第二階梯禁呪発動
今回は本当に短いです。
単純に短いです。
ごめんなさい。もう少し長くしようと思ったのですが、ここで区切った方が書きやすいと思ったのでこうさせて貰いました。
なので次に期待していてもらえるととても嬉しいです!
「ええぇぇぇ!?!?」
薄暗いダンジョン内にエリシアの絶叫が響き渡る。
その側にいたルナは両耳を塞ぎ、ソラは顔を顰めていた。
「煩い煩い。そんなに気になるならばいけば良いじゃろうが……」
エリシアが絶叫したのはソラのここに来るまでにナツキに遭遇した経由を話したことによるものだ。
どうにもソラが自分たちを助ける前にナツキのことを助けておいて欲しかったみたいだ。
それに対してソラは「自分の好いたものを信じるのが良き嫁の務めではないのか?」と言って宥めていた。
そろそろルナとエリシアがいつも通り……とまでは言えないが、少し冷静になったところで二人をナツキがいたところまで案内した。
▽▽▽▽▽
暗い…暗い…てか…めっちゃ痛いんだけど!?
俺が目を覚ました時にはすでに迷宮の崩落が起きてそれに巻き込まれていた。
そして視線を足元にやると真っ赤なトマトジュースもとい、出血した俺の血液が小さな水溜りを作っていた。
グロい……。モンスターとかの血なら見慣れているけど自分の血がたくさんって…なんかこう…嫌な感じがする。
と言うか前に自分の腕を切り落とした時は死ぬんじゃ無いかって思ったけど、今はそれほど痛いとは思わない。
腕を切り落とした時は人外になる前で、痛みを例えるなら2トントラックくらいのが全速力で衝突してきたような感じで、今の人外になった状態では多分見えないけど足が片方か両方無くなっているかわからないが両足に感覚が無いのに対して痛みは軽自動車に跳ねられたくらいの痛みほどだ。
うん。ありがとう人外。俺を人外にしてくれたソラには感謝しないとな……いや、感謝はできそうに無いな……。
それはあの可愛らしくもおぞましい足音?が聞こえてきた。
ふにょんふにょん。ふにょんふにょん。ふにょんふにょん。ふにょんふにょん。ふにょんふにょん。ふにょんふにょん…………。
「うへぇ……スラ太郎の集団かよ…」
ぱっと見でも数十は居る。
そしてなぜかスライムたちは俺には目もくれずに仲間の炸裂したスライムの周辺で死にかけや死んでいるスライムを捕食し始めた。
え?どうなってんの?
その捕食しているスライムたちはドンドン体を膨らませ、捕食したスライムの色を取り込んでいた。
赤色が青色を捕食して紫色のスライムになっていた。
そんな時だった。
俺の方に向かって走ってくる和服の黒髪の美少女、少し俺に似ていると言うよりも–––––にそっくりだった。
その姿を見つめていると何よりも大切だった彼女を思い出してしまい、不意に涙が出そうになった。
「睦月……」
俺の小さなか細い呟きは走ってくる少女に届くことはなかったが少女から声が飛んでくる。
「主人様!?」
いつもは口煩いから魔法袋に閉じ込めている相棒の存在だった。
「おぉ?なんか美人さんが呼んでた気がするけど……あぁ、駄剣……もといソラか」
俺は少し溢れそうになった涙を気づかれまいと冗談を言って今できそうな笑顔で対応する。
わお、俺マジ神対応……はぁ。そりゃ睦月がこんなところにいるわけ無いよな……。
「駄剣じゃないもん!わたしは頑張ってるもん!こんなチートどこの馬鹿がつけたのよ!」
いや、俺だけどさ…そんな涙目で言われてもなんか興奮するからよせよ……あれ?俺を人外に作り変えたのってソラのせいじゃなかったっけ?まぁいいや。
「あははっ。そりゃ悪いな。あと口調戻ってるぞ」
その方が断然可愛いんだけどな。まぁいつものよくわからん口調の方がからかいやすくていいから別にいいんだけどな。
俺の指摘で自分の口調が戻っていることに気がついたソラは頬を染めて恥ずかしそうに咳払いをして誤魔化した。
「コホン……主人殿は何故そんなところで遊んでおるのじゃ?」
こ、こいつは…遊んでるように見えるのかよ…周りに血だまりあるので気がつけよ。
「これが遊んでるように見えるか?」
俺が言うと彼女はふむ。と顎をさすりながら口を開く。
「そうじゃな。我の事を駄剣と二度と言わないなら手を貸そう」
え、なにその上から目線……。
と言われてもソラは駄剣と呼び慣れてしまったからな。
「…………」
「のう、主人殿よ。主人殿は一人でこの状況を突破できるのかの?」
考え込んでいると不満げな声を上げているソラが近くまで寄ってきていた。
その目の端には少しの涙を抱えて………。
なんとも言えない嗜虐心を煽られてあえて何も言わずに黙っておく。
「…………」
沈黙がしばらく続くとブワッと涙を流しながらソラは叫んだ。
「もう!駄犬なんかじゃ無いもん!わたしとっても強いんだから!あるじどのの役に立てるもん!」
剣の状態のソラからは思いもよらない可愛い泣き顔の可愛らしさに不意に笑みが漏れる。
「あははははっ!!ごめんごめん。からかいすぎた。俺は大丈夫だからあの二人を助けに行ってあげてくれ。お前は駄剣なんかじゃない。お前は俺の作り上げた最高の相棒なんだからさ」
自分の血肉を分け作り上げた最高の一振りでもう二度と会えない彼女によく似た姿の最高の相棒に声をかける。
「承った。彼女らを救ってみせる。だから主人殿もどうか……」
彼女は何か伝えようとしたが涙を拭ってエリシアとルナのいる方角へと走り去って行った。
それと同じくしてスライムたちは屍を喰らい終え、新しい捕食対象である俺に向かってモスキート音に近い咆哮を上げてくる。
耳をつんざくような音に頭を抱えつつ、魔法袋から影剣ランドルフを地面に突き刺し影の中に身を潜めてあの黒スライムに対抗するための策を練り始めることにした。
「待ってろよ……みんな」
一人呟き–––––––––
「第二階梯禁呪……発動……」
その呟きで体の中の精神力が過敏に反応しているのがわかる。
その精神力は心臓部で作られ、下へ下へと降りていき、失った両脚に精神力の青白い光が灯っていった。




