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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
95 祭りの前に遊ぼう
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18

「この前ぶりだね。カワセミ使いとその他二名」

 来夢が凡美、勤一、一華を見て声をかける。


「おー、昨日のあいつらか。あん時はあたしの足を潰してくれたっけ。ここであったが百年目……って、この台詞言ってみたかったー」


 一華が明るい笑顔で話しながら、掌の中からカワセミを生み出していく。


「運命って言葉、嫌でも信じさせるように、運命が私達を弄んでいるの?」


 美香と向かい合い、凡美は不快感を露わにして、誰とはなしに問いかける。


「そんな意識しなくていいよ、凡美さん」

 勤一が窘める。


「PO対策機構とサイキック・オフェンダー。そういう間柄なんだから、強く意識しなくてもいい。何度もぶつかる宿命ってね」

「もう何度も相手したくはないぜー」


 勤一の言葉が聞こえて、二号が苦笑いを浮かべる。


「そうだな! ここで終わらせてやろう!」


 威勢よく叫ぶ美香を、勤一がじっと見据える。


(今日の勤一君、随分と静かね。どっしり構えている感もあるし)


 隣にいる勤一を見て、凡美は思う。


「月那美香、お前に以前言われたこと、よく思いだすよ」

「何をだ!?」

「パズルのピースが一つ欠ければ、あるいは歪んでいれば、お前もこっち側になっていたかもしれないって話だ」


 勤一の言葉を聞き、美香は神妙な表情になる。


「俺達も……もう少し早く、何かと巡り合えれば、今とは違ったかもしれない」

「迷っているのか!? 改心するなら今からでも遅くないぞ!」

「迷ってもいないし、悔いてもいないぜ。ただ……」


 美香の呼びかけに、勤一は笑みを浮かべる。


「お前は敵だけど、不思議とお前に対しての嫌悪感は無くなった。それだけの話だ」


 勤一が清々しい笑顔でそう言うと、その笑顔が厳つい顔へと変わっていく。肌の色も青黒くなり、全身の筋肉が盛り上がっていく。


「夜ですが、鳥目ということは無いんですか?」

 浜谷が一華の方を見て確認する。


「このカワセミは特別性だからヘーキ。それより貴方達の方が心配よ」

 と、一華。


「俺は夜目が利くし、そもそも街灯もついてるし、問題無いだろ」


 勤一が言い、敵の只中めがけて単身駆け出した。


 勤一の動きを合図としたかのように、転烙ガーディアンの能力者達が一斉に遠隔攻撃を開始する。


 淡く光る巨大泡玉が、一華のカワセミ群が、漆黒の槍が、大量の五円玉がくっついて出来たブーメランが、凡美の棘付き鉄球が、おたまが、水流が、一斉に飛来する。


 来夢が重力壁を作。飛来した攻撃のほとんどが地面へと落下した。しかし淡く光る巨大泡玉と凡美の棘付き鉄球は、重力場の影響を受けずに飛び続ける。そしてカワセミ達は地面から伸びる重力ゾーンが見えるかのように、寸前で止まってホバリングしている。


「あの泡がヤバそう。多分ヴィジョンなだけで、物理的なものではない」


 来夢が警告する。


「ふにゃーっ!」


 七号が叫ぶと、棘付き鉄球が暴風によって吹き飛ばされたが、巨大泡玉は依然として飛び続けている。


(状態異常のハメ系能力っぽいか?)


 克彦がそう思いつつ、黒手を伸ばして泡玉を絡めとろうとする。

 その瞬間、泡玉が破裂した。そして黒手が液体まみれになったかと思うと、どんどん腐食されていく。


「泡は物理的じゃなくても、攻撃そのものが物理作用起こしてるぞ……」


 予想と違って効果を見て、呆れ気味に呟く克彦。何にせよ、黒手によって攻撃は無効化した。


 単身向かってくる勤一の前には、怜奈と十一号が向かう。


「ブルー・ハシビロ子、推参!」

「ピンクジャージ! ジャージ戦隊ジャジレンジャー」

「またこいつらか」


 コスプレまがいの格好をした二人を見て、勤一が溜息をつく。


「また、またって言われた」

 十一号がぼそりと呟く。


 怜奈と十一号の後方から、来夢の重力壁前から反転して飛んできたカワセミ数匹が襲いかかる。


「か、カワセミ如きがハシビロコウにかなうとでもっ、思って、るんです、かあっ」


 狼狽えながらも強がり、怜奈がカワセミめがけて腕を振るう。


 カワセミは巧みに怜奈の攻撃を回避し、怜奈に鋭い嘴の一撃を見舞わんとする。


「ハシビロ魔眼!」


 怜奈のヘルムの目が光ったかと思うと、カワセミのうちの二匹の動きが硬直し、地面へと落下した。地面に落ちたカワセミ二匹を、怜奈は容赦なく踏み潰す。


 怜奈がカワセミの群れを相手している間に、十一号は勤一との交戦を開始していた。


「どっちもヤバそうだよ」

「マリエはそっちに手出ししないで。敵が固まっているあっちを頼むよ。向こうも遠距離攻撃系の能力者ばかりみたいだし」


 マリエが石像を作って支援しようとしたが、来夢が制した。


 代わりに美香とエンジェルが銃を撃ち、怜奈の支援を行う。カワセミのうちの一匹を仕留め、他のカワセミもエンジェルの銃撃を気にして、怜奈への攻撃が緩む。


「うおっ!?」


 十一号と格闘していた勤一が、驚きの声をあげて慌てて横に跳んだ。

 側にあった街路樹の枝が一斉に伸び、勤一を突き刺さんとしてきたのだ。


「またそれか」


 以前も同じ攻撃を仕掛けられた勤一だが、あの時と違って避ける事が出来た。


「ちっ、惜しい」

 勤一を攻撃した二号が、舌打ちする。


「ピンクバズーカ!」


 体勢が崩れた勤一に、十一号が正拳突きを放つ。勤一はその一撃を避けられずに食らい、後方に大きくのけぞって転倒した。


 珍しく勤一が劣勢になる場面を目の当たりにして、凡美が大きく腕を振り、棘付き鉄球を十一号めがけてスイングさせる。


 十一号は難なく避けたつもりだったが、十一号に迫ったその時、鉄球の棘が大きく伸びたうえに、棘から刃へと変形する。


「またこの何でもあり鉄球……」


 忌々しげに吐き捨てる十一号。際どい所で回避しきったが、すぐにまた違う形で襲ってくると思われる。


 しかし凡美の棘付き鉄球が襲うより前に、転烙ガーディアンの能力者達による一斉遠隔攻撃が、十一号と怜奈を襲った。二人は慌てて退避する。


 それらの遠隔攻撃は、近くにいる勤一に攻撃が当たらないように気遣っているので、先程よりかは攻撃が薄めだった。


「おーい、おっさんは何もしないのー? 一応隊長なんでしょー。それとも現場監督だったっけ? あ、隊長だから指揮に徹するとか?」


 一華が浜谷に声をかける。


「私は闘争心が高まるのを待っています。その方が私の能力の効果が高まるのでね」


 不敵に笑いながら言う浜谷。


「ああ、でもそろそろいいでしょう。では……いくぞっ!」


 浜谷が気合いの入った声をあげると、白く光輝く小さな矢が浜谷の顔の前に三本現れ、PO対策機構陣営めがけて放たれた。

 矢は真っすぐではなく、大きく放物線を描いて、最前線で戦っていた十一号と怜奈に降り注ぐ。十一号と怜奈はそれぞれ一本ずつ回避し、避けられた矢は地面に刺さって消えた。


 残った一本が、怜奈に刺さる。


「や、やられ……まし……た……」

 怜奈の意識が急速に失われ、その場に崩れ落ちた。


「怜奈っ!」

「ぐーすかぴー」


 克彦が叫ぶ。怜奈はいびきをかいて、涎を地面に垂らした。


「寝ている!?」

「寝てるだけかな?」


 訝る美香と来夢。


「見ましたか! 闘争心や殺意を眠気に変える眠りの矢、それが私の能力!」

「何でこのおっさん自分の能力バラしてるの? まあ、当たれば眠るってことは見りゃわかるけど」


 得意げに叫ぶ浜谷の横で、一華が呆れていた。


「だったら闘争心も殺意も抱かず、氷の心で戦えばいいんだようっ。はあああああああっ! 悟りモード! さあ、かかってこーい!」


 二号が亜空間の中からわざわざ姿を出して、威勢よく挑発する。


「その挑戦、受けて立ちましょう!」


 浜谷がてかてかの笑顔で高らかに叫ぶと、白く光輝く小さな矢を三本生み出し、二号めがけて撃った。


「ずげばばばば、ぶごごごごご」


 三本の矢を食らい、あっという間に爆睡する二号。


「かつて聞いたことも無い酷いいびきだにゃー」

「悟りモードとは一体?」


 呆れる七号と来夢。


「しかし……こいつら手強いぞ!」

「原山勤一と山駄凡美だけでも相当厄介ですのに、あのカワセミ使いと眠りの矢を撃つ奴が、負けず劣らず危険です」


 美香と十三号が言う。


「支援として遊軍をこちらに動員させて欲しい所だ! 要請してみる!」


 美香が電話をかける。


「すぐに返事が来た! 援軍を送るとのことだ!」

「真達が近いから、真達がぜんまいを巻くよ」


 美香の報告を聞き、来夢が言う。


「あたしはまだ動かなくていいのかい?」

「準備できてるならやって」


 伺うマリエに、来夢が促した。


「ほいきた」

 マリエが能力を発動させる。


「うわっ! 何か出た!?」

「石像?」

「これ、私の顔してる!? ちょっと不細工じゃない!?」


 転烙ガーディアン陣営の中に、突然数体の石像が出現し、どよめく転烙ガーディアン陣営。しかもそれらの石像は、近くにいた転烙ガーディアンの姿がそのまま石像となったものだった。


「うわああああっ! 跳びはねた!」

「うわあああああっ! 襲ってきた!」

「うわああああああっ! 押し潰された!」

「うわああああああああっ! 潰されながら潰されたこと叫んで報告してる奴がいたけど、再生能力持ちだったから死んでなかった!」


 一時的に混乱が生じた転烙ガーディアン陣営であったが、凡美がビームを吐いて石像の一つを破壊した事を皮切りに、転烙ガーディアンの能力者達は気を取り直し、石像の処理に当たる。


 そうこうしているうちに、真、熱次郎、ツグミ、牛村姉妹が到着した。


「もう来た」

「早かったな!」


 真達の方を見て、来夢と美香が笑みを零す。


「そっちは持ち場を離れてもよかったのか!?」

「近かったし、こっちには大した数が来なくて、撃退して手が空いていた。そもそも持ち場にこだわる必要も無い」


 美香に問われ、真が答えながら銃を抜いた。

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