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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
95 祭りの前に遊ぼう
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 11:30。転烙市のとある繁華街。

 六日後に転烙市の複数個所で行われる祭りのため。各駅前の繁華街で祭りの準備が行われている。そして陽動班は転烙ガーディアンの気を引き付けるために、その祭り会場を一斉に破壊するために、各地で配置についている。


『眠い……。何で私まで……』

 桜の持つバスケットの中から、ミルクがぼやく。


「猫は夜行性でしょ」

『違うぞ。薄明薄暮性といって、夕方とか明け方に活発になるんだ』


 桜の言葉をミルクが否定する。


「言われてみれば、夕方特にうるさいな」

『うるさいとは何だっ。バイパーのくせに口の利き方がなってないぞ』

「バイパーさんはいつもこんもんでしょ……


 バイバーの言葉に、ミルクが声を荒げ、桜が突っ込んだ。


「ていうかさ、ミルクは破壊力あるから、塔攻略班がよかったのにね。塔ごと壊せばいいんだし」


 桜が言う。


『破壊力って……。あんなデカい建造物を根こそぎ破壊したら、どんな被害出るかわからんですよ。ピンポイントでシステムの破壊をする作戦だ。ま、私でもよかったんだけど、表舞台には出たくないから、こっちでいいわ』


 と、ミルク。


「根こそぎ破壊するのであれば、調査も不要という道理。何より、いくらマイマスターでも、あの巨大な塔を破壊するのは無理と推測」


 つくしがもっともなことを口にする。


『調査結果で、システム中枢らしきポイントを二ヵ所ほど判明したが、例えそいつを破壊しても、赤猫の暗示を解くのは一時的なものに限られるらしい。すぐにサブシステムが機能して、赤猫は復活する。しかしその一瞬の間に外部に情報を送るという寸法だ』


 ミルクが改めて作戦の概要を伝えた。


「でもさあ、赤猫の電波って世界中に作用しちゃってるの? 転烙市から出ても有効なんでしょ? 外部への情報だそうとすると、赤猫が頭の中に出てきて妨害するってさ」


 桜が疑問をぶつけた。


『おそらくそうだろう。精神世界に直接作用するものかとも思ったが、それなら、あんなバカ高い塔を幾つも建てる必要は無い。物理的作用の電波が精神に暗示をかけ、影響を及ぼす。超常の力の類でもないし、無意識化に浸蝕してくるから、抵抗レジスト解除ディスペルもできやしない』

「グラス・デューにあった、あの高い塔と同じデザインである事に、意味はあるのか?」


 ミルクが桜の疑問に対して推測も込みで答えると、今度はバイパーが疑問を口にした。


『それは謎だ。そもそもこの転烙市の環境自体、色々とグラス・デューに寄せてある。その意味もよくわからん。推測できる事と言えば、グラス・デューの最上級知的生命――根人が適応しやすいようにしているのか。あるいは根人のテクノロジーをそのまま持ってきたから、そうなっているのかだ』


 ミルクの話を聞いて、バイパーは後者の方が正解ではないかと思えた。


***


 11:50。赤猫電波発信管理塔前。

 本命であるこの場所には、優、竜二郎、鋭一、冴子、岸夫、卓磨他の殺人倶楽部の面々と、グリムペニストップ勢の史愉とチロンと男治、そして弱者盾パワー委員会会長の澤村が配属されている。PO対策機構の強者を集結させた超精鋭部隊と言える。


「いよいよじゃが、うちらは零時になって、いきなり動く――わけではないんじゃったな」


 チロンが確認する。


「タイミングが大事ですね。陽動班が適度に掻き回して、転落ガーディアンが各地の祭り会場に出動した時点で行動開始となっていますが、状況次第によっては少し早めに動く場合もあり、遅くなるかもしれないとのことですから」

「あたし達は指示に従うだけだし、考えることじゃないぞ。ぐっぴゅっぴゅっ」


 澤村と史愉が言った。陽動部隊全ての状況を見たうえで、新居が赤猫電波発信管理塔班に、行動開始の指示を出すことになっている。


「大任を引き受けることになっちゃうましたねえ。プレッシャーですう」

「毎度のことだが、全然プレッシャー感じているように見えないぞ」


 いつも通りの優に、鋭一が言った。


「優が不安そうにしているのって、仲間のピンチの時くらいだろ」


 と、卓磨。


「その際も冷静に頭働かせますしねー。頼れるリーダーさんですよー」

「そういうこと言われると、余計にプレッシャーに感じちゃうタイプなんですけどねえ。私」


 竜二郎の言葉を受け、優は肩を落とす。


「あの子の、見ただけで対象を消すというのは、凄い力ですよね~。この任務に選ばれた理由も納得ですよ」

「じゃがのー、あ奴の力と名は有名になってしまったから、対策も立てやすいうえに、居ると真っ先に狙われてしまうのよ」


 優を見て感心する男治の隣で、チロンが渋めの表情で言う。


「だから君達が身を張って守って、作戦を成功させるんだぞー。ぐぴゅう」

「俺達は元よりそのつもりだが、あんたもな」


 史愉の言葉に対し、鋭一が眼鏡を押し上げながら冷然と言い放った。


「私が破壊役という前提の方針でかからない方が、いいと思いますよう。出来る人がやればいいんじゃないかと」

「ワシもそう思うの。優だけが破壊できるわけではないのに、身を張って護る必要はあるまいよ」

「同感です。こちらの動きを一つに縛る必要はありません」


 優が主張すると、チロンと澤村が同意を示す。


「ふん……そうやって皆してあたしをいじめてばかりいればいいっスよ……。どこ行ってもあたしはこんな扱い……。あーあ、あたしもいっそうサイキック・オファンダーになろうかなー? 向こうの親玉が純子でなければ、そしてグリムペニスに所属して、好き放題予算毟り取って研究設備使い放題でなければ、あたしも出ていくんスけどねー。あーあ、あーあっ」


 急にいじけだす史愉の言動に、全員呆れて言葉を失くしていた。


***


 11:59。新居、犬飼、義久はホテルの一室で、固唾を呑んで、時間が訪れるのを待っていた。


 新居は複数のホログラフィー・ディスプレイに目を走らせている。全ての陽動部隊、遊軍、そして赤猫電波発信管理塔急襲部隊の様子が映し出されている。

 やがて新居の目が止まる。時計へと向けられる。決行時刻の零時まで、30秒を切った。


(いよいよか)


 口の中で呟く義久。隣にいる犬飼の視線が義久に向けられる。


(デビルはあくまで勇気狙いか。この作戦のことは知っていても、あまり興味は無いようだしな。あいつの自由が利けば――あいつを動かすことが出来たら、色々と面白くするプランもあったんだけどなあ)


 残念に思う犬飼。赤猫電波発信管理塔のシステム中枢の破壊の邪魔をするつもりは無いが、デビルを純子の元に直接送ってやりあわせるなどという、そんなプランも考えていた。

 犬飼はPO対策機構に真っ向から歯向かうつもりもない。優や岸夫が所属しているし、みどりもこちら側で関わっている。余計なことをしすぎれば、今の立場も失いかねないので、遊びをするなら、危害を及ばさない範囲に留めておくつもりでいる。


 そしてとうとう零時になる。


『陽動部隊、ミッション開始』

 新居がメールで指令を出した。

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