表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

虹色幻想

私の名前は…(虹色幻想30)

作者: 東亭和子

 私の名前はユカリ。

 でも生まれる前の名前はミドリ。


 妹に裏切られて死んだ私は生まれ変わった。

 妹の娘として。

 生まれた瞬間から分かった。

 私の運命。

 私は母である妹を憎んでいる。

 それは一生変わることはないだろう。


 家には出来るだけ帰りたくないと思った。

 だから部活に入った。

 バイトをした。

 出来るだけ早く自立できるように。

 私は進学はしないで就職をする。

 親にはまだ告げていないが、もう決めていた。

 母親のことが嫌いで仕方なかった。

 早く離れたい。

 それしか考えていなかった。


 小学校の頃に母親が相談している声を聞いた。

 あれは夜中だ。

「私、ユカリが怖いの。

 まだ小学生だというのに、何でも知ってるみたいで怖い。

 それにあの子私達のことが嫌いみたい」

 父親は気のせいだろう、と言った。

 母親の言葉は当たっている。

 そう、私は知っている。

 母親の罪も、父親の罪も。

 だから私は両親が嫌いなのだ。


 疎ましい家。

 でも私はまだ小さくて力がないから我慢するしかないのだと言い聞かせていた。

 高校生になった今、私には少しだが力がある。

 生きる力が。

 だから私は一人で生きることを決めた。

 

「進学しないってどういうこと?」

 母親が眉をひそめて言う。

 何も話したくないが、一度は言わなければならないだろうと腹をくくって話す事にした。

「就職するの。

 大学で勉強するつもりはないわ。

 就職して家を出て行く」

 私の言葉に父親も絶句したようだった。

「でも、大学くらいは行ったほうがいい」

 父親の言葉に笑う。

「大学に行ったからって就職できるというの?

 苦労して大学に入っても就職できる保障はないわ」

「でも高卒よりは就職率はいいのよ!?」

 確かにそうだろう。

 だが、私はもう待てないのだ。

「…まだ言いたくなかったけれど、ハッキリ言う。

 私は貴方たちが嫌い。

 ミドリを裏切った二人が嫌い。

 私を裏切った二人が憎いの」

 両親を睨みつけて告げる私に呆然とする二人。

「だから私は早くこの家を出たい。

 もう二人の顔を見なくても済むように」


 就職先はもう決まっていた。

 住み込みで働ける場所だから荷物をまとめればすぐにでも働ける。

「もしかして忘れたというの?

 ミドリがどんな思いで死んでいったか分からないと?」

 ふふ、愚かね。

「ミドリを裏切ってまで手に入れた幸せを私が壊してあげる」

 そう言って私が微笑むと母親は絶叫して座り込んだ。

 その隣で父親は青い顔をしていた。

 実の姉を殺してまで手に入れた愛しい人との家庭。

 それを壊すのが自分の娘だと知って、どう絶望するのだろうか?

「さようなら。

 もう二度と会わないわ」

 私は両親にそう告げると家を出て行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミドリだった頃の話とか、妹視点の話とか、含みあって想像力をかきたてられますね。 話のテンポ感が好きだなと思いました。
2015/10/07 16:47 退会済み
管理
[良い点]  意志が強くて羨ましいです。 [一言]  他人を不幸にしても、幸せな家庭は築けないです。
2015/10/05 07:29 退会済み
管理
[良い点] 連作 あるいは 単発もの? 意味深で終わった作品 この先あり、なし なんて思いながら 読んでましたが 長編小説のある一部分を切り取った 習作として書かれた作品とか とまあ、 そんなこ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ