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好き

作者: 麻沙綺
掲載日:2014/04/07

 今、私は、大学の門の前に立っている。

 なぜかって?

 それは、彼に誘われたから・・・。



「香奈。来週の土日、大学祭があるから、遊びに来ないか?」

 って、彼、今林孝志が誘ってきた。

 私は。

「行く!絶対、行きたい!!」

 食い付き気味に答えていた。

 それを見ていた孝ちゃんが、クスクス笑ってる。

「うん。じゃあ、その日大学に着いたら連絡して。門まで迎えに行くから・・・」

 って・・・。


 なのに、何度電話してもでない・・・。

 どうしたらいいのか、わからずに門で佇む嵌めになってる。


 中学出たての高校生が、どうやっても大学の門を潜るには、勇気がいる。

 なんか、入ってはいけないような境界線があるみたいで・・・。




 私と孝ちゃんが出会ったのは、私が中学一年のとき。

 お兄ちゃんの部活の後輩だった孝ちゃんを家に連れてきた時だった。

 私は、この時に一目惚れしちゃたんだ。

 で、中学卒業の時にダメもとで、告白したんだ。

 孝ちゃんは、一瞬戸惑った顔をして。

「うん。今、付き合ってる人いないし・・・。いいよ」

 って、答えてくれました。

 その時は、物凄く嬉しくて、有頂天になってた。

 お互いに新生活を始めたので、慣れるまでは電話連絡しか出来なかったんだ。

 だからか、会うと胸が弾んで、嬉しくて仕方ない。

 でもね。

 孝ちゃんから見て、私って子供なんだろうなって・・・、最近思う。

 だからね。

 孝ちゃんに釣り合うようにって、大人っぽくしようと日々努力してるんだ。

 どうやったら、孝ちゃんが私を見てくれるかって、そればかりを考えてる。


「あれ?こんなところで、どうしたの?」

 見知らぬ男性二人が、目の前に立ってた。

「えっと・・・その・・・」

 言い淀んでる私に。

「あっ、この子知ってる。ちょっと待っててね」

 それだけ残して、走っていってしまう。

 ???

 暫くして。

「あれま。香奈子どうした?」

 とさっき走ってた人が、お兄ちゃんを連れてきた。

「どうしたと言われても・・・」

「ああ、そっか・・・。連絡したのか?」

 お兄ちゃんの言葉に頷く。

「じゃあ、何であいつは、来ないんだ?」

「電話に出ないから・・・」

 私の言葉に納得する。

「そっか・・・。じゃあ、連れてってやる・・・よ」

 お兄ちゃんの言葉が詰まる。

 私は、お兄ちゃんの視線を追った。

 その先には、孝ちゃんが女の人と腕を組んで歩いていた。

 エッ・・・。

 何で・・・。

 何で、孝ちゃんが、女の人と一緒に楽しそうに歩いてるの・・・。

 わかんない・・・。

 孝ちゃんの気持ちが、わからない・・・。

 私は、踵を返して走り出した。

「ちょっ・・・。香奈子。どこに・・・」

 お兄ちゃんの声が背後でする。

 でも、そんなのどうでもいい。

 孝ちゃんが、女の人と歩いてる事実だけで、胸が痛い。



 あーあ。

 やっぱり、孝ちゃんは、大人の女性が好きなんだ。

 もう、解放してあげよ。



 家の自室で私は、鞄から携帯を出して、メールすることにした。

 なぜ、メールかって?

 声を聞いたら、泣いちゃいそうだから・・・。


 “孝ちゃんへ

 今まで、私の我儘に付き合ってくれて、ありがとう。

 もう、別れよう。


 大好きだったよ 香奈子“


 そう打って、送信完了の画面を見てから電源を落とした。

 これで、いいよね。

 こんな、お子さまな私なんかよりも、大人の女性の方が、孝ちゃんに合ってるもん。

 だから・・・。

 私から、さよならしないとね。



 本当はわかってたの・・・。

 お子さまな私が、孝ちゃんに似合うなんて、全然思ってない。

 だけど、夢見てもいいよねって、思った。

 私にとっては、それぐらい大好きだった。


 私は、ベッドに横になり、枕に顔を埋めて、泣き続けた。





 目が覚めたら、朝だった。

 瞼が重たい。

 鏡を覗き見ると、目元が腫れていた。

 あーあ。

 ただでさえ、不細工なのに余計に不細工になってる。

 私は、のそのそと部屋を出ると、キッチンに行き、氷を袋に入れて、タオルでくるんで、目元を冷やした。



 何やってるんだろう・・・。

 あんなに楽しみにしてたのになぁ。

「香奈子・・・。大丈夫か?」

 そう声を掛けてきたのは、お兄ちゃんだった。

「うん。全然、平気だよ・・・」

 笑顔で言う。

「平気そうに見えないが・・・」

「エッ、そうかなぁ。私自身、全然大丈夫だから、お兄ちゃんも行っていいよ」

 お兄ちゃんの背中を押して玄関に向かう。

「じゃあ、行くけど。本当に大丈夫か?」

「お兄ちゃん。心配しすぎ。ほら、早く行かないと他の人に迷惑かけるんじゃないの?」

「ああ。うん、じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 お兄ちゃんを送りだして、自分の部屋に戻る。

 何もする気が起きなくて、再びベッドにダイブした。




 気付けば、窓の外が、夕焼けに染まっていた。

 いったい、何時間寝てたんだろう?

 ボーッとしてる頭で、携帯に触る。

 昨日から、電源を落としていたから、画面は真っ黒。

 その電源を入れて、立ち上がるのを待つ。

 淡く光る画面に不在者着信五十件、メール百件と表示される。

 そのすべてが、孝ちゃんから・・・。

 想像がつく。

 怒ってるかな。

 って考えていたら。

 truuu・・・truuu・・・。

 けたたましくなる、着信音。

 うわー。

 相手は、もちろん孝ちゃん。

 出るのを躊躇う。

 逃げても仕方がない。

「もしもし・・・」

『香奈。あのメール、何?』

 案の定、怒ってる。

「何って・・・。そのままの意味だけど」

 私は、冷静に答える。

 内心、ドキドキが止まらない。

『どういう事?って言うか電話じゃ埒が明かないから、今から行く。待ってろ』

 って、私の有無も関係なく電話が切れた。



 孝ちゃんが来る。

 正面切って、ちゃんと話せるのだろうか?

 いや。

 ちゃんと話すべきだよね。

 私の思ってることをちゃんと・・・。





 ピンポーン。

 電話を切ってから、三十分ぐらいたった頃、チャイムが鳴った。

 私は、自分の部屋からでて、玄関に向かう。

 玄関を出ると、鬼の形相の孝ちゃんが居た。

「上がらせてもらうよ」

 孝ちゃんが、ズカズカと玄関を潜る。

 私が玄関のドアを閉めると、抱きつかれた。

「ちょ・・・孝ちゃん。ここ、玄関だから・・・」

 私の言葉が聞こえてないみたいに腕の力が、込められる。

「何で、別れるなんて言うんだよ、香奈」

 へッ・・・。

 何でって・・・。

「オレの事、嫌いになったのか?」

 首を横に振る。

「じゃあ・・・」

 孝ちゃんが、不安そうに私を見つめてくる。

 そんな顔、始めてみた。

「ねぇ、孝ちゃん。取り合えず、私の部屋で話そう」

「う・・・うん」

 孝ちゃんをなんとか離して、自分の部屋に向かった。




 孝ちゃんがベッドに背を預けて座る。

 私は、その前に向かい合わせに座った。

「ねぇ、香奈。何で、別れるなんて思ったの?」

 孝ちゃんが、優しい声音で聞いてきた。

「・・・孝ちゃんには、不釣り合いだ・・・って、思ったから・・・」

「不釣り合いって、誰かに言われたの?」

 首を横に振る。

「じゃあ・・・」

「だって・・・。孝ちゃんから見たら、私なんか、全然お子様だし・・・。可愛いわけでもないし・・・。それに、孝ちゃんが、私の我儘に付き合ってくれてるだけだって、知ってるし・・・」

 私は、涙を堪えながら言う。

「何それ。それ、全部、香奈の思い過ごし・・・」

 孝ちゃんの言葉を遮るように。

「違う!昨日、見たもん!孝ちゃんが、綺麗な大人の女性と腕を組んで、歩いてるの・・・。凄くお似合いだなって、思ったもん。だから、私・・・孝ちゃんから、離れようって・・・。側に居ちゃダメだって・・・。こんな、お子様な私より、あの人の方が、孝ちゃんに相応しいって思ったん・・・だもん・・・」

 もう、ダメ!

 あんなに泣いたのに、また、涙が溢れてくる。頬を伝って、膝に置いていた手の甲に滴が溢れた。

 私は、孝ちゃんに顔を見られないように俯く。

「孝ちゃん・・・。私が告白したとき、戸惑ってたよね。そういう対象に見てもらえてないことも知ってる。だから、傷が浅いうちに・・・別れ・・・よ」

 私は、自分が思ってたことをすべて吐き出した。

「香奈の馬鹿!」

 孝ちゃんの怒鳴り声。

 私は、顔をあげた。

「だから、それは、香奈の勘違いだっていってるだろうが・・・」

 私の勘違い?

 孝ちゃんが、ゆっくりと話し出した。



 私が告白したときは、嬉しくて戸惑ったらしい・・・。

 孝ちゃんも、私の事を好きだったらしく、まさか告白されるとは思ってなくて、そっけなく答えてしまったらしい。

 それから、少しでも時間を作って、私に会えるようにしてたこと(これには、ビックリ)。

 私に会える時間を楽しみにしてたこと。

 色んな女性から、告白を受けるようになって、大学祭に私を呼んで、彼女持ちだと宣言したかったみたいだ。

それと、私が見た彼女は、同じ大学に通う従姉妹だとか。電話が鳴ったと同時に捕まって、校門までふざけて腕を組んでただけとか…。

「そんなのあり得ないよ。そのせいで、別れるって思ったんだからね」

それを口にしたら、

「ゴメン。それは、俺が悪かった。本当に反省してる」

って、謝ってくれた。


「孝ちゃん。あのね、私が隣に居たら、逆効果じゃない?」

「何で?」

「だって、私、お子様だよ。性格だって、子供っぽいんだよ。そんな私が、孝ちゃんの彼女だなんて・・・」

「お子様って・・・。香奈は、そのままでいいんだよ。オレのために背伸びしなくても・・・。オレが好きになったのは、そんな香奈子なんだから・・・」

 今、孝ちゃん、何気に“好き“って言った。

 孝ちゃんから、言われたの初めてかも・・・。

 今まで、私が一方的に好きなのかって思ってた。

「香奈、どうした?」

 急に黙り込んだ私を心配そうに覗き込んできた。

「孝ちゃん。私の事好き?」

 私は、改めて聞いてみた。

「好きだよ。香奈子」

 真顔で、でも顔を赤くしてる。

 可愛い・・・。

「香奈。もう一人で不安になるな。ちゃんとオレに話せよ」

 孝ちゃんに抱き締められる。

「うん・・・」

 孝ちゃんの腕の中で、私は、素直に頷いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 後半部分を読み返させていただきました。 説明のあるなしで、全然違う読後感! スッキリしました(^_^)v
[気になる点] 腕組んで歩いてた女のことは、どうなった。
[一言] アレ?彼の浮気疑惑はどこにいったのですか? 他の女性と腕を組んでいたことはスルーでハッピーエンド? 何か釈然としない終わりかたでした。
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