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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
98 悪魔と遊ぼう
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31

 精神世界から接触した根人に、みどりはこれまでの経緯を伝えた。


『そのガオケレナ自身が依頼を?』

(ふえ~。そうだよう。賛同してくれるなら、解析データを渡すぜィ)


 みどり達が安楽市民球場持ち帰ったガオケレナの解析データは、グリムペニスに引き渡し、さらに詳細に分析したデータがみどりの手元にある。


『芳しくない状況だ。時間も人員も足らず、幸運も必要な作戦になりそうだ。君達の星の言葉を借りるなら、針の穴を通すようなもの。それも二度、三度とな』

(ヘーイ、勿体ぶってないで具体的に教えてくれよォ~)


 根人の反応に、みどりが焦れる。


『具体的に教えるにも、我々の方で作戦をまとめる必要がある。それにも時間がかかる。我々と言ったが、短期間で同志を探し、集める必要もある。私一人では無理がある。協力してくれそうな心当たりのある者は、私の知る限りでは数名。その数名からまた、心当たりのある者に声をかけてもらい、集めるだけ集めてから、知恵を出し合う』

(そんな悠長な……って言いたいけど、必要なことなんだね?)

『そうだ。限られた時間の中で、しかし絶対に必要なプロセスの一つがそれだ。それらも含めて時間との戦いになる』


 重々しい口調で告げる根人に、みどりは押し黙る。散々時間をかけて見つけたと思った相手が、また時間をかけるようなことが必要だと言ってきたので、辟易としてしまった。


『我々のプランが固まったら、君達にも動いてもらう。物理的な干渉が幾つ必要になるかは現時点では不明だが、絶対にやってもらわねばならない事の一つが、雪岡純子がガオケレナに接触しないようにすることだ』

(それって敵陣突破したあげく、敵の城を乗っ取って城を防衛しろってことじゃんよ……)


 ガオケレナを破壊させる方法があるなら、そちらを選んだ方が楽であると、みどりは考える。その方法が見つかれば、PO対策機構の多くは破壊する方策を選ぶであろうが、破壊しようにもミサイルも通じないし、ガオケレナ自身が高い知性と強大な超常の力を有しているため、それも非常に困難だ。


(ガオケレナにプランを伝えるのは?)

『それは我々が直接行えば済むことである。繰り返し告げる。まずは同志を集める。それから議論を行い、プランを組み立てる。方針が定まったらそちらに伝えるので、方針通りに動いてもらう。しかし最低でも、君達は再びガオケレナの近くに向かわなくてはならない。ガオケレナに雪岡純子を近づけるな』

(純姉を近づかせない理由も教えてよォ~)

『雪岡純子がガオケレナに何らかの干渉をすれば、私達が考えたプランが台無しになる可能性もある』

(具体的にどうこうではなく、保険なんだね?)

『はっきりしている事もあるぞ。雪岡純子には究極運命操作術、悪魔の偽証罪がある。これを発動させた場合、こちらが何を仕掛けても、全て崩される可能性がある。そして彼女はこれを最後に使うつもりだ』

(ふわぁ~……それじゃあ何やっても駄目じゃん)

『悪魔の偽証罪も万能というわけではない。万能ならば雪岡純子もここまで大掛かりなことをしない。あれはダメ押しの一手。より確実性を強めるためだろう。運命操作術とは元来、そのような使われ方の方が多い。その確実性を強めるには、発射台たるガオケレナの側に居る必要があると思われる』


 根人の話を聞いて、みどりは真の魂の記憶を思い出す。千年前の真――嘘鼠の魔法使いが目撃して、純子が悪魔の偽証罪を使用した場面を。


(ミミズの法則を変えたアレは、確実性強めるも何も無くて、いきなりすぎたけどねえ。まあ、純姉が子供で、大小の危険性も考えなかったから?)


 純子がその気になれば、側にいるいないといった条件も関係無しに、悪魔の偽証罪を使用できるのではないかと、みどりは案ずる。


 みどりは意識を現実世界に戻し、根人との会話を真達に伝える。


「ようするにまた待機か」


 頭の中でうんざりした顔を思い浮かべる真。


「残り時間は42~54時間。二日前後か」

 熱次郎が呟く。


「新居だけではなく、朱堂と勇気にも伝えた方がよさそうだ。あとミルクにも」


 真が言い、新居に電話をかけた。


***


 優はグリムペニス日本支部ビル内の宿舎に泊まっていた。デビル討伐にいつでも行けるようにするためだ。


 仲間が全て死んだわけではない。岸夫は体こそ壊れたが、あれは元々肉人形と呼ばれるロボットだ。操作は別の場所で行われている。中の人の正体は、優の父親である暁光次だ。


 優は父親と連絡を一度取ったが、それ以上話していない。父親は優に、復讐などやめろと言ったが、優は聞き入れる気は無かった。


 部屋の扉がノックされる。


「どうぞ」

 扉が開くと、カケラが姿を見せた。


「お前も仲間をデビルに皆殺しにされて、復讐するためにここにいると聞いた」


 部屋の入口に立ったまま、カケラは暗い面持ちで話し始める。


「はい。今は……そのことで頭がいっぱいですう」

 優が掠れ声で言う。


「復讐すると考えれば……復讐すれば、報われるのか?」

 虚ろな口調で問いかけるカケラ。


「どうしてそんなことを私に?」

「綿禍が……俺の姉が、復讐なんてやめろとうるさい。俺まで死んだらどうするのかと。俺も……自分の気持ちの整理がつかなくなってしまった。相沢真を知っているか? あいつに電話して話したら、復讐は馬鹿のすることだと、軽々しく切り捨てられたし」


 自分と同じだと、優はカケラの話を聞いて思う。


「私は……今は……復讐のことしか考えられませえん。その先のこととか、周囲とか、保身とか、考えられないですぅ」

「お前もか。俺もだ」


 優の言葉を聞いて、カケラは何故か落ち着いてしまった。


「似たような境遇だから……同じなんじゃないかと思って、ただ……似たような誰かと話がしたくて、それで声をかけた迷惑だったかな?」

「いいえ。私も何だか少し落ち着きましたあ」


 カケラが眉をひそめて伺うと、優は微笑んだ。


「お互い頑張って復讐しましょう」

「ああ……」


 優が口にした台詞がおかしくて、カケラも微笑を零した。


***


 何とか逃げて生き延びた民主主義をリザレクションさせる会の残党と、デビルは接触する。


(わりと生き延びてる……と言いたい所だけど……)


 デビルは顎に手を当て、思案した。


「どう見ても……これだけでは駒不足」


 ポケットの中から、純子から貰ってきた薬品を取り出す。何十人分もある。


「君達、家族はいる?」


 虚ろな顔つきの民主主義をリザレクションさせる会のメンバーを見渡し、デビルが尋ねた。


「妻と娘二人と母……」

「実家でカーチャンと二人暮らし……」

「新婚ほやほやだけど来週離婚調停に……」

「五年前に離婚したけど息子が……」

「ミズオがいる。俺がこの世で唯一愛する存在。ミズカマキリのミズオがっ」


 それぞれが答える。


 デビルが手にした薬を彼等の前に差し出す。


「家族にこの二種類の薬をうって、連れてきて。一つは君達のように怪物にする薬。もう一つは薬をうった人に従わせる薬。ただし、子供にはどちらも使うな。子供は連れて来なくていい」


 デビルは相手が子供だろうと何の迷いも殺す。赤ん坊ですら容赦が無い。しかし凡美が嫌がるだろうと気遣い、やめさせた。


「ミズオは? ミズオはどうするのだ? 俺の可愛いミズオ……ミズカマキリのミズオは……?」

「ミズオも薬をうって連れてきて」


 メンバーの一人が尋ねたので、デビルは投げ槍に答えた。


「明日の朝までに済ませて。明日の朝、僕が指定する場所に来て」


 薬を配りながら、デビルは告げた。

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