冒険者ギルドは変態の集まりだった…
冒険者ギルド。
この世界にはギルドと呼ばれる職場がある。
例えば商人であれば商業ギルドに、探し物や調査依頼を扱っているのが探偵ギルド、傭兵が集まる傭兵ギルド他にも木工ギルドや鍛冶ギルドなどのギルドが存在している。
その中で冒険者ギルドは各地に存在するダンジョンを踏破したり一般人では採取不可能な薬草を取ってくる依頼がある。そして冒険者ギルドに入るのは傭兵ギルドから流れてきた者や王国騎士隊に入れなかった連中が殆どらしいが望んで冒険者になる者も多い。かく言うオレも冒険者に憧れを少しとは言え抱いていた。
なのにーーー
「わははっ!飲め飲め!なに?俺の酒が飲めない?」
「ねぇ君、私の鞭味わってみない?」
「いいや!こいつはオレと契約して魔法少女になって貰うんだ!」
「幼女!!幼女!!」
「もっとだ!もっと叩いて、罵ってくれぇ!!」
「はぁはぁ、やっぱり50代後半の熟女は最高だぜ!!」
冒険者ギルドは変態の集まりだった…。
と言うか幼女幼女叫んでいる奴は馬が合いそうだと思ったがおそらくオレの敵、悪質な幼女愛好家だ。Yesロリータ、NOタッチの精神を持ち合わせてない。
ロリに手を出していいのは妄想か合法ロリのみだ。もしくは合意を得た場合のみ。
「あの、俺帰ります。傭兵ギルドに行くので…」
そう告げてギルドから出ようとすると先ほどの魔法少女の服装から一転、普段着姿に着替えたギルドマスターが俺の肩を掴む。
「傭兵ギルドだけはやめろ…あそこは…あそこはーーー」
ーー薔薇が広がっている…。
その言葉を聞いたオレは絶句するとともに内股気味になり尻を抑えてしまう。
それよりもオレの息子の初めてを終えてないのに後ろの処女を散らせるわけにはいかないしな。前が終わってたとしても後ろは嫌だな。
そんなことを考えているとオレの方を見ていた男衆は何かを感じとったのか皆一様に頷いている。
この世界の戦闘向けギルドは変態しかいないのか?
「なぁ、お前もこっち側なんだろ?…認めろよ」
「……わかるんですか…?」
と言うかなぜ分かった…?しかもこのギルドマスター恐らくオレの性壁まで見抜いてやがる…。
その呆れた感じの顔やめてほしい。
「ちなみに、冒険者ギルドに王都で入ると特典が三つほど付く。
一つ目は他種族の国に入ることができるギルドカード。二つ目は依頼クリアの報酬は二倍。三つ目は奴隷市での奴隷購入の半額化。お前の好みの奴隷を半額で買えるぞ?…幼女愛好家さん?」
「奴隷を半額で…だと?」
オレは驚愕に顔を染める。そしてギルドマスターはニヤニヤと笑う。
オレが顎を抑えてブツブツと呟いていると最後の一押しと言わんばかりに口を開く。
「ちなみに、このギルドでは一回目の依頼を誰か一人を連れて行くことができるんだが…この子とイクことも出来るが?」
そう言い探偵ギルドに依頼して書いてもらった似顔絵らしきものが出てくる。
それは美幼女の似顔絵だった。
「行く!行きます!ギルドに入ります!!」
「よっし!それでこそ我らが同胞だ!!お前たち!仲間が増えるぞ!!」
そのギルドマスターの声と共に盛大な歓声が上がった。
…勢いで入ったが大丈夫だったのだろうか…?
▽▽▽▽▽
「それではギルド登録を始めます。この用紙に種族、名前、年齢、スキル、称号などあったら書いて下さい。もしあっても書きたくなかったら書かなくても大丈夫ですよ。書いてあればパートナーを探している方に紹介しやすいので毎回書いてもらってるのですが書かない人が多いので大丈夫ですよ」
オレの目の前に先ほどのSM服を着ていた女性がギルド職員の制服に身を包みお淑やかな笑みを浮かべていてよく性壁を隠せているなと思った。
そして用紙に名前と年齢、スキルと称号を書く。
流石に禁忌なんて言われている幼女魔法や称号の鋼の精神以外は書かなかった。
「はい、確認しました。それではこの水晶に手を添えてください。少しくらくらするので気をつけてくださいね?」
そう言われてファンタジックな水晶を円形の台座に置き、水晶の下に針のような鋭いものがあり、その先にはちょうど車の免許ほどのサイズのプレートが置かれていた。
そして手を添えるとガクンと貧血を起こした時の気怠さが体を襲うがしばらくすると回復した。
その間、受付嬢の人が作業を続けている。水晶から出ている針から一滴の赤い血液のような物がプレートに触れるとプレートが光る。そして文字が刻まれていく。
「…はい。終了しました。どうぞ、これが貴方のギルドカードです。ギルドについての説明は必要ですか?」
「はい、お願いします」
それから受付嬢のギルド講習が始まった。
簡潔にまとめる。
一つ目がギルドでのランクについて。
これはFから始まってE.D.C.B.A.Sと言う振り分けになっている。そしてギルドランクは依頼を受けるのに確認が必要なもので、Fランクが受けることができる依頼はFかE、Eランクが受けることができる依頼はEかD、Dが受けることのできるものはDかC。
この振り分け方は高ランクの者が簡単な依頼を受けまくって他の低ランク冒険者の仕事がなくなってしまい他のギルドに行ってしまったという過去があるかららしい。
ちなみに、武具やアイテム類のレアリティについてもギルドランクと似ていてFからSまであり、その上にSSとSSSがある。Sは宝具、SSは伝説級の物、SSSは神話レベルの物らしい。ちなみにこの世界で発見されているもので最もレアリティの高いものがエフィルド教国にあるSSランクの神聖盾ヒエログリフと言う聖なる盾らしい。
二つ目はパートナーを選ぶことについて。
パートナーとは合意を得て一緒に依頼を受けてくれる相手のことで、依頼が掲示されているクエストボードと言うものの隣にある小さなボードにパートナー用紙がある。その中から選ぶことができるが、報酬は半分に分ける必要がある。
だから一般的には奴隷を購入している冒険者が多い。
冒険者ギルドに入れば奴隷が半額になるから購入する人が多いのだ。報酬も独り占めにできるからな。
三つ目は王都でギルド登録をしたことを公にしないこと。
ギルド職員の場合は構わないが、普通の一般人と一般冒険者には他言しないこととの事だ。
過去にこのギルドで登録した人物が公にしたせいで衛兵が飛んできて捕獲されたらしい。
理不尽だなと思ったが口には出さなかった。
と言うかこのメンツで飛んでこない警備はおかしい。
大きくこの三つを気をつけておけばいいらしい。
「それでは、良い冒険を。アイカワさん」
「あ、俺の名前は相川じゃなくて那月で良いですよ。相川は家名で那月の方が名前なので」
そう言うと受付嬢はまるで天使と錯覚させる笑みを見せてくる。
「はい、ナツキさん。姓名が反対ということは極東出身の方なのですね?」
出たよ、異世界共通の極東出身。本当にあるのなら行ってみたいものだ。
「まぁ、そんなところです」
「あそこの甘味は美味しいらしいですからね…特にオダァンゴ……っと、私はフィルフィ・グラカスです。宜しくお願い致します。用件があればいつでもこちらへどうぞ。…Mへの性壁が現れた場合でも構いません」
オダァンゴ?……団子のことを言いたかったのだろうか?果たしてそれはなんだったのか聞き返せずに終わる。
そう言われてオレは遊び心を込めて魔法袋から荒縄とスタンロッドを取り出してスタンロッドの火花を散らせながら言う。
「すみません。オレはどちらかと言えばSの方が…と言うか俺ドSなんで、亀甲縛りで電撃攻めとか好きなんで…試してみます?」
バチバチと音を立てて電気を放出しているスタンロッドと荒縄を見て受付嬢は恍惚と息を荒げている。
「それも良いですね…私、この期にMへの性壁転換をしてみーーー」
受付嬢、それで良いのか。だがオレはその言葉を遮って言い放つ。
「まぁ、流石に電撃はないとか思ってますけどね」
その言葉で落胆した顔をする受付嬢を背にクエストボードの方に向かう。
「あぁ、放置プレイ…あの方は何としても私のものに…あぁ、濡れてきました…ンンッ!!」
後ろでなんか聞こえる気がするが気のせいだろう。
というか怖いから足早に去ったオレだった。
クエストボードの前まで来たが人が多いことこの上なしだ。
「混雑しすぎだろ…」
「ねぇ」
「あーあ、なんか依頼ここから見えないかな〜」
「ねぇ」
「?声聞こえる気がするんだが気のせいか?」
「後ろよ!」
後ろを振り向くと一人の少女、恐らくオレと同じくらいの歳の銀髪の少女がいた。その少女の頭にそびえ立つ二つの狼にも犬にも見える耳。
「あぁ悪い。小さくて見えなかった……って犬耳?」
「し、失礼な!私は犬耳族じゃないわよ!銀狼族よ!」
ビシ!と人差し指を俺に目掛けて向けてくる。
「んで、銀狼族の少女が何の用だ?」
「あなた、私と一緒に依頼を受けてくれない?」
そう言ってオレに一枚の用紙を渡してくる。
「レッサーウルフの集団の討伐?って、どうして俺に?」
「そ、それは…別に良いじゃない!受けるの?受けないの?」
ぷんすかと怒ったような口調で言ってくる彼女は朱色に染まる頬に空気を貯めて膨らませていた。
「いや、別に受けても良いけど…」
どうして起こっているのか分からなかったオレは受けることを告げると突然花が咲いたかのような笑顔を向けるがその顔を見られたくなかったのか再びツンケンとした表情に戻るとオレの手を引き先ほどの受付嬢、フィルフィの元に向かう。
「ほら!行くわよ!」
何なんだこの女は…?何がしたいのか全くわからん。幼女なら心を読んだように動けるのに…やっぱり幼女じゃない女性の気持ちは海よりも深く謎だ。
「あ、ナツキ様。放置プレイはおしまいですか?ご褒美くださいっ」
「ちょっと無理っすわ」
オレの呼び方がさんから様にグレードアップしていてなぜかよだれを垂らしながら俺のことを見てくる彼女から避けるように銀狼族の少女の手を引いて他の受付嬢を訪れる。
「放置プレイ続行だなんて…はぁはぁ…さいっこう…ンンッ!」
怖い怖い怖い!!
何なのあの人!性格変わりすぎだろ!!
感受性が強いのか?
というより早く離れたい。
「こんにちは。依頼の受注ですか?…あ、先ほどはマスターとフィルフィ先輩がお世話かけました。私はエルと言います。先輩共々宜しくお願い致します」
「先輩…」
オレはその言葉を聞いて隣の受付嬢を見るとーーー
「はぁはぁ、放置プレイ…まだ続けるのでしょうか…?いや、これはもしや捨てられたのでしょうか?寝取られ属性は無いのですが求められては…断れませんわ」
先ほど以上によだれを垂らしていた。あと誤解されないように言っておくがオレにも寝取れ寝取られ属性は無い。好きな人をとられるのも人から取るのも大がつくほど嫌いだ。
「共々…?」
彼女もアレの仲間なのだろうか?それならば少し残念な女の子だ。
そう思いながら視線を彼女、エルに戻すと顔を真っ赤に染めてわたわたと手を振ってくる。
「わわわわたしは先輩たちとは違います!一般人です!!」
訂正、彼女は変態ではなく穢れなき幼女の持つ属性、萌え型だった様だ。
幼女愛好家を名乗るオレを萌えさせるとは…エル、恐ろしい子!!
「…まぁ、そういうことにしときます」
「そういうことじゃなくてそうなんです!!信じてくださいよ!」
こういうタイプの女性の方がS心をくすぐられる。
だが隣にいる銀狼族の少女が何か言いたそうにしていたので会話をやめて依頼書をエルに渡す。
「レッサーウルフの討伐ですね?レッサーウルフの討伐証明部位は二対の牙ですので一体から二本取れるのでそれを持ってきてください。15対討伐で依頼成功ですがまだまだ倒せそうなら倒してもらっても構いません。16体目からは報酬の上乗せとレッサーウルフの皮は綺麗に剥いでもらえるとこちらで引き取りその引き取り金を報酬に上乗せさせていただきますので、余裕があれば宜しくお願い致しますね?」
「はい、わかりました。何か持って行った方が良いものってありますか?」
オレが聞くと彼女は足元から一つの薬品の入った栄養ドリンク程度の大きさの小瓶を取り出す。
「この様なポーションが冒険者ギルドの前にある道具屋で購入することが出来るので買えるだけ買っておいて損はありません。それともしお金に余裕があるのであれば分解薬を購入するのも良いかもしれません。分解薬とは死体に一滴かければ3日間で死体が消滅します。その間その死体は他の魔物に食べられないので、魔物が強くなりすぎるのを防ぐんです。もしも分解薬を買わないのであれば土に埋めるか火で焼きはなってもらえると助かります。死霊になって蘇られたら討伐が面倒ですからね」
「わかりました。じゃあ分解薬とポーションを買っていきます。説明ありがとうございます」
「いえ、それではお気をつけて。冒険神アスラの祝福を」
見送りの言葉を終えた彼女は頭を下げてオレたちを見送るのであった。
▽▽▽▽▽
「よし、それじゃこれ買うか」
「あなた、本当にそれ買うの?」
オレの手にしている物を見て呟く様に言う。
俺の手に持っているのは薬品類。
普通にポーションが10個と分解薬一つ、この分解薬、本当に小さな小瓶だが金貨一枚もする。でも聞いたところによるとどんな大きさのものでも一滴で良いため、一年間は持つらしい。それで金貨1枚なら安いほうだろう。
ポーションは一個で半銀貨1枚と大銅貨5枚、10個セットで銀貨1枚とセットでのほうが安かったのでセットのもの買う。
彼女が言っているのは恐らく今片方の手に持っている薬品のセットだろう。
そのセットは試験管にコルクで蓋をされている禍々しい液体、毒物だ。
その毒物は五本セットで一本目が痺れ薬。二本目が消化薬。三本目が毒薬。四本目が爆裂薬。五本目が解毒剤だ。
これで金貨1枚、割高であまり購入する人はいない。
だが俺がこれを買ったのは四本目に惹かれたからだ。
◇◆◇◆◇◆◇
爆裂薬(D)
…ガラス製の容器に詰められた爆薬。火薬とは違い液体であるため、火がなくとも液体を空気に触れさせ、強い衝撃を与えれば爆発する。効果範囲は半径5メートルほど。
制作必要素材
爆裂ネズミの核
発火石の粉末
水
◇◆◇◆◇◆◇
オレはこれを見たときふと思う。もしかしてこの世界、銃なんかも有るんじゃね?と。
だが店主に聞いてもそんなものは見たことないと言われる。
この爆裂薬は一体どうやって作ったのか気になるところだ。
そうこうして会計を済ませて店の外で一足先に買い物を終えていた銀狼族の少女が男たちに絡まれていた。
「ねぇ、俺たちとお茶しない?奢っちゃうよ?」
「いえ、これから依頼があるので結構です」
「そんなこと言わずにさぁ〜、楽しいことしようよ」
ゲス顏の二人組の男が絡んでいるのを見かけてオレは腰のホルスターから催涙スプレーを取り出す。
「おい、銀狼族。行くぞー」
「え?ちょっ!」
オレが彼女の腕を掴み引っ張っていくと彼女の手を握るほうの腕を男に掴まれる。
思いっきり掴んでいるのか多少痛かったが思ったほどの痛みでもなかった。これなら日本にいた頃に幼女を襲っていた暴漢の方がよほど強かったと思う。
「テメェ、なぁに人が目ぇつけた女の子から取ってんじゃねぇよ」
男は威嚇しているのかものすごい睨んでくるがこれから起こることが気がついてないのだろう。
オレが腰のホルスターに下げていたスプレーのピンを抜く。恐らく狼の獣人の彼女はそのピンを抜いたときの匂いで何か気がついたのか嫌そうな顔をする。
「ちょっと目と鼻と口を押さえておけよ」
その言葉に彼女は頷いて顔を抑える。オレはその掴まれた腕を離さないまま男の目に催涙スプレーを振りまく。
赤色の粉末が空を舞い男の顔に直撃する。
「うぎゃあぁぁぁあ!!!目が、目がぁ!!!は、鼻がぁぁぁあ!!!」
目を押さえながら悶えている男を見てバ○スと叫びたくなるがやめておく。もしやったら笑い悶えてオレの腹筋が崩壊してしまう。
「うっし、害虫駆除かんりょーっと。んじゃ行くか」
「え、えぇ、それよりあの人大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫…と思う」
「あやふやなのね」
「まあ良いじゃないか。おーい、顔は早く洗ったほうが良いからなー」
オレは一言残して銀狼族の彼女と王都の外に出るのであった。