第参話(第3話)
現代
朝からニュースは騒がしい。少し静かにしてくれないかな。
「私達のことだろうが。」
怒られた。
「だいぶ遅いな。少し移動するか。」
暗い路地裏。
否、無駄を削ぎ落とした近代都市にそんなものはない。
もちろん廃墟もだ。
目立ちたくないなら、一般人と同じように歩き続けるしかない。
いつ政府の人型超異常生物関連特別部隊(略称:鬼払い)が来るかわからないし。
御大層な名前。
どうせそんな正式名で呼ぶ人なんかいないのにね。
結局、17時を廻っても来なかった。
他に逃げれるところはないのかと聞くと、彼女は答えた。
「私は知らない。国外に逃げるという選択肢はないのだろう?」
結局、国外にいくなら同じではないのだろうか?
「国外追放と言っても、研究生物を売るといった感じだな。鬼に差別的な国になるだろうし、そこに自由はない。」
なるほど。
「どちらにせよ、国外には出ないつもりなんだろう?」
三花は普通に国外に逃げたかったのだろうか。
「私に唯一の親友をなくせと言うのか?」
うにゃ。
そのとき
鬼払いが近くの建物の裏に『見えた』。
彼女も気づき、駆け出す。
こっそりなんて言ってる暇はない。
鬼は生まれたときに認証チップが埋め込まれるらしい。
隠してるからよくわからないけど。
彼らにはそのチップの場所が分かる。
とっても困るんですよ?(Vピース)
「ふざけている場合か!?」
鮮やかに平手の一閃。
「ふにぃぃぃ!?」
いつの間にか迷ってしまった。
映画のセットなのか、今では珍しい鉄筋コンクリのマンションの建ちならぶ場所だ。
道は暗く何も見えない。
暗闇。
その場にしゃがみこむ。
「大丈夫だ。」
彼女は言う。
私の震えは消える。
落ち着こう。
彼らは振り切れたのか?
「他の奴らが来る可能性もある。どちらにせよここらで休憩するか。」
彼女も座る。
お互い、通路の反対を見張る。
さあ、休憩だ!
「・・・・10分な。」
酷い。
いきなり、二人同時に肩を叩かれる。
「悪いね、遅れた。」
「○※〒*☆?!」
心臓がバンするかと思った。
小柄な少年が二人の間に立っていた。
何で三花は動じないのだろう・・・。
気づいたら、男が一人目の前に立っていた。
「脅かすなといったはずだが。」
いつからいたの!?と本日二回目の心臓スプラッシュを起こす。
「遅れてすまなかった。
想定外だったな、この人数は。
俺は次の奴らを迎えに行く。
そいつに任せるのは不安だが・・・。
とりあえず頼んだ。」
そう言って男は消えた。 消えた!?
「気にしない。」
「なあ、さっきのって、俺、信用されてないって事かな。」
きっぱりと斬る三花に慌てる少年。
「ま、いいや。」
いいのか。
「んじゃ、行くぜ〜。舌噛むなよ!」
はいっ!?
いきなり三人揃って、上空千メートルへ移動した。
少年は楽しそうに笑っている。
そこから立て続けに移動していく。
ああ。
やっとわかった。
黒壁港。体で空間移動を起こせるという鬼。
ううむ。
結構いいな。これ。
その認識はたった数秒で崩れる事となった。
「酔った・・・・。」
青い顔になってきたところで目的地に到着。
もう、動きたくありません。
・・・・死んじゃう・・・。
「死にはしない。」
三花は平気。
「普通、こんな荒い空間移動は耐えられないぞ。ちょっとは加減しろよ、港。」
じゃあ何で三花は大丈夫なの?
「そもそも私は空間移動自体初めてだってのに。」
どういう身体構造?
というかいつも定期転送装置使ってなかったっけ?
「勝手にそう考えてただけだな。私は使ったことはない。」
「そろそろ行っていいか?」
うん、だいぶましになった。
改めて周り見てみると結構、昔の都市っぽかった。
でも映画用って感じでもない。
えと・・・歴史保存地?
「だいたい正解。二十世紀のぐらいの文化だろうな。」
言葉に出さなくていい分、三花との会話は楽。
街ごと文化を保存する街。
初めて見た。
「おお・・・。」
少し感動。
ポチッ
・・・・ポチッ?
「確かエレベーターっつう乗り物。地下に行くぞ。」
建物の機械いじりながら港が言う。
・・・・・少しは見させて。