序章 転生準備2 剣の師匠
※R18外しの為、2重投稿です
転生準備の2番目です。
ある理由で修行を義務付けられますが、今回はその理由付けは内緒です。
もう少し修行が続きます。
修行の日々は突然に始まる。
死から覚めたときに着ていた衣服は、回収され、前で合わせる方式の簡単な上着、すそと腰で絞る簡素なズボン、動きやすく軽く脛の半ばで覆われる、柔らかい皮のブーツ。
目の前には剣と言われた男が立ち、こちらを見据える。剣の服装も、俺と似たようなものだが、色が全体に黒い。相変わらず、白い仮面で、表情は覆われ、どんな顔をしているのかまるでわからない。不思議なことに、目の位置に穴はない、それでも視線がこちらに向かっているのを明確に感じる。
「さて、大神よ、主よりお前に武の大筋を身につけよと指示されている。この世界は異界と異界の間の世界。狭間の空間だ。ここでは時間は意味をもたず。時間による、疲労も睡眠ももたらさない。ある意味恵まれた空間とも言えるし、地獄のような世界とも言える。お前がこの狭間より、主のもとに帰るかどうかはお前の努力次第だ。最初に大事なアドバイスをしておこう。現世での常識はここでは無意味だ。お前の経験など、なにほどの足しにもならない。ただ素直に勤勉に修行をつめ、お前の魂は現世のころより強化されている。学ぶ意識をもてば、ここでは大きな物を得ることができるだろう・・・。」
「剣さん、でいいのかな?体力が続くということはひたすらに練習をつめ・・・そういうことなのか?休みなしで動き続けるというのは経験はないが、相当に応えるものじゃないのかな?」
「大神よ、ただ剣と呼ぶがいい、お前の疑問はもっともだが、俺の言葉を信じよ、信じねば何もなせぬ。特にこの狭間の世界では。最初に剣の方を学ぶのだ。長剣、両手剣、曲刀、短剣、太刀、2刀の術、それが済めば、体術を。そうだな、後は体術に関連するが、より素早く、より長時間動くための仙術の初歩も授けよう。では最初に長剣を持つがいい。」
剣はどこからか長剣を二振り取り出して、ひとつを俺に。ひとつを自分の手に携える。
よくあるファンタジーの初期装備の剣。柄の部分が、約20センチ、十字鍔をもち、刃渡りは約90センチほどだろうか、想像していたものよりも、刃の刀身は薄く、重量と刃の切れ味で打ち抜く。そういった武器に見える。
「大神よ、基本から学んでもらうが、ひとつだけそなたには優位な点がある。そなたの特殊な視力により、俺の攻撃の着地点が、ある程度は見ることができる。それとこの空間の効果により、疲労せずに剣を振り続けることもできる。あとはここでは死なない。それが一番重要なことだな。ただし、死に値する攻撃を受ければ、劇的な痛みがお前を襲うだろう。まずは基本の握り方、剣での振りの型、防御の仕方。それらを身につけよ。」
剣は自ら剣を振るい、構え。同じ形をできるまで繰り返させる。時間の感覚がなくなる。空腹もなく、睡魔も襲わない、通常よりも筋がいいのか悪いのか、ひたすらに動きを繰り返す。
どれくらいの時間がたったのかはわからないが、剣の振る音が鋭く、強くなったと思える頃、剣が手を上げる。俺から少し距離を取り、相対する。
「さて長剣の基礎はここまでだが、これから実技に入る、今のお前にできるのは、そうだな演舞と言われるものが人並みにこなせる程度だ。人を切るには慣れるしかないが、中々に覚悟が決まらない。少しばかり荒療治になるが。」
「剣、何を言いたいんだ?要点をはっきり言え。」
「良いだろう大神よ、まずは死に続けろ、いくぞ!」
「え!!なんだと?」
距離をつめる剣、水平に首元に迫る長剣、首を狙ってるのは事前に見えた。これが視力の効果か?辛うじて剣をあわせる。がっしり受け止め、押し返す。と思ったのもつかの間、剣の手元から力が抜け、俺の剣が下方に流される。その剣にそって、下から跳ね上がる長剣。
ズブ!!ザシュッ!!
脇の下から横に真一文字に振り切られる。背骨を残して、内蔵が切りつけられる痛み。絶望的なまでの悪寒が体の中を走り抜ける・・・・・・。
(死んだ、また死んだ、力が抜ける。)
ひざをつき、長剣を落とした俺の前で、剣は無造作に俺を蹴り上げる。
「何をしている、大神よ。お前は死んでない。ここでは死ねぬのだ、続けるぞ、構えよ」
「何だと?あれ?血も出てない。傷もない・・・」
「大神よ、何も聞いてないのだな、まあいい続けるぞ。」
手を変え、武器を変え、あらゆる状況で剣と俺は戦い続けた。ひたすらに殺され、殺し返す。血が出て、腸が出たら発狂しそうな状況だが、ある意味3Dのゲームのような感覚で、ひたすらに戦い続けた。
剣という剣で同じように戦い、時にはどういう仕組みかわからないが、多数の剣を相手にすることもあった。槍や、斧、矛などでも戦ったが、相性がよかったのが剣であり。中でも攻撃と防御の手数をおぎなうため、右手に長剣、左手にやや剃り身の片刃の剣をもち、2刀で戦う技術を身につけていた。およそ勝率が5割を超えたころ、次の修行に移ると告げられる。
「大神よ、良くがんばったな。この世界であればこそではあるが、並大抵の期間ではない。飽きずに続いたものだ。武器での戦闘技術は、おおむね良いだろう。ここまで修行をさせるにも理由がある。いずれ主より理由が告げられようが、それまではこのままに勤勉に修行するのだ。次は体術と簡単な仙術を身につけてもらう。体術に関しては、基本は短い武器をもつイメージで打撃の術を、あとは身のこなしだな。武器に比べれば、それほど長い時間をかけるつもりはないが、仙術に関しては、打撃力を増す技術と、武器そのものにお前の意思をまとわせる方法、防御に関しても防御力をあげる術を身につけてもらう。これにより、お前は1ランク上の戦闘技術を身につけることになる。武器に意思をまとわせる技術以外は徒手空拳にて修行を行うが、ある程度時間はかかる。そう思ってくれ。」
剣は俺から武器を取り上げ、自らも徒手空拳にて構える。
「まずは見て学び、攻撃をうけることによって、技術を身につけよ。」
猛然と襲い掛かる剣。殴られ、蹴られ、投げ飛ばされ、間接を折られる。
首を蹴りこまれ、頚椎、背骨を折られる。素手でも何度も死に近いダメージをくらい、生き返る。
ひたすらに死に続け、なんとか応酬ができるようになると、今度は剣が、武器を持ち、素手の俺に襲い掛かる。構えた、腕を切り飛ばされ、足を切られ、胴を凪ぎ切られ。ようやくに機先を制し、懐に入り込めるようになる。
「いいだろう、大神よ。それでは基本の仙術の修行に入る。」
剣は今度はこまやかに、立ち方、意識の持ち方、呼吸法、仙術による気の用法について指導してくれた。毎日が同じことの繰り返し、意識せずに常に強化を行うレベルまで、何度も何度も繰り返し繰り返し。どれくらいの時間が立ったのかわからないが、体の動きが一段良くなったころ、修行の終わりを告げられる。
劇的な変化ではないが、体の切れがよくなり、意識の集中力も以前よりも高まったように感じる、ここでは疲労は感じないが、剣の話だと、疲労の回復量も大幅に改善していると告げられた。
「大神よ、お前にはわかるまいが、おおよそ10年の時間を俺とお前は過ごした。少しでも身につけた技術を活用してくれると嬉しい。お前の知らぬことだが、お前のように特殊な技術を身につけたものは皆無ではないだろう。だがここで学んだことがいずれ大きな功績をお前にもたらすであろうことを俺は確信している。よく頑張ったな。俺の修行は終わりだ、次は弓がお前を導こう。お前の修行はまだまだ続く。励むがいい。俺が去った後、弓がくるのを待て。さらばだ。」
剣の姿が消え、にじみ出るように弓が姿を現した。これからが第2の修行らしい。
ようやく第1の修行が終わり、第2の修行に入ります。
予定では、第2、第3の修行は駆け足で・・・の
つもりですが、どうなることか