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エリシア、高須を鍛える

書き上がったので投稿。

ナツキが幼女を連れて迷宮に潜って行った直後、エリシアとルナと人型に戻っていたソラと高須が街の外れの高須とナツキが決闘した場所に来ていた。


「ナツキくん、強かったでしょ?」


「どうしたんですかエリシアさん…」


前を歩いていたエリシアが突然振り返り聞いてくる。

ぶっきらぼうに目を逸らし小さく高須は答えた。


「そりゃ、死神の力まで使っておいてこのざまですからね。あんなのただの化け物ですよ。よく一緒にいられますね」


「あははっ。確かに。ナツキくんホントに化け物だよね〜!……でもね、あんなに強くても……いや、強いから苦労……いや、なんて言ったらいいのかな?」


わかんないね〜。とエリシアは苦笑いを浮かべていた。


「俺があんなに強かったならあの王を殺して第三王子も殺してみんなを助けられたのに……強くて困ることなんてないでしょ」


「……うん。そうだよね。勇者くん。私が知っているナツキくんはね、英雄みたいに一人でなんでもこなして一人で戦って私たちを守ってくれるの。でも私もルナちゃんもソラちゃんも守られるだけは嫌なの」


その言葉にルナとソラは頷く。


「でも、そんな彼は戦っている時に『死んでもみんなのことを守り抜く』って考えてるような顔をするの。現に私たちはそれで何度も助けられた。迷宮を踏破した時にナツキくんが倒したスライムはナツキくんも苦戦する相手だったらしいの」


その言葉に空が続ける。


「あぁ、ナツキは腕と足をスライムにもがれたのじゃ。そして使ってしまったのじゃ。本来は使ってはいけない、命を贄に捧げる禁じ手。『禁呪』を……。今は膨大な精神力で補っているが、この先ナツキが精神力だけでやっていける保証はない。高須よ、お前も知っておるじゃろ?まぁ、推測じゃがな。日本にも禁呪使いは過去に存在しておる」


高須が日本と聞いた時に驚きソラを見つめる。


「なんでこの世界の人が……相川に聞いたのか?」


「いや、我も日本から来た……ナツキの所持していた武器に宿ってこの世界に入り込んだのじゃ。そして我の本当の名は天照大御神。まぁ、本来の力ほど出せんからお主の手助けなどできんし、ナツキがやると言うまで我は動かん。じゃがエリシアと共にお主を鍛えることならやれる」


高須はそれでも!と、文字通り神に縋る思いで頭を下げる。


「俺は……みなさんに酷いことをして来ました……特にエリシアさんや相川には……でも!俺を鍛えて下さい!……もう…三人を手放したく無いんだッ!大切な人達を守れるくらい強くなりたい……だから!俺を鍛えて下さい!!」


頭を下げた高須の足元には無数の雫の跡が疎らに落ちて行く。

その涙の数だけ後悔の念に駆られていた。

どうして自分はあんなにもわかりやすい嘘に掛かり、大切な彼女たちに救いの手を述べることはできなかった……。

今も高須勇人の事を待っている筈であろう雪歩と朱鳥と絢香が……。


復讐のためではなく大切な人を救う為に。




「勇者くん。大切な人のために戦う気持ちは嘘じゃ無いよね?」


ゆっくりと。優しく高須に問いかけるエリシア。高須はその声に声を返すことはできなかったが頷くことで意思を示した。


「そっか……。なら、私たちは勇者くんのことを鍛え抜いてあげる!私も大切な……ナツキくんやソラちゃんとルナちゃんと一緒に歩んでいくために強くなったから。だから大切な人を思い、活力にすることはものすごい力になるんだよ?……やり方は間違いであったかもしれないけど勇者くんが死神を使ってナツキくんと戦ったのも勇者くんが大好きな人たちのために身を犠牲にして頑張ったんだよね?……だったらキミは強くなれるよ」



「うっ……うぅっ……うわあぁぁぁぁあ!!!!」



エリシアに頭を撫でられ、語りかけられているとまるで母親の胸の中で優しくされた子供のように涙を流し、叫ぶ。


その悲痛な叫びにエリシアは微笑み、聖母のように高須を抱きしめた。



ーーーーーーーーーーーーーー



「もう大丈夫です……すいませんでした……」


高須は盛大に泣いたことを思い出し、恥ずかしそうに視線を逸らし高須に抱きついていたエリシアの腕を外す。


「ふふっ。なら良かった。……あ!勇者くん!」


「は、はい。何ですか?」


エリシアは高須から少し離れながら悪戯が成功したように小さな舌を出し笑顔で言った。


「私に惚れちゃダメだからね〜!私は今もこれからもずーーーっとナツキくんのお嫁さんなんだからっ!」


不意を突かれた高須は頬を赤らめ視線を合わせないように小さく「惚れませんよ……」と返す。


銀狼族の並外れた耳はその言葉を耳にし「そっか、ちょっと残念だなぁ〜」とまたまた悪戯っぽく高須を茶化しているとエリシアの背後から抱きつくルナの姿があった。

そしてルナはエリシアを叱りながらエリシアの頬をつねっていた。


「お姉ちゃん!浮気はメッ!だよ!」


「あははっ、わかってるよぉ〜。ナツキくん一筋だから許して〜」



いつか自分も彼女達と同じように幸せそうに笑って暮らせる日が来るんだろうか?


そう思いながら高須はエリシア達を見つめていた。その時、軽く小突かれることでそちらに視線を向ける。


「お主は…お主やお主に想いを寄せている少女たちがエリシア達と同じようになれるかと期待しているな。別に期待するなとは言わない……じゃがの、それは期待だけではダメなのじゃ」


「わかってます。絶対に強くなって……俺が助け出しますからッ!」


ソラは自分の言葉に強い意思を見せた高須に満足気に頷く。


「うむ。それでこそナツキの認めた男じ……ムグゥッ!?」


「ソラちゃん!!」


「ソラちゃんダメっ!」


じゃれ合っていたルナとエリシアがソラの失言に飛びついて口を塞ぐ。

そして段々とソラの顔から肌の色がサァーっと引いていき青ざめた。


「え?相川が俺を認めた…。相川が?」


「お、おねーちゃん、この人何いってるの〜?」


「さ、さぁ?空耳なんじゃない?ソラちゃんが言っただけに…?」


「なぜ疑問系なのじゃ……?いや、空耳でわないぞ?確かにナツキは我に精神力を渡す時に一緒に流れてきたから、あやつが口で語るよりも正確な筈じゃ。俗に言うつんでれ。と言うものかもしれんな」


「「バカ!ソラちゃんの大バカ!」」


高須は信じられないといった表情を三人に向ける。

三人は右往左往しながらもはぐらかすがはぐらかす事は出来ていない。

ソラがまた盛大に口を滑らせ、エリシアとルナにやられる。


相川が俺を認めていた……。

そう思うだけで高須は憑き物が落ちたかのように笑顔になった。

おそらくこの世界に来て心の底から出来た笑顔だと思う。


高須が笑うのを見てエリシア達も一緒になって笑っていた。



ーーーーーーーーーーーーーー


「じゃあ、鍛錬は私が剣術。ソラちゃんが魔法を教えるから」


「はい!お願いします!」


「勇者くんのステータスは多分前にあった時とスキル自体は変わってないなら光魔法が得意だったよね?」


「はい。正確には聖光魔法ですけど……」


「あと勇者くんは見た技を習得しやすい体質って言ってたよね?前に私が勇者くん達を助けた時に私の技を見様見真似だったけれど再現できてたよね?」


「あぁ、あれは神眼って言うスキルで……対象にした相手から魔法やスキルを習得できる魔眼の力……みたいです」


高須はなんでも喋る。

自分が鍛えてもらうのに必要な情報だから仕方ないがエリシアやソラは思っていた。

この男、絶対に騙されやすい(確信)と思っていた。

エリシアとソラは顔を見合わせ気まずそうに苦笑を浮かべていた。


「あのなぁ、お主は最近会ったばかりの相手に自分のステータスの一部とはいえ、自身のスキルを正確に伝え過ぎじゃ。今は良いかもしれんが……お主がそんなじゃからあの頭の悪そうな王に騙されたんじゃろ?……こう言ってはなんじゃがの、お主に巻き込まれたお主を好いておる女子おなご達が可哀想に思えて来るぞ?」


高須はその言葉にハッとなって口を塞ぐ。


「高須くんっておにーちゃんにちょっと似てるよね〜」


ルナが暇を持て余していたのか龍の姿になって高須の頭上を旋回していた。


「似てる?俺と相川が……?」


高須は考えるが全くわからない。

自分と相川のどこが似ているのか?


「まぁ、そうゆう事じゃな。ルナの言う通りナツキとお主が似ておるから我らもお主のことを鍛えようなど思ったのじゃろうな……ま、どこが似てるのかは言わぬがな」


「ソラちゃんもルナちゃんも!からかっちゃだめだよ!……ほら!勇者くんも剣を構えて!最初は型からやるから!」


「は、はい!!よろしくお願いします!!」


高須とエリシアは剣を構えてた。


こうしてエリシアによる剣術講座が始まったのだった。








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