デート回 ルナ編
予告なんてもうしない。守れるかわからないのだから。
……すいませんごめんなさい。ここまで遅れるとは思っていませんでした。
それと、前回の前書きの初めて書いた小説が官能小説と言うのはジョークです。書いたことなんてないですごめんなさい。
とりあえず諸々ごめんなさい。
楽しんで読んでもらえると嬉しいです。
「おにーちゃん!朝だよ〜っ!」
「グエッ!?……あぁ、ルナか。おはよう」
ジャンピングアタックで意識を覚醒させられたナツキは腹の上に乗るルナの頭を撫でベッドから起き上がる。変な声が出てしまったが気にしない。
「今日はルナだったな。どうする?何かやりたいことでもあるか?」
「うん!お兄ちゃんと2人きりは初めてだからいっぱいやりたいことあるよっ!」
「そっか、じゃあ着替えてるからリビングで待っててくれるか?」
「わかった〜!」
元気よく返事をしたルナはナツキの腹から降りて翼を出して階段から飛び降りた。
「あの降り方は面白そうだな……」
寝起きで自分がおかしなことを言っているのに気がつくこともなく、あくびをしながら着替えた。
昨日のデートと同じ服装なのは悪いとは女の子に対して悪いとは思うが、あいにくこの服しかないため仕方ない。
昨日と違う点といえば上着にジャケットを着ているくらいだ。
早くルナと一緒に遊びに行こうと思い、ルナの真似をして階段から飛び降りた先にソラとエリシアがいて怒られたのだった。
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「じゃあどこからいく?」
「えーっとね。お兄ちゃんは何したい?」
「そうだなぁ……俺はルナと一緒なら別にどこでも……って、なんか人だかりできてるな?」
2人で手を繋いで商店街を歩きながら何をしようかと考えていると目の前に人だかりができていた。なんかデジャブを感じる……。
なんとなく気になって見に言ってみるとそこにはユウキと衛兵さんのお世話になりそうになっている高須の姿があった。
「あ!ユウキちゃん達だよ!お兄ちゃん?」
「いや、アレには関わるべきじゃない……」
ルナを止めて今来た道を戻ろうとルナの手を引くがルナは微動だにせず無邪気な笑顔でユウキ達に手を振っていた。
「おーいっ!ユウキちゃーん!それと高須くーんっ!」
ルナの声に気がついた2人は…ユウキは笑顔で、高須は涙目で手を振って返す。
もう仕方ない。周りの人も自分たちのことを見ているからこれは関わらずにやり過ごすことはできない。
「あいかわ〜ッ!良いところに来てくれた!」
「ヒッ!?」
ナツキは小さな悲鳴を漏らし、無意識に高須から距離をとってルナの後ろに隠れた。どうやらこの前の件で高須のことが日本にいた時よりも苦手に感じる。
まぁ、本人にはその記憶がないらしいからナツキが高須のことを避けている理由をみんなから聞こうとするがみんな苦笑いを浮かべるだけで答えてくれないらしい。
まぁ、そんなことはどうでも良いとして。
衛兵さんに聞いたところによると、高須がユウキと話しているところが高須が幼女を誘拐しようとしているように見えたらしい。高須哀れなり。
「衛兵さん、こいつ俺の……友人だから。そこの幼女も。だから見逃してくんない?」
スッとギルドカードをチラつかせると驚きながらも頷き衛兵さんは去って行った。
この迷宮都市では冒険者の地位は結構上位に来る。
迷宮を攻略するための戦略であるからだ。それに加えてSランクにもなればそこらの領主よりも偉く振舞っても文句は言われないらしい。実際どうなのかは全く知らんが。権力なんて振りかざしたらあとあと何があるのかわかったもんじゃないからな。
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「相川が通ってくれて本当に助かったよ」
「別に……俺はルナについて行っただけだ」
「それでもだよ。それに…友人って言ってくれてすごく嬉しかった。俺は相川達にあんな酷いことをしていたのに……」
高須が涙を堪えながらそう言って来る。ナツキ自身、無意識に友人と言ったのはあの場で高須たちを衛兵さんから助けるんならそうしたほうがいいな。そのくらいの考えで言ったつもりだった。少し躊躇ったのはあのホモホモした高須の姿が脳裏にチラついたから躊躇っただけだ。だって常人なら自分のことを狙って来るホモが友人なんてお断りだろ?
「それはお前の勘違いだ。ほら、高須ハーレムの子達が高須のことが好きっ!とか結構大きい声で言うことあったのに『え?なんか言ったか?』何て返してるから多分空耳だったんだろうよ」
「はっ!?い、いつ……?」
高須は頭の中の記憶に思考を巡らせるが何も思い出せない。
……こいつどこの難聴鈍感系主人公だよ。
と、心の中でツッコミを入れる。高須本人には「冗談だ」とフォローを入れておく。
高須の隣では頬を膨らませてナツキを見つめているユウキの姿が見えた。普段ならばからかってやろうと思うが目の前にからかう為のものは高須の話しかない。それはまだ自分自身が高須の話をする気にはならない。死神の件とか色々あったからもあるだろうが、やっぱり自分の確認ミスで大惨事になったことが未だ忘れられないからだろう。
「じゃあな。俺はこれからルナとデートだから。ユウキと高須もデート楽しめよ?」
ナツキは一刻も早くここを去りたかったからルナを抱き抱え、捨て台詞のようにユウキに笑いながら言う。
思い切り飛躍してこの場を後にした。……さっきまでいた場所から物凄い圧力を感じたが、まぁ、気にしなくても構わないだろう。
適当に飛び跳ねて駆け回っているとよくわからない森に入っていたようだ。
「なんか神秘的だな」
「そうだね!……あ、お兄ちゃんっ!あそこの木の後ろにフェアリーがいるよ!」
フェアリー。もともとは森妖精やエルフの守り神とか魔物とか色々言われてきた謎の生命体のような存在だ。でも、数年前にエルフの女王がフェアリーの謎を解明し、世界に公表したらしい。
その正体は霊樹と呼ばれるマナ水晶で出来ている木から生まれて来る魔法現象の一つらしい。
霊樹一つにつき10匹は生み出せると言われている。そしてフェアリーは知性はあまり高くないが、マナ水晶を媒体として高度な魔法を使うことができる。だからあの様な小さな姿でも自分の身をしっかりと守ることができているらしい。
敵対の意思を示さなければ攻撃はしてこない。
だからなのか無邪気にフェアリーを初めて見たナツキとルナのそばに二十は軽く超える数のフェアリーが寄ってきた。
『きゅい!きゅいきゅきゅい?』
何か言いたそうに青い翼のフェアリーがナツキとルナの周りをクルクルと回っている。
何かあったのかと思ったが周りを見回すも特に変化もなく、耳を澄ませるが人の声すら聞こえないからおそらく滅多に人のこない場所なのだろう。
「きゅい?きゅいぃ!」
「だ、どうしたんだルナ。フェアリーの真似して?」
突然、隣にいたルナがフェアリーの真似をしていたのに驚く。だが、お互いにきゅいきゅいと言ってるのがなぜかナツキには意思の疎通ができているように見えた。
「もしかしてルナはフェアリーの言葉がわかるのか?」
「なんとなくならわかるよ〜」
「そりゃすごい。じゃあさっきのフェアリーは俺たちの周りを飛んでなんて言ってたんだ?」
「えっとね、『私たちの森にようこそ。ここは人間は入ることができないのに、どうしてこの男の人は入ってるの?』って言ってた!」
人間が入ることのできない森……ここが秘境などの類なのだろうが?それとも何かの結界でも張っているのだろうか?
そう考えを巡らせているとフェアリーたちがナツキの頬を必死に引っ張った。
「いひゃいいひゃいっ……どうしたんだよ?」
「お兄ちゃん、フェアリーたちは相手の心を読めるから変なことは考えないほうがいいって」
「それはまた……先に言って欲しかったな」
「だって今聞いたんだもん!」
ぷんぷんと怒るルナの姿はやはり可愛らしい……っといかんいかん。
『人の子よ、あなたの考えは正しい。我々を食すと魔法の腕がすぐに上達するということを聞いた人の子やそれに類する者たちは我らの同胞を乱獲して行きました。それから逃れるために我らは結界をこの森に張り巡らせ、存在そのものを隠蔽して来ました。何故あなたは人の身でありながらこの地に足を踏み入れられたのですか?』
ナツキの頭に直接声が響く。恐らくこれもフェアリー特有の力なのだろう。
それよりもナツキ自身も何故ここに来られたのかよくわからない。
適当に飛び跳ねて居たら吸い寄せられるようにここに来ただけだ。
静かで落ち着ける場所にルナと2人でデートして、あわよくば昨日のソラと同じように……なんて考えながら跳んでいただけなのだ。
「悪いが俺はお前たちフェアリーを初めて見るから驚きはしたがとって食おうなんて思ってない。それにもう限界なんじゃないか?」
『……何故…そう思うのですか?』
あくまでもフェアリーは何も知らないことを装っているのか、はたまた、本当に何もないだけなのか。
……正直なところどうでもいい。
「別に。ただ、その結界とやらが薄まってるらから俺みたいな人間が入れてたりしたんじゃないかと思っただけだ。違うなら気にしないでくれ。……付け加えて言わせてもらうがここに来たことは俺もルナも他言はしない。だからもう少しここにいてもいいか?」
ナツキはルナの頭を撫でながらフェアリーに言う。フェアリーの表情は見えないが恐らくキョトンとしていることだろう。
『ははっ、はははっ。貴方のような人の子も居るのですね。えぇ、貴方のような方ならゆっくりして言ってください。そちらの龍のお嬢さんも』
それからはゆっくりと日が暮れるまで神秘的な場所でルナと過ごした。
帰り際にはフェアリーたちからお土産として近くで取れた果実をくれた。それはどれも味の良い物で、みんなにお土産ができたとナツキとルナは喜んでいた。
「お兄ちゃん、今日は楽しかったねっ!」
「なんかデートっぽくなくてごめんな?」
「そんなことないよ!ルナはお兄ちゃんと二人っきりってことがあんまりなかったからとっても楽しかった!次はおねーちゃんやソラちゃんと一緒にフェアリーさん達のところに遊びに行こうねっ」
「そうだな。……もうそろそろ家に着くけど、もう何もしなくていいか?」
ナツキはなにも買うものはないかと聞いたつもりだったが、ルナはうーんと首を傾げ、何か閃いたように笑顔になるとナツキの体に飛びつく。
「忘れ物……だよ?」
そう言ってルナは真っ赤な顔でナツキに口づけをした。




