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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
最終章 マッドサイエンティストをやっつけて遊ぼう
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21

「またこの石像かー」

「中々厄介な能力ですね」


 自分達と同じ姿の石像がいきなり間近に出現し、跳びはねて襲ってくる光景を見て、ネコミミー博士とワグナーが揃って眉をひそめる。


「はい、いなくなって」


 陽菜がぱんと手を叩く。すると跳びはねて襲ってきた大量の石像が、綺麗さっぱり消失する。


「ど、どうなってんだい……」

 石像を全て一瞬にして消され、絶句するマリエ。


「優の消滅視線みたいな力?」

「真から聞いた。超常の力を問答無用で無効化させる力の持ち主がいるって。多分それだ」


 来夢の推測を克彦が否定した。


「ここ、空間操作がほとんど使えないわ。アポートくらいなら出来そうだけど。亜空間トンネルを作るのも、扉を開くのも無理」

「それじゃ俺、ほぼ役立たずじゃん……」


 黒鎌を構えた凛が渋い声で報告し、克彦が愕然とする。


 マリエの石像出現と消去の直後、両陣営が激しく激突した。


 遠隔攻撃が乱れ飛び、近接タイプの戦闘者が攻撃をかいくぐって接近しあう、肉弾戦を繰り広げる。

 戦闘が始まって一分もしないうちに、PO対策機構が形勢不利になった。PO対策機構側が繰り出す能力は、全てというわけではないが、何割かが陽菜によって消されていく。そしてサイキック・オフェンダー側の負傷者は、余剰エネルギーによってすぐに回復してしまう。


「この状況は不味いな……。こっちは敵を一発で殺す必要がある。さもないとすぐに回復される」


 新居が呻く。新居の手にはグレネードマシンガンがあるが、近接組が敵陣営に殴り込みに行っているため、味方も吹き飛ばしそうなので使いづらい。


 酒井署長が再び巨大ピィィィポ君に変身する。それに呼応し、ワグナーもマッコウクジラ男へと変身して、再び巨大ピィィィポ君に向かって突進する。


 巨大ピィィィポ君と鯨男の両者が組み合う。前回は鯨の突進を食い止められなかった巨大ピィィィポ君であるが、今回は弾き飛ばされることは無かった。逆に鯨男が突進の勢いを利用され、すくい投げでグラウンドに転がされた。


「巻き添えにされないように注意しないと……」


 恐々とする李磊。すぐ側にマッコウクジラの巨体が倒れてきたのだ。


 鯨男には手足が生えているが、胴体に比していささか短く、倒れると起き上がるのも中々苦労する。巨大ピィィィポ君がその隙を突いて、倒れている鯨男にストンピングを見舞う。


「陽菜さんが能力を消せると言っても、こちらにいる全員分全て消せるわけじゃないし、陽菜さんも消耗していくと思うよ」


 ツグミがポジティヴな発言を行う。


「でも敵には転烙市で得た余剰エネルギーがある」

「その分回復し続ける」


 伽耶と麻耶が現実を突きつける。


 実際それは目の前で起こっていた。サイキック・オフェンダーは惜しげなく能力を連発してくるし、傷を受けてもすぐに回復してしまっている。そのおかげで戦いはどう見てもPO対策機構側の方が不利だ。


「伽耶と麻耶の力で、余剰エネルギーがあいつらに補給されないようには出来ないか?」


 熱次郎が提案する。


「やってみる」「試してみる価値有り」


 姉妹同時に頷く。


「不当に絞られし哀れな命の輝きよ、あっち行けー」「邪魔っけエネルギーを防ぐばりあー」

「伽耶の呪文はそれでいいのか?」


 途中から適当になった伽耶の呪文を聞いて、熱次郎が笑う。


「ムッフッフッフッ、余剰エネルギーの供給が突然途絶えたね。まだ十分に余っていたはずだが?」


 ミスター・マンジが不審がる。


「不可視の壁で遮られているうえに、エネルギーだけが届かない風が吹いているかのように、途中で逆流して押し流されている」


 解析した霧崎が言い、陽菜を見た。


「すまんが、余剰エネルギーの供給を遮る二つの力を打ち消してくれたまえ」

「わかったわ」


 霧崎の要請に従い、陽菜が伽耶と麻耶の術を解除した。


「あっさり解かれた」「解除能力者ウザい」

 姉妹が揃って御機嫌斜めな顔になる。


「ヘーイ、一人は伽耶姉と麻耶姉のどっちか一人で、陽菜姉を封じることできね?」


 今度はみどりが提案する。


「私がやる」

「伽耶に任せる」

「ディスペラーさん、次ディスペルしたらその力が眠気に変換」「邪魔っけエネルギーが来ないウォール」


 伽耶と麻耶が術を唱える。


「まただ。今度は壁だけだがな」

「はいはい。しつこいなもう」


 霧崎が報告し、陽菜がだるそうに術の解除を試みたが――


「陽菜っ!?」


 急に陽菜が倒れたので、エカチェリーナが血相を変えて駆け寄る。


「ぐぽぼぼぼーっ! ずげぐごがばばばばば! ふごぐぶぶぶぶぶッ!」

「ちょっ……陽菜っ、人前で何てはしたなイいびきかいとんのやっ」


 豪快ないびきをかいて眠る陽菜を抱きかかえ、エカチェリーナは顔をしかめる。


「むっふっふっふっ、敵の能力にやられたようだね。しかしこのいびきはやかましすぎるし、一度病院で診てもらった方がいいかもしれないよ?」


 と、ミスター・マンジ。


「今度連れてくわ。陽菜っ! 起きーヤっ! あんたに勝敗かかっとんのやで!」


 エカチェリーナが陽菜の耳元で大声で叫び、頬を結構力を込めて叩くが、陽菜が起きる気配は無い。


「相手の力を利用したうえでの眠り故に、効果大きい」

「伽耶にしてはよく考えた。褒めてつかわす」


 ドヤ顔の伽耶と、珍しく称賛する麻耶。


「皆気を付ケーや! 余剰エネルギーの供給止まってもーたから、怪我しても自動で回復せーへんでーっ!」


 陽菜を起こすのは無理と悟り、エカチェリーナが大声で味方に注意を促す。


 最前線では、バイパー、十一号、十夜、修、オンドレイが戦っている。


「あばばばば、参戦、と」

 そこに薙刀を構えたみどりも加わった。


「おい毒蛇の坊や、過信して前に出すぎだ」

「過信しているわけじゃねーけどな。ただのうっかりだ」


 オンドレイに注意されて、バイパーが笑顔で言い返し、心持ち後方へと下がる。


 そのバイパーめがけて、上から大量の枝豆を射出してくる者がいた。バイパーは大きく横に跳び、枝豆弾を避ける。


「またお前か。俺のことが気に入ったのか?」


 カボチャに乗って空を飛ぶネコミミー博士を見上げ、片方だけ口角を上げて獰猛な笑みを浮かべてみせるバイパー。


「僕はそんなに好戦的な性格じゃないけど。研究者であって、戦闘者じゃないから」


 控えめな口調と言葉とは裏腹に、ネコミミー博士は大量のナスをバイパーに向けて射出する。ナスは地面に着弾すると小爆発を起こし、当たりに爆風とつぶてを撒き散らす。


「この野郎っ」


 バイパーが大きく跳躍し、ネコミミー博士を下から拳で突き上げようとしたが、ネコミミー博士は悠々とかわしてしまう。


「糞っ……ムカつく餓鬼だ」


 カボチャで飛び回るネコミミー博士を見上げ、悔しげに顔を歪めるバイパー。


「おい、飛んでいる相手に毒蛇の坊やとは相性が悪い。俺がいこう」


 オンドレイがバイパーの肩に手を置いて申し出た。


「ふう……じゃあ超常殺しの旦那はどーすんだって話だ。お手並み拝見するぜ」

「うむ。こうする」


 バイパーが皮肉っぽい口調で言うと、オンドレイは拳銃を出して、ネコミミー博士を撃った。


「あうっ……」


 胸を撃たれて呻き、苦しげな顔で撃たれた胸を押さえて、カボチャを飛ばして球場の外へと逃げていくネコミミー博士。


「あっさり当たったな……」

「俺の腕がいいからな。加えて、とびっきり強い溶肉液弾頭だ。逃げたって事は、再生能力があっても効果抜群だったってことだ」


 釈然としないバイパーに、オンドレイがにやりと笑ってうそぶく。


「ネコミミー博士を退けるとは、中々やるではないか。流石は超常殺し」


 オンドレイとバイパーの前に、霧崎が進み出る。


「へっ、こいつはまた厄介な御仁の御登場で」


 バイパーが鼻を鳴らした。


「こいつは俺一人の手には余る。毒蛇の坊や、一緒にやるか?」


 オンドレイが霧崎を睨んだまま伺う。


「あんたとのタッグで、三狂の一人に挑むなんて、ネタ作りとしては最高だぜ。それと、俺はあんたと大して歳変わらないとは思うから、坊や呼ばわりは違和感あるぞ」

「そうか」


 オンドレイの誘いを快諾しつつも、バイパーはきっちりと主張しておいた。

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