なろう作家 ジェラルミンの装備を身に着けた軍隊
かつて。
ジェラルミンの鎧を持った超人高校生がいた。
彼はこの世界の住人ではなかった。
異世界の、『ニホン』という国からやってきたのだ。
彼はジェラルミン製の武器防具を使い、チート無双するつもりでいた。
だが、その夢はたった一人の執事の前に無残にも打ち砕かれてしまった。
しかし、彼は諦めていなかった。
「フハハハハハ!今度はジェラルミンの装備百人分を用意し、下等な中世ヨーロッパ文明人に与え、最強のジェラルミン部隊を造ったぞ!今度こそ負けないぞっ!!!」
ピカピカのジェラルミンは城壁に囲まれた街に迫る。
その前に立ち不がるのは。
革鎧を身に着けた二十人ほどの盗賊の集団であった。
「まずは肩慣らしだ。こいつらからあっさり始末してやるぜ!!」
だがジェラルミンの装備を身に着けた超人高校生が攻撃の合図をするよりも前に盗賊のリーダーらしき男が声をかけてきた。
「む、お前達は何者だ?」
「俺はジェラルミンの装備を用意した超人高校生だ!!この最強のジェラルミン部隊でこの異世界でチート無双するのだ!!!」
「つまりお前がリーダーと言う事だな。それは都合がよい。和が名は盗賊騎士のスラロット。騎士の名において貴殿に一騎打ちを申し込む」
「は?一騎打ちだぁ?なんでそんなものを俺が受ける・・・」
「おい。騎士だってよ?」
「聞いたか?」
「ああ。一騎打ちだそうだ」
部下のジェラルミン部隊がボソボソ話し合っている。
「おい何してる。お前らかかれ」
「いやだって相手騎士だしな」
「何言ってんだ盗賊だぞ。とっと倒せよ?」
「一騎打ち申し込まれたら受けなきゃダメすよ大将?」
「そうですよ。男らしくない」
「く、ジェラルミンの装備を与えて下等な中世ヨーロッパ文明人共を手下にしたはいいが、こいつら頭の中まで中世ヨーロッパ文明人のまんまだっ・・・!!」
悔しがっても仕方ありません。アフリカ大陸の黒人に人権や食料を与えても、AK47で殺し合いをするだけなのと同様です。精神は劇的に変化するわけではないのです。
「だが、たとえ一騎打ちを受けても俺にメリットがないのは意味がないぞ?」
「では、掛け金を用意しよう」
盗賊騎士のスラロットは褐色肌青い髪の少女を前に出します。
「これはこの前手に入れた奴隷の娘だ。この勝負を掛け金としてお前のその白銀の武具と」
「よしやろう」
『変り身はや!!!』
盗賊騎士団だけでなく超人高校生の部下の異世界人たちも驚く変わり身の早さです。
「では明日。この時間にこの場所で」
「いいだろう。明日。この場所だな」
翌朝。
「立会人の聖マルタン修道院の修道院長です」
「この御方が中立公正な立場から今回の決闘を見守ってくださる」
盗賊騎士スラロットはそう言って一人の尼僧を紹介した。
「いや。立会人がいるのはまぁいいんだが」
「えぇー。ビール。ビールは如何っすか?」
「焼きソーセージ美味しいですよ?」
「かぁちゃん。ウエハースかってよー」
「さぁ張った張った!オッズはジェラルミンナイトが二倍!盗賊騎士スラロットが五倍だよ!!」
「盗賊騎士スラロットにこれ全部よっ!!」
「カズヤさん。どちらが勝つと思います?」
「あのピカピカの鎧を装備してる方に決まってるだろ?こいつをジェラルミンナイトに全部だ!!」
「では、私はカズヤさんとは賭けた金額の五分の一を盗賊騎士に賭けましょう」
「あの連中はなんなんだ?」
ジェラルミンの武具を装備した超人高校生は尋ねます。
「地元の連中だ。決闘が行われると聞いて見物に来たのだ」
スラロットが教えてくれました。
「五月蠅い連中だな。まぁいい。とっとと始めるぞ」
「来るがいい」
ジェラルミンの武具を装備した超人高校生は左手にジェラルミンの盾を持っています。鉄の盾より軽くて頑丈です。
ジェラルミンの武具を装備した超人高校生は右手にジェラルミンの剣を持っています。鉄の剣より軽くて強力です。
ジェラルミンの武具を装備した超人高校生は胴体にジェラルミンの鎧を身に着けています。鉄の鎧より軽くて頑丈です。
ところで、ジェラルミンの武器でジェラルミンの防具を攻撃するとどうなるんでしょうね?中国ではこれを『矛盾』というそうですよ?
ジェラルミンの装備を身に着けた超人高校生は剣を振りかぶりながら盗賊騎士スラロットに向かいます。
スラロットは。
盗賊で、騎士です。
騎士なのでマントを身に着けています。
素早く自分のマントを外すと、超人高校生の顔に巻きつけました。
「な、なにをするのだぁああああああーーーーっつつ!!!」
「昨日晩、お前の部下達に酒を奢ってな。その鎧が鉄の剣で傷つかないことは聞いておいた。だからこうするのだ」
そして地面に牽きづり倒し、剣を持っていた右手を踏んづけます。痛いので当然剣を手放してしまいます。
イガイ!それはタイジュツ!!
「勝負あり!勝者スラロット卿!!」
観客たちから歓声と、負け札が中に舞います。お前勝ったんだから今晩奢れという声も混じっています。
「というわけでお前の鎧を頂くぞ」
首筋に冷たい金属。ナイフが当てられているようです。仕方なく超人高校生は負けを認める事にしました。
「いいだろう。俺の着ている鎧をくれてやろう。だがこれで勝ったと」
「では皆さん掛け金を回収してください」
『はーい』
聖マルタン修道院長の合図のもと、彼女の背後に控えていた修道女百人くらいが一斉にシスター服を脱ぎます。そこから現れたのは。
褐色肌に青い髪。
「では、ここにコジプト人の娘さんが百人いるのでそちらの武具百着分すべて頂きます」
「く、さぎじゃねーかっ!!」
「詐欺?とんでもない。掛け金は最初から用意してあったではありませんか」
「そうだ。負けたら一人分。勝ったから百人分だそうだなんでそんな事全く考えてなかったからな」
「冗談じゃねぇつきあってられるか!おいお前達やっちまえ!!」
と、ジェラルミンの装備を身に着けた超人高校生は命令しましたが。部下達は一斉に鎧を脱ぎ始めます。
「昨日の話は本当かい?」
「ええ。この修道女さん達がいる当聖マルタン修道院では男手が不足しておりまして。大工見習家畜の世話農作業の手伝いなどお仕事探しには困らないと思いますよ?」
「なんだそうかい。じゃあわざわざ命の危険を冒して冒険者の真似事する必要はないな」
「それじゃあ大将。俺達はこの尼さん達と明るく楽しく暮らすからな。あんたも元気でな」
ジェラルミンの装備を渡した中世ヨーロッパ風異世界人たちは、それを退職金代わりに貰って超人高校生のもとから去っていきました。