待ち人
今回短いです。
それとこの小説は一応言っておきますがハーレムものです。
王都が見えてきた頃に突然ソラがオレに話しかけてくる。
『主殿、今更じゃがその子龍…ルナを載せとくのは良いのじゃが、なんと説明するのじゃ?』
「ん?適当にごまかせば良くないか?」
『お兄ちゃんわたしのことだいじょうぶ?』
キュルキュルと喉を鳴らしながら心配げに言ってくるルナを撫でながら安心させる様に言った。
「だいじょうぶだよ。お兄ちゃんが絶対にルナのこと認めさせるから。それにもしルナをどうにかしようとする奴らがいたら俺が殺してでもルナを守るからな〜」
頭から腕の中に来たルナ喉を頭から首筋にかけて生えている鱗を撫でながら言うオレの顔はおそらくあまり人に見せられない顔になっているだろう。
『主殿よ。ルナを愛でるのは良いがそれは洒落になっとらん気がするのじゃが?我がおかしいのかのう?それと主殿、もうすぐ王都の門に着くのじゃからそのデレっとした顔をやめんかの?』
「うるせっ。もうルナは俺の癒しなんだよ!この駄剣!」
『駄剣とは聞き捨てならんな!我の何処が駄剣なのじゃ!?』
「よしよし、ルナ。頭の上に戻っててくれよ」
『話を聞けぇい!』
「聞いてるよ。シャキッとしろってことだろ?ちゃんとするってば」
『そうじゃ、わかれば良いのじゃ』
ソラが言ってくるのを軽く流してルナを頭の上に戻す。
『お兄ちゃんもうなでないの〜?なでてなでて〜!』
「おう。いつでも撫でてやるよ!」
オレは破顔させてルナを頭の上から再び腕の中に戻す。
『主様!?先ほどの宣言はどうなさったのですじゃ!?』
オレは無言でルナを撫でながら片手で魔法袋の紐を解き袋の口を開く。
『あ、あるじどの?その…我も言い過ぎたのじゃ。だからそれだけは勘弁を!』
腰にある鞘ごとベルトから外して魔法袋の中にゆっくりとじわじわと入れていく。
『いや、嫌なのじゃ!真っ暗闇の魔法袋の中は嫌なのじっ』
オレはソラを入れてすぐに魔法袋の口を閉じる。
この間口が開いたままだった時に袋の中から『出してくれ〜出してくれ〜!』とホラー並みに怖い鳴き袋みたいになってたから今回はそんなヘマをしないためにもしっかりと紐を閉じた。
『あれぇ?ソラちゃんは〜?』
ソラを魔法袋の中に押し入れて静かになったのが気になったのか心配そうな目でオレを見上げてくるルナ。
「ん、そうだな〜寝たんじゃないか?」
それに軽く返すオレ。
『そっか〜!おねんねのじかんだったんだ!もうまっくらだもんね!』
うん。やっぱりこの子は癒しだな。笑顔が癒される。
オレは本当に疲れが落ちる様な気がしながら王都の門に向かった。
ーーーーーーーーーー
オレが門の前に戻るとなぜか騒ぎが起きていた。一応ルナには麻袋に入ってもらって背負っている。と言うか着く前に眠くなったから寝た。
「なぁ、これなんの騒ぎだ?」
オレが門番に聞くと汗を拭きながら答えてくれた。
「ああ、数時間前に現れた雹炎龍が忽然と姿を消したんだ。そのあと尋常じゃない風が吹き荒れて門の一部に大穴が開いたんだがありゃ我らが神、イスェル様が天から我らをお救いなさってくれたんだきっと」
との事だった。
わかります。その風圧はオレの身体強化で雹炎龍掴んでジャンプしたせいですよね。雹炎龍が消えたのもそのせいですよね。
「へぇ〜。それで門前で宴を開いている…と?」
「そうなんだよ!お前さんも飲むか?」
そう言いながらグイグイと酒樽を押し付けてくる。
オレはどんな酒豪に見えたんだよ。
せめてお前が持ってる小さなグラスの方をよこせよ。
とはツッコめる訳もなく。
「いえ、ギルドで待たせてる人がいるんで。あとから参加した時に飲ませてもらいます。どうぞ楽しんでてください」
と、社交辞令ついでに嘘を織り交ぜる。
そんなこんなで酔っ払いの魔の手から抜け出して冒険者ギルドを目指した。
道行くたびに見知った人たちに絡まれたりして抜け出すのに時間がかかる。
ようやくギルドについたが普通に門からギルドまでの道のりは10分も無いのにまさかの30分くらいかかってしまう。
「あそこに呑んだくれサブマスがいるなんてな」
呆れながらもギルドの扉を開ける。
するとギルド内には人が少なかった。まぁ、外で宴を開いてたから少ないのはわかるがそこにいた人たち、フィルフィさんにエルさんとクルスさんのギルド職員の3人とエーベルバッハさんとイェンの奴隷商人2人、それと多分いま一番仲のいい友達のエーリッヒに珍しく真面目な服装のギルマスのガストがお通夜状態の空気の中にいた。
そして一番目を引くのはずっと涙を流し嗚咽を漏らしているエリシアに視線が行く。
ギィィッ
オレが開けた扉を閉めていると何度も開け閉めを繰り返されている扉は軋む音を立てながら閉まる。
その音でお通夜状態のみんながオレがいる扉の方に視線を移した。
「え?ナツキさん?」とフィルフィさん。
「ナツキさんが生きてる…」とエルさん。
「やっぱり生きてましたね」とクルスさん。
「おぉ!神は生きておられた!」とエーベルバッハさん。
「良かったですね師匠!!」とイェン。
「僕は信じてましたよ…っ」とエーリッヒ。
「がははっ!めでたい!生きていたかロリコン!」とギルマス。
皆一様に涙ながらそして笑顔で言ってくる。
「おいおい。フィルフィさんにエルさんにクルスさん、勝手に俺が死んだことにしないでくださいよ。それとエーベルバッハさん、俺は神様じゃ無いです人です。イェンはなんかよくわからんがお疲れ。エーリッヒもありがとな。それよりもギルマス!お前に変態扱いは死んでもされたくねぇよ!」
オレが礼や皮肉を言うと皆が笑いあう。そんな中で未だ笑えてないのが1人いた。
「ナツキ…ぐん…グズッ…なんでっ」
涙声に鼻詰まりが重ね合わせられて何を言おうとしているのかよくわからないが何を伝えたいかはよくわかる。
オレは彼女と目の高さを合わせるために少し腰を落として目と目で見つめ合う。
「ただいまシア。心配かけてごめん。それにこんなに泣き腫らして…こんなに可愛い顔が台無しになっちゃったな。それとゴメンな。もうシアを泣かせないって誓ったのに……ムグッ!?」
オレが続きを言おうとした時にその言葉は遮られる。エリシアの唇によって遮られた。
エリシアのしてきたキスは自分のことをオレに植え付けるように、まるで自分の中にオレの匂いを擦り付けようとしているような深い深いキスだった。
それが終わるとエリシアは艶やかないままで見たことの無い表情でオレの両頬に手を添えていた。
「ナツキくん。もう私を1人にしないで…!ナツキくんは強いから1人でなんでもできるだろうけど私はこんなにも弱いからずっとナツキくんのそばに居させて……!」
エリシアは艶やかな顔なのに刹那げで脆く、今にでも壊れてしまいそうな心が感じられた。
それはそうだ。親に売られて心の拠り所になりかけたオレが死んだと思っていたからだ。
オレが言う言葉はもう決まっている。
ずっと前から言おうとしていた。
いつまでも先延ばしにしていてはダメなこと。
それは……。
「エリシア。聞いてくれ。オレはお前が好きだ。…け、結婚して欲しい……!」
そう伝え、この世界での婚約指輪に近い役割を果たす腕輪を魔法袋から取り出してエリシアに差し出す。この腕輪は簡素な作りではあるが所々に魔石を練り込んであり魔道具に近い役割を果たすものでエリシアがオレの奴隷になる前に作っていたものだ。
それを見たエリシアは口元を押さえ、その綺麗な澄み渡るような碧眼から涙を流し嗚咽も漏らしている。
「え!?俺何か間違えたか!?もしかして俺なんかみたいなやつがシアに結婚なんて無理だったか?それとも……イテっ!」
オレの額にデコピンを放ったのは他の誰でも無いエリシアだった。可愛らしく赤みの強い舌をペロリと出す仕草にオレの顔に熱が篭る。
「私で良ければナツキくんのお嫁さんにして下さい……」
そのときのエリシアはまるで絵画の一場面のような美しさで答えてくれた。
オレとエリシアを囲むように周りからは黄色い声で祝福をしてくれた。
……こうしてオレはこの世界に勇者に巻き込まれて転移してきたことを悔いていたこともあったが最愛の人を見つけることができ、尚且つお嫁にまで来てくれることになった。
一生、この子を大切にしよう。
オレは今度こそ誓いを違えないように再度、誓いを立てた。
再度言っておきます。この小説ハーレムものです。