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どうしてこうなった……?

今回は、本当に、短い、です……。ごめん、なさい……。

 

「ナツキくーん!朝ごはん出来てるよ~」


 エリシアが階段を上りながらナツキの部屋に向かって声をかける。だか、ナツキが起きる気配はなかった。

 二回ノックしてみる物の返事もない。


「?ナツキくん入るよ~」


 いつもは声をかけたらすぐに起きる上にエリシアたちの誰よりも早く起きて庭でトレーニングをしているナツキも一週間も寝ずに家の改造をしていたから完全に起きる気配なくぐっすりと眠り続けていた。

 普段ナツキは一人で眠っている。そのほうが安眠できるかららしい。でも、七日間の内ナツキが一人で眠るのは一日だけだ。日替わりでエリシアとソラとルナの三人と眠っていて、今日はエリシアと寝る日だったがナツキの疲れのたまり具合から一人でゆっくりさせようと工房からナツキを抱えてナツキの部屋のベッドに寝かせていた。

 エリシアのようなロリ巨乳に抱えられる男子高校生の絵面は少し問題だが、獣人は身体能力が高いため、ステータス面での問題はない。


 ナツキの部屋に入るとベッドの上には猫のように丸まって眠っているナツキが居た。


「ふふっ。こんな無防備な寝顔なんて初めて見たかも……」


 思わず笑みが零れてしまうが気にすることなくナツキの頬を人差し指で突く。


「むぅ……」


 口の中にあった空気と共に声が漏れてくる。ナツキも自分と同じようなうなり声をするのかとエリシアは面白くなり何度もナツキの頬を突いていた。

 これほどやっても目を覚まさないのはそれほど疲れているのだろう。


 ナツキの隣に寝そべるエリシアは高須に攫われたときのことをを思い出していた。

 高須に取り付く死神を倒した荒々しいナツキの剣戟。

『俺が神狩りをやる』

 エリシアがその言葉を聞いたとき身体中の毛が逆立つような寒気がした。

 神と言う存在を認めない。

 神と言う存在を滅ぼさんとするあの瞳。

 普段のナツキからはまったくと言っていいほど感じられない死の恐怖をその身から発していた。


 あれは誰だったのか。エリシアにはわかる。ソラが話してくれたナツキの過去。この世界で生まれ、育ち、覇王と呼ばれた男。恐らくその人だろう。


 あの日から釈然とした物だが未来の光景が脳裏に浮かんでくる。

 世界が滅び、翼の生えた人たちと国中の人たちが戦争をしている光景。

 翼人はこの世界にはいない。ハーピーなら存在するが言葉を解する翼人など御伽噺の世界だけだ。

 そしてナツキやエリシアたちもその翼人たちと戦っていた。

 でも急に風景が変わりナツキ達の前に異形の存在が現れた。

 いつもそこから先の未来は見ることは出来ない。所詮、母から受け継いだ未来予知は完成された物ではなく、半分も力を発揮することは出来ない。

 でも、その異形の存在が言葉を発したところまでは何とか見ることが出来るようになった。


『逢イタカッタ…ナツキ、ワタシノ、愛オシイ、人。……ハヤク、私ヲ殺シテ。神々モ…殺シテ。世界ヲ救済……』


 そこから先を思い出そうとすると頭の中がノイズ音で埋り、吐きそうになる。

 まるで蠅の大群が自分の頭の中を巣にしているかのような不愉快さがこみ上げて来る。強制的にそのことを考えさせないかのように。

 ナツキの義弟と言っていたロイという人が行っていた干渉されているとはこの事だったのかもしれない。


「っ!」


 その異形の存在を思い出すと再び頭痛と吐き気に襲われる。エリシアは縋るようにナツキに抱きついて目を閉じる。

 こうすれば嫌なことは忘れられる、つらい事も好きな人ナツキといれば何も怖くはないから……。



 ーーーーーーーーーーーーーー


「ん……あ?俺いつの間にベッドで寝たんだ?」


 目を覚まし起き上がろうと横に手をついた。

 むにゅんと沈むような柔らかな物にナツキの腕が吸い込まれていく。テンプレのように主人公がヒロインの胸を揉む。そんな現場だろう。だがその場合は声を漏らすはずだ。現に今もその柔らかい山を何度か揉むが声を漏らす気配はない。


「あぅ……ナツキくん?」


 エリシアがナツキの名を呼びながら起き上がる。未だナツキの腕はエリシアの胸を揉み続けている。

 恐らく、ここ一週間はエリシア達が眠ったあとも工房で色々やっていたから人肌に飢えていたんだろう。


「お、おはようシア。下に行こうか……」


「待って」


 胸を揉んでいたナツキはまだ触れていたい気持ちもあったが、そっと手を離し扉の方に向かう。だがエリシアに腕を掴まれ振り向いた。振り向いた時に唇と唇が触れ合った。ナツキはぶつかりかけたと思い謝りかけるがそっとエリシアに唇に人差し指を当てられる。


「ふふっ。久しぶりのキスだねっ」


 微笑むエリシアは物凄く綺麗で可愛く見えて思わず抱きしめてしまった。やはり一週間も触れ合っていないだけですごい飢えを感じる。

 エリシアもナツキの考えを読み取ったのか、顔を赤くしながらナツキの背に自分の手を回し抱きしめ返した。


「ナツキくん、私たち……私のことをもっともっと頼ってほしいなっ」


「ごめん、今回のは危険だったから……」


「ナツキくんが私たちのこと大切だと思ってくれてるのはわかってるの。だから私たちがナツキくんに文句を言うのは違うと思う。だけどね、私たちはナツキくんが思ってるほど弱くないんだよ?」


「シア達が弱いなんて思ってない。でも、みんなを危険な目には合わせたくないんだ……これだけはわかってくれ……」


「わかった……。ナツキくんの言いたいことはわかったよ……」


 わかってくれたのかとエリシアをより強く感じるように抱きしめようとするがスルリとナツキの腕の中から抜け出した。


「シア……?」


「ナツキくんは私たちが弱くはないけど、まだナツキくんに護ってもらうだけの存在なんだってことはよくわかったよ」


…ん?何か勘違いをしている気がする……。


エリシアはナツキに魔法袋から取り出したエリシアの愛剣『山茶花』を取り出しナツキに鞘に入った状態で向ける。


「ナツキくん!私と勝負してっ!私が勝てたらナツキくんは困ったことがあったらなんでも私を頼ること!」


「はぃぃぃいぃぃぃッ!?」


この日、ナツキはこの世界に来て久しぶりに絶叫したかもしれない。

それと共にとんでもない化け物を目覚めさせてしまったのにまだ気づくよしもなかったのだった……。


「ホント、どうしてこうなったんだ……」

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