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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
14 ジャーナリストと遊ぼう
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2

 朝の雪岡研究所。リビングには朝食を取る、純子、真、みどり、累の四人の姿があった。リビングの壁際には、植木鉢生首と化したせつなと、かつて純子を騙して専属契約しようとしたが失敗し、せつな同様に生首鉢植え化された赤城毅が、並べて置かれている。

 蔵は親族の通夜に行ったまま不在であったが、今日の昼には戻る予定になっている。本当はもっと早くに帰る予定であったが、遺産相続のごたごたに巻き込まれてしまい、帰るのがひどく遅れてしまったとのことである。


「昨日の環境保護デモ、十万人も集まったのかあ。よくやるなあ。踊らされてるだけで、宗教と変わらないってのに。あ、『グリムペニス』のデモ隊の連中らは、三十万人集まったって言ってるのか。三倍もサバ読むとか……。うっひゃあ……小四男子、担任教師の体罰を苦にして自殺とかでかでかと見出しとかあるのに、内容読んでみたら、たったビンタ一発かまされて、ショックで首吊りだってさ!」


 食事をいち早く終えたみどりが、目の前にホログラフィーディスプレイを投影して、新聞サイトを見ながら、大袈裟に呆れ声をあげる。


「今時のガキってみんなこんな軟弱なのかねぇ~? やっぱ十年前に施行されたハイパーゆとり教育は間違ってたんだね。ねね、純姉。ここはいっちょ、下校時狙って、道歩いている小学生片っ端からビンタしまくってみて、何人ショックで自殺するか、試してやりたいと思わね?」


 みどりがにやにやと笑いながら、純子の方を見る。


「いやいや、それしたら、事案発生ってことで逮捕されると思うしー……。ていうかさー、そもそも何で私にそんな話振るのー?」


 苦笑気味に尋ねる純子。


「お前なら本気で相手にしてくれると思ったからじゃないか?」

「いやいやいや……」


 真に言われ、純子は手を振る。


「あたしがやるんなら平気だよォ~。見た目も小学生高学年だから、傍目から見て小学生同士が喧嘩してるってことでお咎め無し。イェア、見た目がガキって本当に便利よねー。てなわけで、ちょっくら行ってくらぁ」


 冗談で外に行くポーズを取るみどり。


「累でも大丈夫だな。僕や雪岡だと補導されそうか?」

「えっと……僕……小学生に見えます? 自分ではぎりぎり……中学生に入る年齢だと思っていましたが……」


 真の言葉を聞き、累が意外そうな表情になって問う。


「累が中学生はちょっと苦しいと思う。みどりは累より背が高い分、中一くらいには見れそうだが、それでも顔つきが幼い感じだな」

 と、真。


「せつなは幼稚園児だヨっ」

 甲高い声で自己主張するせつな。


「ここ、見た目と年齢が一致するのって俺だけなんじゃないですかね。あ、蔵さんもかな」


 唯一不老処置も転生も若返り処置もしていない毅が言う。


「それが何なの? 見た目が全てだヨっ。だから今のせつなはとっても幸せ~」

「理解できない。俺はすげえ不幸……。一体いつになったらこの地獄から解放してもらえるんだろう……」

「せつなは純子お姉ちゃんやみどりお姉ちゃんとお喋りしているだけで、楽しいもーん」


 生首二人組のせつなと毅が言いあう。


「会話だけでも楽しいってのは、得な性分だねえ。ていうか純姉、せつなにもネットくらい見られるようにしてあげたら~?」

「あ、そだね。今まで気が回らなくてすまんこ、せつなちゃん。後でせつなちゃんの体でも見られる仕掛けを作ってあげるよー」


 みどりに促された純子が、せつなの方を向いて告げた。


「わーい、ありがとう。気の利くみどりお姉ちゃん、親切な純子お姉ちゃん」

「あの……俺には……無いですよね。そうですよね」


 心底嬉しそうな笑顔で礼を述べるせつなと、皮肉げな笑みを浮かべてぶつぶつと呟く毅。


「いいってことよォ~。むー、新聞社はアイドルクローンの販売の件は、意地でもニュースにしやがらない気かァ。権力と暴力に屈しちゃって、ダサいったらありゃしねー。ゴシップ誌の方がまだ気合い入ってるよぉ~」


 ゴシップサイトと新聞社のニュースサイトの双方を開いて、みどりが唸った。


「報道の自由の本質は報道しない自由ってかァ。新聞しか見ない人は、知識も情報も偏りまくりになるねぇ~、こりゃ」

「んー、今時情報源がテレビのニュースと新聞だけって人もいないんじゃないかなー?」


 みどりの言葉に純子が異を唱えたが、みどりは首を横に振る。


「いやいやいや、純姉。違うんだなァ、これが。みどりが昔転生した家に、新聞やテレビしか見なくて、それらの情報が全てだと信じて、それらの報道が嘘偽り無いと信じている、救いようの無い田舎者頑固親父がいたんだわさ。親が馬鹿の家で育つのも鬱陶しいから、四歳くらいで焼身自殺しといたけどねぇ~。それ以来、田舎だけは転生対象として外しとくことにしたわー。田舎はあたしには合わないよぉ」

「何でわざわざ焼身自殺……。それに……田舎どうこうに繋げて考えるのも……偏見でしょう」


 累が突っこむ。


「裏通りのマスコミの方がまともっていうのは皮肉な話だな」


 真が言った。裏通りには裏通りの出来事を専門で扱うマスメディアが存在し、それらは主に、情報組織が取り扱っている。


「そりゃあねえ。裏通りは信用第一だから、偏向報道や、偽った情報流そうものならあっという間に干されるか、下手すりゃ抗争に発展しちゃうしさあ」


 純子が言うが、言われるまでもなく皆それはわかっている。


「裏通りの情報組織は、お金取りすぎなのが難点なんだよね。みどりはお小遣いの都合上、情報組織が運営しているニュースサイトって、ほとんど見ることできなかったから、表通りのニュースサイトから裏の情報も仕入れるのが常になっちゃっててさァ」


 子供としての人生ばかりを送っていたみどりからすると、その件に限らず、手持ちの金の都合で行動範囲が縛られることが多かった。


「んー……ニュース関連に力こそ入れてないけど、『凍結の太陽』は格安だと思うけどねえ」


 懇意にしている情報組織の名をあげる純子。


「ま、今は純姉が小遣い超くれるから、気兼ねしなくていいはずなんだけどね。習性になっちゃってたよ。よっしゃあ、片っ端から登録しまくっちゃうぜィ」


 宣言し、早速みどりは裏通りの情報組織が運営するニュースサイトを開きまくる。


「そういうことにお金を使うのは止めないけど、変なことには使っちゃだめだよー。あんまりうるさくは言いたくないけどねー」

「オッケイ、純姉。居候の身の上ですたーい。無駄遣いなんてするわけなっしーんぐ」


 やんわりとたしなめる純子に、おどけて返事を返すみどり。


「俺がみどりちゃんだったら、こっそりエロサイトにでもつぎ込んじゃいそうですよ。あははは」


 毅がそんな冗談を飛ばす。その毅の発言以降、リビングでの会話がピタリと止まった。


「あの……いじめですかね……? これ」

 空気に耐えられず、毅がぼそりと言う。


「今のは自業自得でしょう……。女子が三人もいる前で……」

「えー……いくらなんでも最近の女子なら、この程度のことじゃ何とも思わんでしょう? しかも、中身は女『子』じゃない女子ばかりなんですし」


 累が同情をこめて毅に声をかけたが、ますます墓穴を掘り、その自覚も無い毅だった。

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