おはようの挨拶。そして勇者たちの今を知る
お久しぶりです。少し時間が空いたので書くことができました。というかヤバイです。学校も始まり体育祭の準備で忙しい日々です。
というか最近は台風がヤバイですね。
最近は本当にヤバイです。
鬱の人を世話してたら自分まで思考が大変です……。
すみません。どうでも良い話はここまでとして。どうぞ楽しんで読んでもらえたら嬉しいです!
「にーたんおぁょ〜!」
この呂律の回ってない生まれて初めて声を発したような声に俺は目を覚ました。
目の前には黒曜石のような艶を見せるようなロングヘアーの黒髪。そして宝石のような朱と碧のオッドアイの子供が俺に嬉しそうに抱きついてくる。
そしてその身体は一糸纏わぬ…生まれたまま姿があった。
昔の俺ならば多分Yesロリータ!NOタッチ!を言っていた俺でももしかしたら襲っていたかもしれない(性的に)。あの頃は正直に言えば幼女愛好家ではなく、ペドフェリアの方側だったからな。
…まてまて!現実逃避思考を止めてこの子供のことを考えないと!シアが見たらヤバ…!?
「お、おおおはようシア。…違うくて、これは何もやってなくって!」
「おはようナツキくん。ルナちゃんがどうかしたの?あ、ルナちゃん。ホットケーキ焼いたから一緒に食べよーか!ナツキくんのも焼いたから来てね」
えへへっ。と可愛らしい笑みを浮かべてルナと呼ばれた8歳くらいの少女を抱き上げるワイシャツにエプロンの部屋着姿のエリシア。
そして一人取り残された俺。
…マジでどうなってんだこれ?
「ホント、どうなってんのやら」
取り敢えず悩んでも仕方ないからベッドから起き上がりダイニングに向かうことにした。
ダイニングと言うよりもダイニングキッチンの方があっている場所に来るとエリシアがホットケーキを焼き、ルナと呼ばれた少女…もうルナでいいか。ルナが口いっぱいに頬張る姿がなんとも……。
「ありがたやーありがたやー」
「ふふっナツキくん両手合わせて何やってるのっ早く冷めちゃうから食べてよ」
エリシアは俺の拝む姿を見てあまり見たことの無い仕草だったのか笑みを漏らし早く食べるように催促してくる。
ルナもまるで自分の親を真似て学習するカモの様にエリシアの真似をする。
ぷんすっ!と擬音が浮かび上がってきそうなほっぺの膨らませたのに指で突くと空気が抜けてふにゃんとなった。
「可愛い。いや、天使すぎる!!エリシア!この子を二人の娘にしよう!」
「にーたんとねぇーたんは、ぱぱとまま?」
「こ、こら!ナツキくん!ルナちゃんのお父さんとお母さんは影龍と雹炎龍でしょ」
ルナはホットケーキを未だに食べながらも嬉しそうににぱっと笑うルナ。
一方エリシアは二人の娘と言うところに反応して顔を赤らめながら叱ってくるが嫌そうでは無いエリシア。
俺は二人の仕草に微笑み、内心は萌え苦しみもがいている。
「じゃあルナのお母さんに聞こうか」
そう言いながら簡易的な召喚陣、十センチ×十センチの紙に精神力を込めて雹炎龍フィスカルの精神体のみを呼び出した。
『どうしたんですかナツキど……』
「娘さんを俺にください!!」
フィスカルの言葉を遮り俺が言うと後頭部に凄まじい痛みが走りそこにはエリシアが笑顔でハリセンを片手に持っていた。
「ナツキくん。ちゃんと説明して」
「はい……」
異世界でハリセンってどうなんだよ。
俺の魔法袋の中も色々と問題だが。
ーーフィスカルの精神体召喚から1分が経過ーー
事情を説明すると『そうですか…』と何やら訳ありの香りがしてくる。
『別に良いですよ。寧ろ拙者からお願いしたかったほどです。娘をよろしくお願いします』
と思ったがそうでも無かったみたいだ。
龍、それも高位の龍となると龍人化をできる様になるらしい。
そしてその龍は世間を知るために人族、もしくは獣人族などの養子のようなもので期間はわからないがそうやって成長しないといけないらしい。
ルナがこうなることはわかっていたフィスカルは自分の命が尽きるとか関係なしに、もともとこのお願いをしたかったらしいがどこをどう間違えたのか隷属強化をかけてくれるよう俺に頼み込んで隷属強化をフィスカルとルナに施したあと、フィスカルは自分の最初の目的を思い出したらしい。
しかもその思い出したのは俺がこの前、タクシー代わりに使った時だったらしい。
ドラゴンは知識共有と言う、親から子へそしてまた親から子へ受け継がれていく知識の泉。それがあるおかげでドラゴンは基本的に頭が良いから自分が何をすれば良いのか、何をするのが得策なのか、千の戦術、万の武術も知識として受け継がれている。と言うものだ。
ちなみに龍人とはドラゴンが擬人化する個体を言って、竜族は龍人の少し下のランクのようなもので竜族で集落を作っている。竜族とリザードマンは別物だから間違えられると激怒するらしい。
『しかし拙者の娘が龍人化するとこうも可愛くなるとは思いもよらなかったですね。いえ、ルナが可愛く無いわけじゃ無いのです。寧ろ可愛すぎるから死ぬ時が近くてもルナから離れることができなかったんですけどね。それで……』
「ちょっと待てフィスカル。ルナが可愛い。いや、天使なのは当然だけど、その話をフィスカルがやったら長くなりそうだからカットで。じゃあ結果的に言えば俺とシアの二人でルナを育てれば良いんだよな?」
俺が机の上に置かれた紙からホログラムのように現れている手乗りドラゴンに言う。
フィスカルも合意しているのか頷く。
そして俺がフィスカルの精神体を戻そうとすると、あっ!と何かを思い出したのか口を開けるフィスカル。
「どうしたんだフィスカル?」
『いえ、ルナの可愛さのあまり忘れていたのですがナツキ殿と共に召喚された勇者のことを影ながら守ることを頼まれていましたが報告しておきます』
それを聞いた俺はスッと眼を細める。
例え他人と言えどこの世界ではたった3人の同郷の人間なんだ。それに彼女に手を出したのならば俺はフィスカルに王都を滅ぼすように命じるだろう。
俺があの国にいたままだったらすぐに国王を殺してしまえるほど殺意に駆られていた。
『ナツキ殿。報告なのですが……すみませんが王城には特殊な結界が施されているせいか拙者の【遠近透写】のスキルでも確認することは出来ませんでした』
遠近透写はフィスカルの持つ千のスキルの一つで遠かろうが近かろうが見通し、その見通したものの話し声や心の声が聞き取れるという凄いスキルだ。
そのスキルは破られることが無かったらしいからそれほど強い結界を張れる魔術師がいると考えて良いだろう。
『ですが、幾つかわかったことがあります。それはナツキ殿にとってはあまりにも残酷すぎる内容になりますがお聞きになられますか?』
「あぁ、残酷だろうが報告は聞いておくに越したことは無いからな」
『では……』と言葉を紡いだフィスカル。
その言葉の後はあまり思い出せない……いや、思い出したく無い。
この方がしっくり来る。
フィスカルから伝えられた言葉。それは本当に残酷なものだった。
勇者たちは隷従の腕輪という絶対服従の効果を持つ魔道具をつけられているそうだ。
それの影響で四人のうち二人が服従を拒否したことで精神を破壊されてズタズタになった精神はもう使い物にならないらしく誰かはわからないが二人が国王のそばに置いてアンティークのように飾られているらしい。
そして残りの女は第三王子と言う俺の全く知らない男の奴隷として引き取られたが高須が食い止めているからまだ性奴隷としては使われていないらしい。
そして高須は国王の命令で俺を殺せたら3人を開放するらしい。
現在、俺たちを追いこの迷宮都市に向かっていると言う。現在地点はまだこの国からはるか遠く、アルステイン王国から10キロほどの小さな集落にいるらしい。
それに高須は俺を殺せたら本当にあの国王の言った通りに高須ハーレムを解放していると思っているみたいだ。
『では、男の勇者を殺すということでよろしいですね?』
「あぁ……ん?まてまて!?なんだよ殺すって!別に放置してて構わないから」
殺すって、まぁ、俺も人を殺す覚悟を一応決めておくべきだよな。今はまだやりたく無いが俺も大切なエリシアやルナの笑顔が奪われたのならその奪ったやつを殺した上で二人を救うはずだからな。
『放置…ですか?本当にそれでよろしいのですか?』
「あぁ、あいつとは腹を割って話す必要があるっぽいからな」
「ナツキくん!」
一人覚悟を決めるかのように呟く俺を見てエリシアも決意を決めたような、キリッとした顔で俺の方を見つめてくる。
「私はナツキくんみたいに強く無い……でも、ナツキくんの支えにならなれるよ。ううん、もうナツキくんを支えるための妻でパーティーで相棒なんだからっ!」
そういうエリシアは––––––––––
「ははっ。どうしてお前が泣いてるんだよシア…」
俺もエリシアも何故かよくわからないが涙が出てきた。
多分エリシアは俺が人を殺す決意をしたことに自分を責めているのか涙を流す。
俺は……なぜかわからない。と言うか泣いたのも久々な気がする。
俺とエリシアの顔が自然と近くなる。
エリシアの桜色になった唇に深紅のように赤みをさすエリシアの頬。そしてエリシアから香ってくるいつも嗅いでいる優しくて落ち着く匂い。
それ全てがまるで薬物のような鋭さと幸福感を訪れさせてくる。
多分、恋人がいる人はこの行為を愛を確かめるためにやっているのだろう。
「エリシア……」
「ナツキくん……」
そこでムードを壊すかのごとく声をかけられる。
『あのここらで拙者はお暇させてもらいます。あの、できればでよろしいのですがそういう行為はルナの、娘の前では控えてくれると嬉しいです』
『それでは!』と言って魔法陣を灰に変えながら消えるフィスカル。
俺はある場所からの視線に気がついてそこを向く。
そこにはホットケーキを食べ終えて唇にハチミツが残りテカテカと光って目も同じようにキラキラさせているルナの姿だった。
「にーたんとねーたん、ちゅーするの?それともきせいじじちゅ?」
ルナの無駄に高い知識もルナの生まれたてのような話し言葉に癒される俺たちだが既成事実という言葉に青ざめる。
……この知識は誰のだ?フィスカルのならちょっとフィスカルにお礼参りをしたくなるな。
「えっと!ナツキくんとはチューしかしないよ!?えっちなことなんて何もしないから!」
エリシアは紅潮する顔を隠しながら言う。
……シアさんや、それはそれで俺も悲しんじゃうよ。漢はエロい生き物だから、そんな宣言されたらちょっと悲しいかな。
「え!ねーたんとにーたんがちゅーするならるなもするー!」
そう言ってルナは俺のほっぺにキスして次にエリシアのほっぺにもした。
……幼女にキスされるとか何だこれ……。
まさしく天国もしくは楽園じゃないかっ!
俺は神様が目の前に現れたような神聖な幸福感と浮遊感に包まれる。
『いや、君は僕と言う神様にあってるじゃないか』
何だよ禁呪王、今いいところだから邪魔すんなよ……っ!?
「何でここにいるんだ!?」
俺が幸福すぎて呪いに来たのか!?と思い込みエリシアとルナを後ろに隠すように立つ。
「エリシア!ルナを隠して……シア?」
『あぁ、それは気にしなくていいよ。今ここは現実と僕の創り出した仮想空間の狭間だから君の意識を千倍に加速させて……』
「待て待て、それはアウトだ。色々アウトすぎるからもうその説明はいいから」
『そうか、君は加速したくないのか少年?』
「だからアウトだって言ってんだろ!?」
あまりにも決め台詞をキリッとした顔で言う禁呪王に少しばかりイラつき叫ぶ。
その姿は俺が前回会った時からすれば肉体が少し成長している気がする。
『だってこの肉体は君の想像したものだから成長くらいするさ』
やれやれ、そのくらいわかってほしいよ。とため息をつきながら笑う。
てか、さらりと人の心を読むんじゃねぇよ。
「んで?何しに現れたんだ?」
『そうだね。君はさっきルナってそこの幼女もどきにキスされて浮遊感が訪れた筈だ』
ああ、確かに幸せすぎて萌え死ぬかと思ったな。
「それがどうしたんだ?」
『簡単に説明するなら君の経験値が溜まったからレベルアップしたってことかな?』
経験値?そんなもんがあったのか。
『ステータスのレベルアップについては経験値は関係なく、努力や才能で変わるものだから経験値は関係無いんだ。君の経験値はうーん。名付けるなら【幼女経験値】ってところかな?』
何だその喜ばしい経験……ごほん。変態みたいなものは?
『今更じゃ無いか、君が変態なのは今に始まったことじゃ無いと思うけど僕が間違ってるのかい?』
「いや、変態なのは認めるけどさ、そんな幼女の姿でジト目とかマジやめてくれる?何か目醒めそうだから」
『うん。その発想はなかなか出ないからやはり君は変態だ。その後ろの子たちも変態に捕まっちゃったわけだ』
「それは言い過ぎなんじゃねぇの!?……はぁ、さっさと用件を言ってくれ。疲れたよ」
『そんな慌てなくても良いのにさ……取り敢えず君の幼女経験値のお陰でレベルアップしたことで、那月くんは第三階梯禁呪を使えるようになりました〜』
ぱちぱちと拍手をしながら言ってくる禁呪王。
「まてまて、いつ俺は第二階梯を覚えたんだよ。俺が使えたのは第一階梯の身体強化だけだろ?」
『いや、バカじゃ無いの?第一階梯禁呪がそんなショボいのなんて僕が認めないよ?実際のところ禁呪は魔法のオリジナル。魔法は禁呪の劣化複製の誰にでも扱えるようにされたもの。それが身体強化な訳無いでしょ?』
は?じゃあ第一階梯は何だったんだよ?
『うん。第一階梯はね精神召喚。精神体のみを呼び出すものでまぁ、禁呪で言えば最低ランク。それで第二階梯は肉体精製。これは体のどこだろうと欠損した部分を複製、いや、強化版を植え付けることすらできるよ。この第一階梯と第二階梯だけでも世界の半分は滅ぼせるんじゃ無い?あいるびーばっく?だったか言いながら死ぬ機械人間とかも作れちゃうから、自重して使ってね?』
……何も言えねぇ。てかこの禁呪王は地球の映画やアニメのこと絶対にわかって言ってるよな……。
「んで?第三階梯ってのは何なんだ?」
『それは誰しもが欲しがる生命を操る力。【生か死か】という禁呪。まぁ、簡単に説明すれば死神と同じように生者を殺し死者を蘇らせることも出来るよ。それに殺すことのためらいも無くなる。やったね那月くん。ちょうど覚悟してたんだ。良いのが手に入ったみたいでよかったよ。じゃあ僕はこれから映画を見ないといけないから!』
ばーい!というかけ声と共に周りの風景に色彩が彩られていく。
「ナツキくん!?あれ?さっきまでそこに居たよね?どうして私の目の前に立ってるの!?」
この後色々誤魔化すのに苦労した……。
ついでにルナはいつでも変化可能らしく小龍に戻りクッションの上で眠りについた。




