごうとする。

 

 そして、直撃した瞬間、右手を少し引いてから私はアタッシュケースに軽く吹き飛ばされ倒れ込む。


 なんとか骨は折れてないようだが、打撲ぐらいは負ってしまったようで割と痛い。


「参った……。もう限界」


 私は右手に怪我を負った事、警棒を弾かれるほど消耗していた事をそれとなく、座り込んでアピールする。


「篠原さんが降参。では勝者!! 金城きんじょう 成次せいじ!!! 長らく続いた攻防戦の果て、最後まで立っていた彼は、実に素晴らしい。最高の能力者だ! 途中トラブルも御座いましたが、決勝戦にふさわしい戦いでした! 観客の皆々様。両者に向かって拍手をお願い致します!!!」


 司会にしっかりと聞こえていたようで、今まで通りの勝利宣言を行ってくれた。

 

 その直ぐ後に煩いほどの歓声と拍手が巻き起こる。

 無事終わったと確信し、安堵したその時、同じ試合会場にいた御曹司だけは違う感情を抱いていた。


「おい、どうして避けれたはずの攻撃を、避けなかった」


 ーー気付かれちゃったか。必殺技を使える強い人だし、こうなる可能性も考えてはいた。

 私は予め用意していた言葉を放ち、しらを切る。でなければ理事長さんの条件を満たせない。いや、なるべくって言ってたからバレても許してくれるかもしれないけど。


「何の……こと?」


「とぼけるな。そうか、あの煙の中でか……。ならお前もクソ親父どもの方に付いたか。久し振りに楽しかったってのに、またか! また、本気でやり合えなかったのか! 俺は自分の力で勝ちたいってのに、ほんと…… クソだ。あぁぁぁ、くそ! おい篠原しのはら 紅里あかり、金輪際俺と関わるな。この汚れた感情を……出来ればお前にぶつけたくない。確かに途中までは楽しかったからな」


「ーーーー分かった」


 私はそれだけ言って救護係の方へ向かった。いや違う。逃げていった(・・・・・・)のだ。


****


 その先は言うまでもない。この学校で1番金があって、権力もある男に関わるなと言われたのだ。必然的に私は腫れ物として扱われる。

 それに、あの戦いを見ていれば、必殺技とか言って創り出した雷搥やらに、恐怖を感じている可能性だってある。 


 たとえ、どんなに能力が強くても、私と関われば周囲にどう思われるか分からないから関わら人はいない。

 つまり、触らぬ神に祟りなし。

 ま、神様の雷搥を必殺技にしてるくらいだから、神と思われる点においてだけは、悪い気がしないけれども。


 一番酷いのは金城の取り巻き達だったね。自分たちのボスを怒らせた私を目の敵にすれば、喜ぶと思ってたんでしょう、きっと。

 そんな事で喜ぶ人じゃないと思うけど、態々こんなフォローするような仲じゃないけどさ。

 結局悪いのは私だから、心の中でだけはフォローくらいしなきゃダメなんだ。そうしないと罪悪感を、覆い隠せない。


 そんな日々を1年間耐えた。お母さんに嘘までついて、すごく無様に、1人きりで。


 薄々と気づいていたのだろうか、時々泣いている姿を目にした事もあったはずだ。

 なのに気付かないふりをした、直接言われるまで放置して置きたかった……問題を先送りにして、少しでも楽に過ごしたくて。

 今思えば、間違いだったと分かる。もし話し合ってさえいたなら、もっと早くあの場所から抜け出したはずだ。


 そもそも、あんな場所でよく10年以上暮らせていたなと。周囲にいい人なんていたっけ? って思うぐらい酷く優しくない場所だったような。


 それに比べて、この場所はいいや。景色も綺麗とは言えないけど穏やかで、夜もとても静かだ。

 1番は過去の私を知ってる人がいないこと。

 あの、自信家で嫌われ者の私をいなかったことに出来る。それが堪らなく嬉しい。


 もう二度と、同じ間違いを繰り返したりなんかしない。

 好きなように能力を振りかざして、自分のしたいままに行動して、自重を知らない馬鹿は、2度と生きてはいけないんだ。


 だから、私は本気を出す事をやめた。

 強すぎるから、勘違いするんだ。強くなければ他人を思いやれるはず。

 そして不格好にも、能力の強くない弱々しいキャラを、演じている。


 それが、この私。過去に縛られた篠原 紅里という人間は、本気を出さない。

 出すとしたら命に関わる時か、何もかも捨てて怒りたい時だけだ。



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