純潔を守る為の戦い
保存してたと思ったら保存してなかった件。
書き直してたら遅れましたごめんなさい。そして短いです。
前略、事故で死んだお母さんにお父さん。あなたたちの息子の相川那月です。
異世界に巻き込まれて呼び出され、早一年が経とうとしています。
この一年はとても有意義な生活を送ることが出来ました。なのにどうしてこうなったのか僕には解りかねます。
……はい。全て僕の責任です。高須君に幼女好きのロリペド野郎になってもらおうと思ってユウキの好意を利用しました。ごめんなさい。謝るから。もうホントマジで謝るから。
「みんな助けてくれよぉぉぉおおお!!!」
「はははっ。なに、痛いのは最初だけだから」
ナツキが叫び高須がナツキのズボンに手をかけていた。
エリシアたちは笑いながらナツキと高須のことをコントでも見てるかのように笑ってはいたが高須がナツキにキスした瞬間は部屋の湿度が氷点下を超えていた。
まるで半袖で北極に居るかのような気分だった。絶対零度の視線はユウキとルナの幼女コンビから感じられたがソラはショートしていた。
衆道とか言っていた気がするが気にしない。
気にしたら負けな気がしてならないから気にしない。
「シア!た、助けてくれ!」
「うーん……ユウキちゃんの話を聞く限りナツキくんの自業自得なんじゃないかな?」
笑いながらそう言うエリシアに絶望しつつソラを……ソラは使えないからルナを見た。
「お兄ちゃん。さすがに男同士なんて……」
ひいてました。これでもかと言うくらい軽蔑の眼差しを向けられてました。
どうにか自力でこの状況を打破しようと思考を巡らせ、思い立ったことを口にする。
「高須!お前の好きな女たちを助けるのを手伝うからやめろ!」
高須は好きな女に反応して手の力を緩めた。よかった。これでようやく解放される。早く高須を元に戻すための薬を探さないと。
そう思いながらズボンを直していると、高さがつぶやくように言葉を発する。
「……俺は、男が好き……男が好き……男が好き男が好き男が好き男が好き男が好き……」
「ぎゃあぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
狂気を感じた。
目を虚空を捉えてずっと男が好きなんて聞いてたら近くにいた男はもちろんのこと、女性であるエリシアたちもドン引きしていることだろう。
そう思ってエリシアの方を振り返るとグッと親指を突き立てウィンクをしてきた。
「私的には寝取られも許容範囲だよっ!相手が男なら好きにやって良いから!銀狼族は異性と交わったら一生その人に添い遂げないといけないけれど、同性愛なら浮気に入らないから、問題なしでオッケーだよ!」
滅茶滅茶だ。
銀狼族の女性は夫を持つと柔らかな物腰の女性になると聞いたことがある。
なのに、ウチの子はアホの子になってしまったのかもしれない……。
そんなことを考えている暇もなく、嫁からの謎のゴーサインと共に高須がナツキに襲いかかる。
すぐさま指輪に検索を掛け、解毒薬を探す。
しかし、それらしきものは見当たらない。作り方は道具屋に行けば教えてくれるだろう。
だが、惚れ薬の販売、所持は禁止されている。この世界に共通している元の世界で言う法律に位置付けられているもの《禁書目録》と呼ばれる一冊の本が各国の宝物庫に収められていて、その中に惚れ薬のことも書かれている。
ちなみにレプリカがどこの国でもお土産として売られている。
迷宮都市に収められている禁書目録のレプリカを興味本位で立ち読みした時に確か禁止された薬品の中に書かれていた。
だから、もしも店に行って「惚れ薬の解毒薬ってどうやって作るの?」なんて聞いてみれば衛兵さんのお世話になってしまう。
こうなったら奥の手を使うしかないだろう。
「シア!ルナ!ソラ!」
ナツキが声を張り上げて今まで何度か助けを求めることがあったがそれはすぐに解決しないと行けないようなものでは無かったから使わなくて済んだが、今回は別だ。
ナツキ自身の貞操の危機なんだ。悪魔に魂を売る覚悟で続ける。
「高須を止めてくれたやつに一日中言うことを聞く!だからこいつをどうにかしてくれ!!」
「なんでも聞くだって?」
高須は物凄い笑顔でナツキの尻を鷲掴みにする。
「お゛ま゛え゛じゃッねぇ〜!!」
鷲掴みにされた手を踏ん張りながら離れさせようと高須の腕が折れても構わないと思い、全力で離そうとするが離れない。
そして果てにナツキは高須に抱きしめられた。
抱きしめられすぎて首に高須の腕がガッチリと入っている。
……ヤバイ。意識が……。
「ナツキくんの1日独占権は私のだよ!」
「お兄ちゃんは私といるの!!」
「ナツキは我の……私の相棒なんだから労わるべき!」
三人がナツキの元に行きそれぞれエリシアは高須に麻痺薬を飲ませ、ルナが高須の陰を地面に縫い付けて微動だにできなくした。
「アマテラスの名において命ず!……陽の力を解き放て!『聖光』」
ソラはアマテラスとしての力を使い高須の中にある悪性と思われるものを浄化していく。
ナツキ自身もソラのこのアマテラスとしての力は見たことがなかったから驚いた。
体内の悪性物質を取り除かれた高須はエリシアが飲ませた麻痺薬の効果もあって意識を失った。
それをユウキが支えるのを確認したルナは影縫いを解除した。
「あ、ありがとう。助かった」
「ねぇナツキくん。この場合は誰がナツキくんを独り占め出来る権利を貰えるの?」
エリシアを始め、他の二人もキラキラとした目でナツキを見てくる。
「あ〜。三人が助けてくれたからいつも通りってことで……ダメだよな」
一難去ってまた一難。
冗談まじりに言うと三人からそれぞれ武器を突きつけられる。嫁たちが怖い。
「じ、じゃあ!三人に一日中付き合うから!」
ナツキはどうか剣を収めて欲しくて言った。そして三人は顔を見合わせ吹き出した。
「あははっ。ナツキくん、本当にいいの?」
「あぁ、男に二言はないさ」
殺されそうな感じだったからなんて決して言わない。言えないとも。
「じゃあ私が一番でいいお兄ちゃん?」
ルナが言ってくる。それはもう幸せそうに。
「三人で順番を決めといてくれ。明日から3日間みんなに付き合うから」
疲れた……そう呟きながら自室に戻っていくナツキの背を見ながら三人は順番を決めるためにじゃんけん大会を繰り広げていた。
自室に向かってふらふら歩いているとユウキが客室としてリビングの横にある部屋から出てきた。
「……あんたも苦労してんのね」
「あぁ、大丈夫……みんな可愛いから」
あはは。乾いた声で嗤うナツキにちょっと引きながらユウキは言った。
「今回のこともあったから、ユウトとはしっかり長い間をかけて絆を深めていこうと思うの。だから……もう少しあたしとユウトをここに置いてくれる?」
「いいぞ。これは言ってないけど、高須ハーレムを助けに行くから。俺もあの愚王にはちょっとばかし言いたいことがあるからな」
瞳を潤ませ頼み込んでくるユウキにナツキは一つ返事でオッケーを出した。
「じゃ、俺もう寝るわ。エリシアたちがなんか言ってきたら寝たって言っててくれ」
またナツキはふらふらとした足取りで自室に消えて行った。




