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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
最終章 マッドサイエンティストをやっつけて遊ぼう
3354/3386

1

 デビルとの戦闘を終えた真は、みどり、史愉、チロン、政馬、男治と共に、安楽市絶好町無いにある中枢施設へと赴いた。みどりの要請で、根人達の決めた方針をPO対策機構のオフィス勢に直接伝える事になったので、彼等と合流するつもりだった。


「風強くなってきましたね~」

「台風が南に来ているそうだよ。明日には本土上陸だってね」

「雨が降ってこないうちにケリがつくといいのですが~」

「そうだね。雨風強い中あちこち移動とか、子供の頃はわりと平気だったけど、今はしんどいよ」

「政馬君はまだ子供じゃないでいすか~。」

「もっと小さい頃の子供って話ね」


 会議室にて、男治と政馬が喋っている間、他の面々はほぼ無言で待っていた。


 しばらくして新居がやってくる。


「よし、話を聞かせろ」

「新居が来ただけだぞー。他の連中は――」

「いらん。俺とグリムペニスのトップ勢がいればいいだろ」


 一同を見渡し、新居が強引に決定した。ちなみにミルクはチロンが持つバスケットの中にいる。


「ヘーイ、調査結果話すよォ~。純姉達のやる事に反対する根人達と接触して、ガオケレナの事を伝えた結果、向こうでプラン決めるって話になって、で、根人達の間でプランが決まったから、皆に直接伝えるために集まってもらったんだわさ」


 みどりがおさらいの解説を行う。


「新居を待っていただけという結果になったけどな」

「他の奴等には録音して伝える。悠長に待っている時間もねーだろ」


 真が言うと、新居がもっともな台詞を口にした。


 みどりが音声ソフトを起動する。根人からの声は、この音声ソフトを介して伝えられる。


『はじめまして。根人の代表です』

 柔らかな女性の声によって、挨拶がなされる。


『我々が定めたプランは、強化型アルラウネの合体木――ガオケレナに直接伝えるつもりです』

「あたし達には伝えないんスか? それを聞くために集まったんだぞー」

『もちろん今から伝えるつもりです。先に断りを入れただけです』

「断りを入れる順番が間違ってるぞー。ぐぴゅっ」

『申し訳ございません。地球の人達の文化や礼節を全て把握しきっているわけでもないので』


 呆れる史愉に、根人が謝罪する。


「さっさと本題を頼む。どんなプランだ?」

 真が促す。


『ガオケレナの種子を無効化する薬品と、種子の放出を遅らせる薬を開発しました。すでに転烙市から発送し、配達している途中です。これらをガオケレナに直接投与する事で、人類の遺伝子を書き換えて、全ての人間が超常の力を備えるようにする種子の放出を、抑える事が出来ます』


 根人がプランを伝えた。


『例え無効化薬品を投与しても、純子達がガオケレナをいじって、再び有効化してしまう可能性が濃厚だな』


 溜息混じりにミルクが言う。


「ようするに純子もぶっ殺すしかないぞー」

「ふざけるな。そんなことするくらいなら、僕は雪岡側につくぞ」


 史愉の台詞を聞いた瞬間、真が獰猛な殺気を放ち、史愉を睨む。


「ぐぴゅぴゅ、実際他にどーしょーもないッスよ?」

「そうですね~。純子さんがいる限り、リトライしますしねー」


 史愉がせせら笑い、男治も史愉に同意する。


「じゃあ真がその辺も何とかしろ。以上」

「そのつもりだ」


 新居が命令口調で告げると、真は殺気を抑えた。


「何とかしろの一言で済ませちゃうんだ。済ませられちゃうんだ」


 新居の強引なまとめ方がおかしくて、政馬が微笑む。


『まだ話は続きがあります』

 根人が発言する。


『ガオケレナの種子を無効化する薬品は、投与しても、すぐに効果が出るわけではありません。効果が出るまでに時間がかかります。そのために、種子の放出を遅らせる薬も同時に開発したのです。こちらはすぐに効果が出ます。故に、二つの薬品を直接投与した後、無効化薬品が効果を発揮するまでの時間、ガオケレナに雪岡純子とその手勢を近づけないようにしなければなりません。さもなければ、投与した薬品も無効化されてしまう可能性があります』

「つまりそれは……球場を逆に乗っ取って近づかせないようにするという事かの?」

『そうなります』


 チロンの確認に、根人は肯定した。


 一同押し黙る。


「綱渡り感が半端じゃないよね、これ。幾つもの難題をクリアーする必要があるよね」


 しばらくして、政馬がぽつりと呟く。


(みどりがずっと浮かない顔をしていた理由はこれか。根人から先に一度聞いていたせいだな)

(そういうことだわさ)


 真がみどりを見て思うと、みどりは力なく笑い、真に念話で頷いた。


『さらに最大の問題点が有ります』


 根人は空気を読んで、しばしの間は黙っていたが、告げるべきことはまだあった。


『実験する猶予がほとんどないので、ガオケレナに投与して効果があるかどうかも怪しいという点です。種子の放出を遅らせる薬品は即効性があるうえに、効果が見込まれます。しかし種子の超常能力付与を無効化する薬品は、我々の計算では、六割弱の確率での効果が見込まれています』

「時間が無いのではそれも仕方ありませんね~」

「ぐぴゅう……この短時間で、データもろくに無いのに、そこまでのものを作ったこと自体が凄いことだぞー」


 研究者である男治と史愉は、根人の告げた最大の問題点に対して、文句を言う気にはなれなかった。


『以上です。質問はありますか?』

「ワシは無い」

「僕も無いよ」

「無ーよ」


 チロン、政馬、新居がそれぞれ言い、他の面々も何も質問しようとはしなかった。


『では御武運を』

 根人との通信が切れる。


「ぐぴゅう。いよいよ大一番だぞー。全員覚悟決めてかかる必要があるっス」


 史愉が一同を見渡して鼓舞した。


「何の覚悟だ? 覚悟は自然と決まるもんだ。意識して決めるもんじゃねえ」

「ふん、それは同意してやるけど、気合い入れるって意味で言ったんだぞー」


 新居が否定するも、史愉は笑い飛ばす。


「史愉にしては珍しい気合いの入れ方じゃのー」

 チロンが不思議そうに言う。


「むしろこのシチュエーションでテンション低めの君達の方が、どうかしていると思うんだぞー。ぐぴゅぴゅ」

「表面上のテンションで表していなくても、気合いは入ってる」

「テンション低いのは、この先がハードだからじゃないですかね~」


 史愉の言葉に対し、真と男治が言った。


「根人のプランだけに任せておくわけにはいかねーな」


 新居が発言し、一同の視線が新居に注がれる。


「全てガオケレナと根人任せにはしない。勇気と朱堂も根人任せにする事に疑問を呈していた。その時俺ははっきりとした意見を口にしなかったが、今では同感だ。失敗した時の事も考慮し、他の作戦も考えておく。すぐ実行できるように準備もする」

『それは戦力の分散にならないか?』


 新居の方針を聞き、ミルクが危惧する。


「根人のプランに、PO対策機構の全戦力を投入するわけでもないからな。デビルに滅茶苦茶やられたのは確かに痛かったが、そこまで人手不足になったわけでもねー」


 新居が言った直後、政馬が席を立つ。


「ちょっと早いけどお暇するね」

 そう言い残し、政馬は会議室を出た。


(これは最後のチャンス。絶好のチャンス。勇気との約束は破っちゃうけど、見逃すには惜しいよ)


 歩きながら政馬はほくそ笑む。


「あのさ、ジュデッカ。優秀な兵士を至急集めて」


 中枢施設を出た所で、政馬は電話をかける。


「PO対策機構とはここで袂を分かつ。こっちは独自で動こう。改めて……僕達の理想世界を創るために。あのね、これはね、素晴らしいチャンスが巡ってきたと思うんだ」

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