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マッドサイエンティストと遊ぼう!  作者: ニー太
91 超常犯罪組織と遊ぼう
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17

 一日経過し、ミルメコレオの晩餐会掃滅作戦結構日。時刻は午後八時。PO対策機構の選りすぐりの精鋭達が、ミルメコレオの晩餐会本拠地から300メートル程度の位置にある市民文化センターに集結している。


「夜の市民センターに集まるとはね。盲点になっているんだかいないんだか」


 同行取材のために市民センター内に入った高田義久は、PO対策機構の面々を見渡しながら呟く。知っている顔も多い。


「おっ、真もいるじゃないか。久しぶり」


 真の姿を見つけて、義久がにこやかに声をかけた。


「原山勤一に続いてこっちも同行取材か」

「ああ、取材許可は頂いたけど、こういう時、強そうな誰かにくっついていくのがセオリーなんだ。真、頼んでいいか?」

「ついていくるだけなら構わない。護る気は無いけど」


 義久の頼みを真は承諾しつつも突き放す。


「かなりの人数いるなあ」


 義久が周囲を見渡す。二階建ての文化センターの一階二階全ての部屋が、PO対策機構の兵士で埋まっていた。


「殺人倶楽部の奴等もいる。そしてグリムペニスのトップ勢も来てる。裏通りからも人員は出ているな。知らない奴が多いけど」

「ふむふむ」


 エントランスで会話を交わす真と義久を、隣の部屋から入口越しに見ている者がいた。


「真君も来ているんですねえ。ツグミさんも」

「星炭輝明と虹森修もいる」


 優と鋭一が言うと、修が殺人倶楽部の面々に気付いて、部屋からエントランスへと出てくる。輝明とふくも続く。


「やっ、おひさ」

「よう。善治は来てないのか?」

「別にあんな奴いらねーだろ。お前善治なんかと仲いいのかよ」


 修と鋭一が挨拶を交わし、輝明が憎まれ口を叩いた。


「殺人倶楽部は何人くらい連れてきたんだ?」

「ぴったり三十人よ」


 輝明が問い、冴子が答えた。


「経験の浅い人や、初陣の子もいる。毎回混じるんだけどね。毎回ここから脱落者が出るよ」

「新人さんは旧殺人倶楽部以降に組織に入った人達ですねー」


 卓磨と竜二郎が言った。


「そっちの子は?」

 鋭一がふくを見て尋ねた。


「輝明の彼女のふくよ。よろしく」

「違えっ!」


 笑顔で自己紹介するふくに、輝明が叫んで否定する。


「十歳かそこらに見えるんだけど……」

「犯罪だろ……」

「まあ輝明君も見た目は小学生っぽいから、お揃いじゃないですかあ?」


 冴子、鋭一が引き気味になり、優は見た目で問題としなかった。


「ふく~っ! 何でこんな所に来てるんですかあ~っ!?」

 男治が現れ、人ごみをかき分けて服に迫る。


「げっ……あんたこそ何でここにいるのよっ」

 男治を見て、ふくが顔をしかめてのけぞる。


「ああああ、久しぶりのふくぅ~っ、もっと頻繁に私の所に顔見せに来なくちゃ駄目でしょ~っ」


 喜悦の表情で、力いっぱいふくを抱きしめる男治。


「ちょっと……抱き着かないでっ。離れてっ。タスケテーッ! この人痴漢でロリコンでーす!」

「な、な、ななな何を言いますか~私は父親ですから~」


 ふくが悲鳴をあげるが、男治はそれでもふくに抱き着いたまま、周囲の者達に向かって弁解する。


「父親が娘に痴漢するロリコンとかヤバいよね?」

「そうではありませんっ!」


 岸夫の台詞を聞いて、さらに慌てて否定する男治。


「ぐっぴゅ。久しぶりだぞー、ツグミ」


 ツグミと上美とアンジェリーナの前に、史愉がやってきた。


「話には聞いていたけど、今日は男の子の格好なんだな」


 以前史愉はツグミと行動を共にしたことがあったが、その際は女の子の方のツグミだった。服装だけではなく、顔つきまで変わっているように見える。


「そうだね。シリアスな気分の時はこっちを出すようになったんだ。以前は朝起きた時に完全ランダムだったけどね」

「ふむむ~、中々面白いぞ。君の能力も面白いしけどね」


 マッドサイエンティスト視点で見ると、ツグミの能力はこのうえなく魅力的に映る。史愉としては是非とも研究し尽くしたい所だ。


 と、そこに新居が現れ、エントランス横にある受付エリアに入って、マイクを取る。


「おい、静かにしろ。聞け。悦楽の十三階段の新居だ。俺が指揮を執る」


 新居の宣言を受け、そこかしこで雑談を交わしていたPO対策機構の者達が、一斉に静まった。スピーカーで、二階にいる者達にも聞こえている。


「ニーニーが指揮かよ。銃のドンパチだけの戦争じゃないんだぜ? 超常の力が絡む戦闘の指揮なんか取れるのか?」


 わざと全員に聞こえるような声で、懐疑的な台詞を口にする輝明。


「PO対策機構を発足してからずーっと付き合ってきた身だが? 不安なチキンはとっとと帰れ。輝坊、見損なったぞ。お前はチキンだったな。ほら帰った帰った」

「ひでえなおい。俺は当然の疑問を口にしただけだろーがよ」


 新居の言葉を受けて、輝明が笑ながら言い返す。


「じゃー今から部隊分けと、作戦内容を説明するぞ。質問があったら受け付けるが、あまりもたもたしていられねー。敵も俺達が襲撃することくらいの情報は掴んでいるだろうし、きっと警戒している。奴等のアジトと目と鼻の先であるこの場所に、俺達が集結していることは、まだバレてはいないと思うが、時間が経つとそれも怪しい」


 新居がそこまで喋った所で、爆音と銃声が鳴り響いた。


「敵襲! 敵襲! ミルメコレオの晩餐会が攻めてきまし……ぐわあっ!」


 入口で叫んでいた警備兵が、報告した直後に撃たれて倒れた。


「超バレてるぞ」


 史愉が半眼になって呟く。建物の中に集まった者達が、一斉に臨戦態勢になる。


「やっぱりこの指揮官駄目くせーなーって、俺だけじゃなくて皆思い始めてるだろうぜ」

「やかましい! さっさと全員で迎え討て!」


 輝明がからかっていると、新居が怒鳴り声で命じる。


「もうね、いてもいなくてもいいような指揮官だな。そんな命令誰だって出来るだろ」

「あまり新居を見くびるな」


 なおも新居下げを行う輝明に、真が口を出した。


「見くびってねーよ。俺はニーニーのことずーっと昔から知ってるしよ」

「テルが冗談半分でからっているのはわかるけどね、他の連中は不安になるかもしれないよ」

「そうよ。そういうのはTPO弁えてやってよ」


 輝明が反論すると、修とふくが注意する。


「ケッ、皆で俺を叩きやがって。イジメだろ、これ。あー、もう帰りたくなってきたぜ」

「彼、いつもあんな風なの?」

「うん、わりといつも」


 不貞腐れる輝明を指してツグミが尋ねると、修は苦笑混じりに頷いた。


 ミルメコレオの晩餐会の能力者達が、市民センターの正面門から駐車場へとなだれこんできた。能力に頼らず、銃を撃ってきている者も多数いる。


 PO対策機構の兵士達は、市民センターの中から応戦する。一階入口、一階の窓、二階の窓などから、銃撃を浴びせていく。こちらは現時点では、銃による応戦の方が主流だ。

 しかし堂々と正面から突っ込んでくる者達は、頑健な肉体を持つ近接タイプの能力者ばかりだ。銃弾など最初から恐れていない。


 弾をはじき、あるいは傷ついてもすぐに再生し、そのまま建物の中まで三名ほどなだれ込んでくる。


 だが建物の入口の中に飛び込んできた瞬間、三人の姿が消えた。

 戦闘に身構えていたPO対策機構の兵士達が困惑する。姿を隠す能力かと疑う者も多数いる。


「え……? 消えた?」

「転移したのかな?」

「違う。優の消滅視線だ」


 突然姿を消した襲撃者三名を見て、修とツグミが呆然とするが、真が優を見て言った。


「噂には聞いていたけど、見るだけで人を消しちゃうとか、とんでもない力ね」

「ジャップ……」


 上美が怖そうに言い、アンジェリーナも両腕で自分の胸を抱く格好になって頷いた。


「優さんは温存しておいた方がいいよ」

 岸夫が隣にいる優に言う。


「わかってまあす。でも少し経てば力も回復するので、回復する時間も計算したうえで、初っ端に力を使ってみましたあ。ただただ温存して何もしていないのも勿体無いので」


 優がすぐさま力を使った理由を説明した。


「えー、消えたのは転移とか透明になったのではなく、こっちの能力でーす。お気になさらずー。消滅させる能力でーす」


 戸惑っている味方達を落ち着かせるために、竜二郎が声をあげる。


「しかし~、これだけの中に堂々と突っ込んでくるからには、今の三人は、自分の力に相当な自信がある人達だったんじゃないですかね~」

「あるいはおかしなクスリ打たれて、特攻だったのかしもれないぞー。爆弾抱えて特攻だった可能性もあるぞー。ぐぴゅ」


 男治と史愉が言う。


「史愉が言った可能性はあるな。そうなると、さっさと消した優の判断は正解とも言える」


 優ならそこまで瞬時に計算したかもしれないと、真は思った。

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