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良し悪しの色とりどり  作者: 黒檸檬
一章 能ある鷹は爪を隠す
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1. かつての煉獄



 先ず、この世界には能力というものがある。一般人にも能力が宿ったのを確認したのは、約80年前。ある1人の男が不思議な力を使い、町一帯の家屋を災害による崩壊から救った。という記述が残されていたことから明らかになっている。

 その後、各地で同様の力を持つものが、次々と現れた事で、世間はこの異常事態を認識した。それでも全体の割合としては少なかった為、能力者は不遇の時代を過ごす事となる。


 それが時を経ると、あっさりと話は変わってしまう。

 当初は数少なかった能力者が、その後爆発的に増えてしまった。

 それは大人だけに留まらず、新たに生まれてくる子供にまで能力が宿っていた。それも両親が能力を持っていないにも関わらずだ。当然、何も分からない社会は混乱する。

 これに対し、当時、能力の原因を説明出来なかった政府は、焦ったのだろう。確証が無かろうとも会見を開かずにはいられなかった。

 

 そこで政府が出した答えは、「能力者とは人間による、ある種の進化の形である」と言うものだった。


 今では歴史や生物の教科書に記述されている公然の事実であるのだが、未だ確かな証明はなされていないらしい。日夜、能力の研究がなされている。



*****



 8月11日、俺の住んでいた町が燃えた。


 燃えたなんて可愛いものじゃない、何処が出火場所か明らかになっておらず。一説には地獄から炎が漏れ出たのだ、なんてオカルト話まで出回ってるときた。


 強ち間違いじゃないのが面白い所だけれど。

 あの日を体験した誰もが語っている。まるで、地獄から何かが生まれ出てくるように、地面から炎が上がっていた、と。



 既に記憶も薄れてはっきりと思い出せないけれど、8月11日はいつも通りに、けれど珍しく親子揃って家にいた気がする。

 記憶に自信がないのも無理はない、その頃の俺はまだ5歳。幼かったせいもあるのだろう、思い出せるのは2人の後ろ姿。


 あぁ、でもあの姿だけは決して忘れるはずがない。


 手に届く範囲を守るのでもなく、

 目に映る全てを守るのでもなく、

 本当に全てを守ろうとして、守りきったあの姿を……。


 とびきりの【保護】を幼い俺に残して、2人は「安心して、灰十はいとは絶対に守るから」と言って。

 それに何を返したのだったか……。泣きそうな顔して「行かないで」と言ったけか。あの頃の俺は馬鹿なことを口にしたものだ。行かない訳にはいかないだろ。


 これは後に知ったことだが、あの2人は英雄だったらしい。その手で触れたものを、あらゆる害悪から守り続ける【保護】という珍しい能力を使えたのだ、当然世界に多用される。残された写真を見るに、当の本人達は幸せそうではあったのだが……。


 あの火災でも、皆を助けに出て行かなければならなかった。まして、英雄ならば助けにいかなければならない。


 奮闘の結果、突如として火の海と化した町は、2人の英雄によって守られた。

 町1つを飲み込む大火事であったが一般人への被害は見受けられず、家屋含め建物や土地にも被害は少なかった。


 被害は2人の親の死だけ。


 こんな事なら快く見送れば良かったと後悔したものだ……。


 しかし、その姿に憧れてしまったのも事実。


 これは遺伝か、それとも意思の継承故か。

 能力の発現に対する科学的証明は未だされておらず、俺なんかに答えを見出せる筈は無いが、あえて答えるなら“想い”。


 心からそうありたいという想い。

 単なる、その能力への憧れ。

 そんなものだと俺は思う。


 つまり、俺の能力も【保護】。2人の英雄を真近に見て憧れない方がおかしいだろ?





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