終章
千年間、少女は少女の姿のまま探していた。彷徨っていた。流離っていた。
この世の終わりまで会えないのではないか、そんな不安を心の中に抱きつつも、諦めきれずに生き続けていた。
今ある命に終焉を迎え、転生の枠に魂をゆだねた方が、再会の確率は高いという話も聞いたが、それでは駄目だ。それは受け入れられない。あくまで今の命でもう一度会いたい。たとえ相手が生まれ変わって姿も心も変わっていてもいい。この世で唯一愛した存在との記憶を持ったまま、その魂に触れたい。
諦められないまま歩み続け、途方も無い年月の経過と共に、ついにその想いは果たされた。それだけで十分に満足だった。
だが自分が満足の結果の先で、物語はまだ続いていた。
「誰にでも、一番いい思い出が焼きついた時代があるよね」
リビングにて、ソファーに累と二人きり並んで座った純子が言った。
「私は千年前のあの時、累君は五百年前の戦国時代かな」
「ええ……あの頃に戻りたいと……今でも痛切に思います」
「でも戻れない。思い出の中にしか存在しえないんだよ。時間旅行はできなくても、せめて過去の出来事くらい見られる、タイムテレビくらいは作れたらいいけどね」
隣に寄り添って座っている累の体を抱き寄せ、頭を撫でる。
「でもさ、これからもっといい思い出を作ろうと思う。あの子と一緒にね。もちろん累君とも一緒に」
「そう言うわりに……抜け駆けしまくりじゃないですか……」
口を尖らせつつも、累は頭を純子の体にすり寄せ、じゃれついた。
マッドサイエンティストの恋人で遊ぼう 終




