奴隷になろう
久しぶりに一人称視点を書いてみたら、今まで一話書くのと同じ時間で三話分くらいかけたことに驚きました……。
小鳥の囀りが聴こえる朝日が出た頃の早朝のことだった。
場所は冒険者ギルド、そしてギルド内ではいつになくギルド職員たちが慌ただしくして居た。
それは早朝に駆け込んで来た冒険者の持って居た手紙が原因だった。
内容は簡単かつシンプルに。
「緊急依頼。アルステイン王国に戦争ふっかけるんで、関係のない人たちを避難させてくれ。そして恐らくこの国に魔族に類する存在がいる可能性大。受けると死ぬかもしれないがそのぶん報酬は弾むから、任せた。 ナツキより」
その手紙をギルドマスターのガストは高笑いをして読んでいた。
「がはははっ!あのS級冒険者はなにをやっとるんだ!馬鹿なのか?あぁ、そう言えばこのギルド出身は頭のいかれた奴らばっかだったな!がはははっ!!」
「ちょっとマスター煩いです」
「ちょ、フィルフィ!?縛るのはやめてくれ!」
「いえ、話が進まないのでそのまま椅子に座っていてください」
そう言いフィルフィは椅子に縛り付けたギルドマスターであるガストを放置し、放送室と書かれた部屋に向かった。
『あー、あー。緊急、緊急。緊急依頼の発生です。我らが同士であり、S級冒険者のナツキ・アイカワ様からの緊急依頼です。ナツキ様のパーティ『極楽鳥花』がアルステイン王国に戦争を仕掛けるようです。理由は口頭では無いので聞くことはかないませんが、参加してくださればギルドからも報奨金を出します。報奨金といっても守銭奴な受付嬢がいるので今夜の飲み代くらいしか払えませんが、どうかよろしくお願いします』
「マスター。もしも彼が言うように魔族に類する何かが絡んでいるとすれば一大事です。これくらいはお許しください。処分は覚悟の上です。煮るなり焼くなり好きにどうぞ」
フィルフィは放送を終えて椅子に縛り付けていたギルドマスターの縄をほどき、頭を深々と下げた。
「…そう言えばお前は昔に旦那を魔族に……」
「その話はやめて下さい!!……すみません。失礼しました」
フィルフィは会釈をしてその場を立ち去った。
ガストは先ほどの自分を殴ってやりたいと思うほど歯を食いしばっていた。
「さてと、先ほどのことは悔いても仕方ないか……もう一通の手紙の頼みでも持って行くか…」
そう呟いたガストは手紙を胸にしまい、奴隷市場へと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーー
俺は自分の部屋で装備を整えていた。
だがその装備というのも奴隷が着るようなボロボロの服に金属の手枷と足枷が鎖で繋がれたものを付け、腰にあるいつもの武器は全て指輪の中だ。
いつでも瞬時に装備できるように設定している。
「よし、ギルドに手紙を送ったことだし、準備も万全」
コンコン。
ノックがなった。そしてそのノックの後、俺の返事を聞く前に扉が開かれる。
「ナツキくん。本当に高須くんと二人だけで行くの?……って、準備万端だね…」
「お、おぉ、すぐに抜けれるような締め具合にしとかないといけないから確認がてらやってみたんだよ」
俺がそう言いながら鍵を掛けていない方の腕を手枷から外して机に置いていた鍵ですぐに手脚の錠を開けた。
その時ボソリと「そのまま監禁したい」だなんて聞こえた気がしたが恐らく空耳だろう。…だよね?…だと思いたい。
二人でリビングまで行くと既に支度を終えたみんなが武具やアイテムの最後の調整をしていた。
その中で一際目立つ大きなリュックを背負っている幼女の姿が目に入る。
「ルナ?その大荷物はなんだ?」
「ママに持ってくの!それで、もしものことがあったらママにも助けてもらえるようにルナが言ってくるの!」
その鞄の中は迷宮都市で買い込んでいた保存の効くタイプの甘味のようだった。
「じゃあママに会いに行ってくるっ!」
そう言うと玄関に向かい龍の姿になり山の方へ飛んで行った。
ちなみに、戦闘機竜はクロに頼んだところ問題なく元の家の姿に戻せたらしい。それに認識阻害付きと来た。
ルナを見送った後、ユウキは元の聖剣の姿に戻り高須の腰にかけ、最初の頃に会った勇者のような出で立ちをしている。
「じゃあ行こうか相川」
「そうだな。……じゃあ二人とも行ってくる」
高須に声をかけられ、手枷をはめ玄関に向かうと心配そうに俺を見つめてくる二人の視線がまるで自分たちも連れて行け。そう心に訴えかけているかのようだった。
「そんな顔するなよ。何かあった時は合図をしっかりと送るからさ。俺がみんなを守りたいから合図を送らないとか考えてそうだから一応言っとくが高須にも合図の煙弾は持たせてあるから。それなら心配ないだろ?」
そのことを話すとすぐに二人は安心したような顔をした。解せぬ。
嫁からの信頼がクラスメイトより低い件について。
「相川、なんかゴメン……」
「謝んないでくれ。なんも言えなくなるから…」
だんまりと二人で王国に向かって歩いていると奴隷を乗せる馬車がやって来た。
その中には奴隷が一人もおらず、馬を操作している男だけだった。その場所が俺たちのそばに来ると停車させた。
「おぉ、本当に神様がおられた……!!」
「エーベルバッハさん、神様はやめてくださいって言ってるよね?」
「そ、それはすみません。ではナツキ様で」
「様付けもちょっとなぁ…」
馬車から降りて来たエーベルバッハと俺が話していると高須が神様ってなんのことだ?とでも言いたそうな目で俺をみて来る。
説明しようと思ったがエーベルバッハさんが高須の方を見て綺麗なお辞儀をした。
「私はクワルツェフ商会の会長であるエーベルバッハ・クワルツェフと申します。以前、縁あって此方のナツキ様と知り合うことができました。勇者様とこうして会えることを嬉しく思います。以後お見知り置きを」
「え、あ、は、はい……」
「高須、この人のことはそんな気にしなくていいから。…それよりエーベルバッハさん、頼んだものって持って来てもらえましたか?」
俺がそう言うとエーベルバッハさんは馬車の中に入り、奴隷の首輪を一つと4枚の木の板のようなものを持って来た。
「えぇ、ナツキ様からの頼まれごとと言うなら何処へでも馳せ参じましょう!」
「いや、もうそう言うのいいから……」
エーベルバッハさんが目をキラキラと輝かせているところ、彼の手から首輪を取り自分の首につけた。
「何やってるんだよ相川っ!?」
「お前が俺を捕まえて奴隷として王城に連れて行くって手筈だったのにこれが無いと信用されないだろ?安心しろ。エーベルバッハさんに頼んで起動しないものを持って来てもらってるから」
心配する高須に安心させるように伝えると思いが伝わったようだ。
俺は地面の土を頭から被り顔中に塗りたくる。
「あぁ、はやく風呂入りてぇ…」
「流石にそこまでする必要は……」
顔中ドロドロになった俺を見て高須が言ってきたが無視して立ち上がる。
「それでは参りますか?」
「はい。じゃあ俺は荷台に並んで……高須はエーベルバッハさんと前に乗ってろ。あと、殺気立った表情は表に出すな。緊張感も出すな。あの国王は気がつかないだろうがもしも後ろ盾に何かいたらマズイからな」
「あぁ。わかってる。じゃあよろしく頼むなナツキ?」
高須が俺の目の前に握りこぶしを差し出して来る。しかも何気に俺の名前を初めて呼んだ。
少し気恥ずかしい感じがしたから何もせずに荷台に乗ろうかと思ったが、もしかしたらこの戦いが終わったら永遠の別れになるかもしれないんだ。
そう思ったら今回くらいは乗ってやろうと思い俺も拳を、鎖で繋がれているため両手を出し、コツンと拳をぶつけた。
「おう。俺に任せとけユウト?」
お互いに名を呼び合い今までには無かったような絆のような感情が芽生えて言った。
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