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守るべきもの。排除すべきもの。

最近肌寒いですね。インフルエンザも流行ってます。みなさん風邪には気をつけてください。あ、私は予防がわりに走ったり筋トレしてダイエットしてます。

動いていて、その後に空を見上げて雲を見ていると頭が冴えて小説の内容を考えやすいです。ただそれだけです。

今回も楽しんで読んでもらえると嬉しいです。

 

「動ける奴らは今すぐに怪我人を運べ!」


『後ろからも来ている。次の禁呪を詠唱しろ』


 わかってる!少し黙ってろ!


 俺は後ろから来る死人の頭を殴り潰す。

 逃げ惑うものや俺と同じように戦うもの。

 そして死人の後ろには俺から大切なものを奪う存在。


「第二階梯、楔ノ技『ニードルガーデン』!」


 禁呪を詠唱し、地面に拳を打ち付ける。

 前方に向かい槍のように鋭い針が幾多も生えて行く。

 それに突き刺さり、絶命したり体を半分に裂かれる死人たち。


「リューク!死人が多すぎてこれじゃ奴にまた増やされるだけだ!何か策はないのか!?」


『そうだな……。奴は先代や初代よりも強くなっている』


 先代?初代?もしかして昔から禁忌協会はあったのか?


『あぁ。神々を殺すために作られた協会だ。まともに機能していたのは最初だけ。俺やアイツが捕まって改造されたのと同じ頃に禁忌協会は神々の手に落ちた』


 なら、こいつらはリュークを探し求めてどうするんだよ。


『それは俺にもわからん。もしかしたら神魔大戦の再来にお前たち人間を巻き込むためか、もしくはただの神の気まぐれか……。アイツらの考えていることなんて俺なんかにわかるわけがない』


「そうかよ!ならもうその話はいい!今を乗り越える手段を一緒に考えてくれ!」


『了解だ。第六席は言霊使いが選ばれる。だが、奴は死霊術師(ネクロマンサー)だ。言霊使いではない可能性がある。言霊使いでなければ策はあるが。試してみるか?』


 早くなんでもいいからやるぞ!


『そうか。ならばやろう。召喚術を使え。第七階梯禁呪、転生ノ技『英霊化』だ。……ただし、この術には転生というその名の通り生贄が必要だ。新鮮な血肉がなければ強い英霊は呼び出せない』


 そんな…っ!出来るわけないだろ!


『……ならば、防戦一方の戦いをするんだな』


「…クソがっ!」


 死人に怒りをぶつけるように殴って殴って引き千切る。


『後ろだ!逃げろ!』


 怒りに任せ攻撃していたせいか後ろがガラ空きになっていた。噛みつかれる!

 その瞬間、死人の額に突き刺さる奴が二本。


「シロ!私も手伝う!」


「私も手を貸すわシロ!」


 涙を流しながら弓に新しい矢をつがえるフリージアとハイネさんがいた。


「どうして二人がここに!?逃げろって言ったろ!」


 二人には恩がある。だから逃げろといったのに。どうしてわざわざ死ぬかもしれない戦いをしに来たんだよっ!


「バカじゃないの!?シロがひとりで戦ってるのに逃げるわけないでしょ!」


「あのよわっちいシロをおいてはいけないからね。まぁ、今は何かわからないけど、強くなってるみたいね」


『この二人に頼んでみるか?』


 バカ野郎。二人は俺の恩人なんだぞ?生贄に英霊の召喚なんて出来るかよ」


「シロ?英霊の召喚ってなに……?」


 不思議そうに訪ねて来るフリージア。そして俺は自分が無意識に出していた声にハッとし口を塞ぐ。


「シロ。あなたのしようとしていることは私にはわからない。でもね。あなたのお願いなら聞いてあげるわ。どんな願いでも…ね?だから話してくれる?」


「ハイネさん……。わかりました。でも、まずは近くの死人を倒さないと落ち着いて話もできない」


「そうだね!まずは倒そう!」


「俺は近くのを!二人は離れたところにいるやつを頼む!」


 各々武器を構え、敵の死人を一掃した。


 ―――――――――――――――――――


 一掃し終えた頃、フリードリヒはどこかへ姿を消していた。


 俺たちはフリージアの家に向かい、避難させていた生き残りの介抱をしていた。

 みんなが沈んでいた時に話すようなことではないが、俺は話さなくてはならない。

 自分のせいでこうなってしまったのだから。


「ハイネさん。フリージア。……村の皆さんも聞いてください」


 俺がみんなの見える位置に立つとみんなが俺の方を向く。

 ここにいるみんなの顔を俺は覚えている。二年間も見知らぬ俺を世話してくれた人達だ。

 だから、ここに何人がいないかわかってしまう。

 ここにいない人の名もなにもかも俺は知ってしまった。大切な人達になっていた。


「俺は皆さんの側にいるべき人間じゃなかったんです……」


 俺はこれまであった事、リュークが見てきた相川ナツキという男の記憶も。

 何もかも話した。包み隠す事なく。

 消えろ。死ね。そう罵られるのは嬉しくないが、仕方ない。もしこの場で弓で蜂の巣にされようと俺は構わない。この人たちの大切な場所をこんな風にしてしまったんだから。


 視線を下に落としどうすればこの罪を償うことが出来るのか。それを考えていた。

 すると頭に乗せられる手に気づく。視線を向けると俺を一番嫌っていたはずのハイネさんの許嫁であるリオンさんだった。


「謝る必要はない。自分を責めるな。お前は俺たちを救ってくれた……家族なんだ」


 その言葉に堪え切れず醜く嗚咽を漏らしてしまう。


「うぐっ…ひ…ぇぐ……ごめん…なざい……ごめんなさい!ごめんなさい!」


「安心しろ。俺たちはお前のことを憎んだりしない。死んでいった家族たちも俺たちがお前を攻めて殺したりすることを望みはしない」


 そう言い彼は俺を抱きしめてくれた。

 彼だけではない。周りにいた村の人たちも俺を囲むように抱きしめてくれる。


 あぁ、どうしてこんなにも優しい人たちが大切な人を失わないといけないんだろうか……。


『決意は決まったか?』


 なんの決意だ…?


『お前に足りないものは手数だ。仲間を増やせ。弱い仲間でも英霊化させれば力を得る。お前の命令しか聞かない仲間の完成だ』


 っ!そんなの奴隷よりも酷い扱いじゃないか!俺にそんなこと出来るわけが……。


『そうしないならお前はそのうち死ぬことになる。そうだな……。1つ。禁呪使いの先輩としての助言だ。想いは力だ。叶えたいという思いが強ければ願いも叶う……それだけだ。あとはお前が決めろ。もう口出しはしないさ』


 想いは力……。


 これからもこんなことがあるかもしれないなら俺は護れるだろうか?いや、守れない。


「ありがとう。みんなにもう1つ言わないといけないことがある」


「おう。俺らはとっくに家族だ。なんでも言え」


 気前のいいケビンさんが笑顔で俺の頭を撫でる。流石に二十歳になってこんなに撫でられるのは気恥ずかしいが、この人たちはすでに俺の十倍くらいは生きてるからまだまだ子供だと思われてるのかもな。


「さっき話した禁呪のことです。この禁呪の中に『英霊化』という禁呪があります」


 俺はリュークに言われたように説明する。

 最後に付け足すように絶対に禁呪通りにならないようにするといった。


 みんな困ったような表情をしたが三人が手を挙げた。

 リオンさんとハイネさん。そしてフリージアだ。


「三人とも……。いいのか?成功するとは限らない。もしかしたらみんな自我をなくすかもしれないのに」


「俺は既に右手をやられた。これじゃ弓も引けないみんなのお荷物だ。それなら一筋の望みにかけてもいいじゃないか」


「私も。あなたの願いなら聞いてあげるって言ったでしょ?」


 二人はにっこりと笑いかけてくれる。若く見えるが二人とも親が子に接するように優しくしてくれる。


 フリージアはずっと俯いている。


「フリージア、やめてもいいんだぞ?」


 ふるふると首を左右に振るフリージア。


「どうして引き受けてくれるんだ?」


「……もし、もしもだよ。私がここで英霊化を拒んだら二度とシロに会えない気がして…もうやだよ……大切な人とお別れするのは……」


 泣きながら俺に抱きつくフリージア。俺はそれを抱きしめ返す。目の前で親を殺されたんだ。大切な人を失うのは誰だって怖い。


「じゃあ三人とも今からやるよ…?」


 三人は頷いて目を閉じる。


『決意は決まったようだな。よし。やれ』


「わかってる……。俺はやれる……」


「第七階梯、転生ノ技『英霊化』!」


 みんなが見守る中、三人は光に包まれる。

 このまま、もともとある英霊化通りにするのはダメだ。

 願え。願うんだ。己のことを大事にし、力を身につけ、自我を持ち、みんなを共に守ることの出来る力だけを!


 光が収まり、中から現れたのは何も変わっていない三人の姿。

 術は失敗したのか!?


『はははっ!やっぱりお前は面白い!こんな形で英霊化を再構築させるとはな!よく見てみろ』


 俺はそう言われて三人の姿を見る。


 無くなったはずの右手に籠手のような義手に腰に携えた二刀の白と黒の双剣。


「剣を握ることが出来なかった種族だというのに剣を携えるとは世も末だな」


 自我を保ちながらスラリと双剣を抜刀するリオンさん。


 見たこともない形をした弓?を持った武器を肩にかけたハイネさん。


「あら、この弓はクロスボウかしら?」


 こちらも自我があるようだ。

 そしてフリージアは……。


「シロ〜!だいすき〜!」


 自我がある…のか?そう思いたくなるほど無邪気に笑いながら抱きついてくるフリージア。

 彼女は白銀の騎士の鎧を身につけロングスカート。そして背中には禍々しい巨大な斧があった。


『双剣はテグルス・デルフィン。無名の剣の英霊たちが何度も何度も殺し合い、鍛えてできた剣そのものが英霊だ。ハイネが持つのはおそらく相川ナツキがいた世界の銃という武器だろうな。ということはハイネはその世界の英霊の何かしらを受けている。フリージアはよくわからんが、英霊という域では収まらん。これはむしろ神域に近い存在だ。代わりに自制心が無くなったのだろうな』


 ぶっ飛んだことをリュークに言われて思考が停止した。

 どうなったんだよ……。


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