私の名前は…(虹色幻想30)
私の名前はユカリ。
でも生まれる前の名前はミドリ。
妹に裏切られて死んだ私は生まれ変わった。
妹の娘として。
生まれた瞬間から分かった。
私の運命。
私は母である妹を憎んでいる。
それは一生変わることはないだろう。
家には出来るだけ帰りたくないと思った。
だから部活に入った。
バイトをした。
出来るだけ早く自立できるように。
私は進学はしないで就職をする。
親にはまだ告げていないが、もう決めていた。
母親のことが嫌いで仕方なかった。
早く離れたい。
それしか考えていなかった。
小学校の頃に母親が相談している声を聞いた。
あれは夜中だ。
「私、ユカリが怖いの。
まだ小学生だというのに、何でも知ってるみたいで怖い。
それにあの子私達のことが嫌いみたい」
父親は気のせいだろう、と言った。
母親の言葉は当たっている。
そう、私は知っている。
母親の罪も、父親の罪も。
だから私は両親が嫌いなのだ。
疎ましい家。
でも私はまだ小さくて力がないから我慢するしかないのだと言い聞かせていた。
高校生になった今、私には少しだが力がある。
生きる力が。
だから私は一人で生きることを決めた。
「進学しないってどういうこと?」
母親が眉をひそめて言う。
何も話したくないが、一度は言わなければならないだろうと腹をくくって話す事にした。
「就職するの。
大学で勉強するつもりはないわ。
就職して家を出て行く」
私の言葉に父親も絶句したようだった。
「でも、大学くらいは行ったほうがいい」
父親の言葉に笑う。
「大学に行ったからって就職できるというの?
苦労して大学に入っても就職できる保障はないわ」
「でも高卒よりは就職率はいいのよ!?」
確かにそうだろう。
だが、私はもう待てないのだ。
「…まだ言いたくなかったけれど、ハッキリ言う。
私は貴方たちが嫌い。
ミドリを裏切った二人が嫌い。
私を裏切った二人が憎いの」
両親を睨みつけて告げる私に呆然とする二人。
「だから私は早くこの家を出たい。
もう二人の顔を見なくても済むように」
就職先はもう決まっていた。
住み込みで働ける場所だから荷物をまとめればすぐにでも働ける。
「もしかして忘れたというの?
ミドリがどんな思いで死んでいったか分からないと?」
ふふ、愚かね。
「ミドリを裏切ってまで手に入れた幸せを私が壊してあげる」
そう言って私が微笑むと母親は絶叫して座り込んだ。
その隣で父親は青い顔をしていた。
実の姉を殺してまで手に入れた愛しい人との家庭。
それを壊すのが自分の娘だと知って、どう絶望するのだろうか?
「さようなら。
もう二度と会わないわ」
私は両親にそう告げると家を出て行った。




