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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
最終章 マッドサイエンティストをやっつけて遊ぼう
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10

「綾音ちゃん、その人達と、随分と距離が近いというか、親しみ持っている相手っぽく見えるんだけど、お友達?」


 純子がさらに突っ込んだ質問を綾音にぶつける。これは最早とっくにばれているのではないかと、何人かは危ぶむ。言い方からして疑っている感が凄い。


「はい。彼等は転落ガーディアンの知己です。以前から交流がありましたし、術の手ほどきなどもしております」


 綾音は冷静に対処する。累や純子と遭遇した際も想定して、言い訳の台詞も幾つか予め考えてあった。


「人員も必要としているようですし、軽いトラブルが発生したとのことで、一緒に見に行く所です」

「それにしては隋分と人が多くないですか?」


 累がさらに突っ込む。


「作業に人員が必要ということで、専門職の方を募りました」

「どんなトラブル? どんな作業?」


 純子も突っ込む。


(いくら何でも根掘り葉掘り聞きすぎだし、怪しまれているを通り越してバレているよね)


 来夢が思う。他の何人かも同様のことを考えだしている。


「作業内容と、どういうスキルの持ち主かまでは、中にいる者から詳しく聞いていません。今確かめます」

「綾音、猿芝居はもういいですよ」


 累が大きく息を吐いた。その手にはいつの間にか刀が握られている。


「何時から裏切っていたかは知りませんが、その兆候は見えていました。やっと尻尾を出しましたね」


 かなり怖い目つきになって綾音を睨む累だが、綾音は一切怖気づいた様子は無い。累の眼差しをいつもの涼やかな面で平然と受け止めている。


(新居に連絡だ! 安楽市民球場襲撃部隊を動かしてもらうしかない!)


 美香がポケットの中でバーチャフォンを起動して、メールを送る。


「天使の隙を見て突破するしかないな」

「私もそう思っていた所だが、少し時間を稼ぎたい」


 エンジェルが囁く。その言葉に同意しつつ、美香が告げる。


「伽耶、麻耶。変装を解いてもいいから、俺が言う魔術、かけられないかな?」


 来夢が小声で要求する。


『どんな?』

「えっとね……空間操作が防がれずに空間操作できますようにって感じの術」

「無理がある。駄目」「無茶苦茶無理」


 来夢の要求内容を聞き、伽耶と麻耶は却下した。


「んー……変装というか、いや、変装もしているようだけど、何か術か能力で、正体がバレないように、認識できないようにしているっぽい? もしかして私の知っている人もこの中にいる?」


 純子が喋りつつ、人工魔眼を光らせる。


「おやおや、解析アナライズ解呪ディスペルも防がれちゃった。これ、物凄く強い力で増幅ブーストされているみたいだねえ。陽菜ちゃん呼んでくるかなあ。陽菜ちゃんでも解けるかどうか怪しいけど」

「戦闘に入っても術は解けないのでしょうか? 試してみましょう」


 純子と累の台詞を聞いて、美香は焦燥に駆られる。このまま何もしなくても、どんどん状況は悪化していくと感じた。


「もう術を解くしかない! さもないと戦えない!」

「そうね」「了解」

「早計な気もしますが仕方ありませんねー」


 美香が叫び、伽耶と麻耶が応じ、怜奈が言った。


「あれま、今の声は」

 純子が笑う。


 美香と伽耶と麻耶の術が一斉に解除され、全員の姿が露わになる。


「おやおや、知っている人だらけだったねえ」

 さらにおかしそうに笑う純子。


「強行突破するしかないね」

 来夢が翼を生やして浮き上がる。


「えっとさ、私思うんだけど、少数が強行突破しても、中には大量に敵が待ち構えているし、バレてしまった現時点で、計画はオシャカじゃない? そうじゃない? どうなの? 誰か教えて?」

「あんたの言う通りだし、それが答えだよ」


 懐に手を入れながら問いかける正美に、マリエが言った。


(せめて時間稼ぎだ! 新居にも、真にも、褥通りで待機している者達にも、連絡はいれた! 援軍が来るまで!)


 そう思い、美香が純子を睨む。


「純子! もうやめにしないか!」

「んー? 突然どうしたの? 美香ちゃん」


 純子が美香を面白がるかのように見る。


「優が死んだ! 他の殺人倶楽部の者達もだ! もう不毛な争いで犠牲を出すのはうんざりだ! 友人であり弟子とも言える者達を大勢死なせて、君はそれで平気なのか!」


 この問いかけは時間稼ぎだけではない。美香が純子にぶつけたい本心も混じっている。しかしまともな返答は期待できないし、どの程度の時間稼ぎになるかも疑問だ。


(美香らしい下手糞な時間稼ぎ。でも俺も協力してあげるか)


 来夢が吐息をつく。


「平気じゃないよ。心は痛むよ。でも仕方ないよー。私は私の目的を叶える。その邪魔をしなければよかっただけの話だし、犠牲を出したくないなら、最初から戦わなくちゃいいだけの話だし、そういう世界に皆、自分から足を踏み入れたんだから、恨みっこ無しなはずじゃない?」

「俺もそう思う。純子の言うことは正しい。でも……純子が正しい」


 純子が口にした答えを聞いて、来夢が同意した。


「来夢! おちょくっているのか!」

「ごめん、美香をフォローしたかったんだけど、美香がとんちんかんすぎて無理だった。つまり美香が悪い。美香が馬鹿すぎて、フォローは難しいんだ」


 怒鳴る美香に、来夢は困り顔で言った。


「きっと時間稼ぎでしょう。美香はこっそりバーチャフォンを起動させ、連絡していますし」

(そこまで見破られていたか!)


 累の言葉を聞いて、美香は思わず歯噛みする。


「父上は私が相手をします」

 綾音が静かに告げ、匕首を抜く。


「どこまでもつかわかりませんが、他の方達で純子の担当をお願いします」


 言った直後、綾音は累めがけて真っすぐ駆け出した。


「僕の手による仕置きを望みますか」


 累が刀の柄に手をかけた瞬間、綾音の姿が消える。


(ここはまだ空間防止結界の外でしたね)


 累が振り返る。転移した綾音が目前に迫り、匕首が閃く。


 逆袈裟に振られた匕首を、累は側面に回り込む大きな動きで回避する。最低限の見切りでの回避は行わない。何故なら綾音が持つこの匕首には、切りつけたものを燃やす力と、刀身から炎が噴き上がる力があるからだ。


 果たして匕首から炎が巻き起こり、累がいた空間を横切る。


「あっちは始まったけど、こっちは純子が動く気配は無いね。どうするんだい?」

「俺達全員でもあの堕天使を討てるかどうか怪しい所だ」


 マリエが伺うと、エンジェルが電子煙草を咥えながら言った。


「俺達全員で純子をふるぼっこ……というわけにもいかないみたいだ」


 克彦が言う。純子がいる後方から、転烙ガーディアンの兵士達がやってきたのだ。その数は現時点で五名だが、時間が経てばすぐに増えるだろう。


「マリエと正美と伽耶と麻耶は追加のサイキック・オフェンダーを相手にして。克彦兄ちゃん、怜奈、エンジェル、美香と、それと俺は純子を担当」


 来夢が指示を出す。


「振り分けに異議が無いわけではないが、言い合っている暇も無いな!」


 美香が純子を見据えたまま銃を抜く。


「うわーっ! 何だ何だ!」

「こいつら何!? 俺の石像!?」

「迂闊に攻撃仕掛けない方がいいかもっ! 爆発とかするかも!?」

「何この石像!? 私の劣化!? 私こんな不細工じゃない!」


 転烙ガーディアンの兵士達の真横に、彼等を模した石像が数体現れて、跳びはねて襲いかかる。マリエの能力だ。転烙ガーディアンの兵は混乱気味になる。


「マリエちゃんの能力は多人数向きだから、その振り分けはいい判断だよ、来夢君」

「褒めてくれてありがとう。これは御礼」


 純子が来夢に向かって称賛すると、来夢が重力弾を純子に降らせた。


 上空から降り注ぐ巨大な重力弾に対し、純子は避けようとせず、ただ上を向いて双眸を光らせた。

 それだけで重力弾は消されてしまったが、来夢は動揺することなく、追加の重力弾複数を、純子に向けて放った。

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