序章
グロテスクな表現が後々出てきますので苦手な方はご遠慮くださいませ。
どうやら私には霊感とやらがないらしい。
だから続けられたのだろうか?
今から5年程前。私は小さな葬儀屋で湯灌と納棺をしていた。
死者を素手で沐浴させ、真っ白な死に装束を着せて柩に納めるという仕事だ。
当時は今程にこの職業は認知されておらず、私は自分の職業を葬儀関係の仕事と曖昧に答えていた。
死んだ人間を洗う。
この職種に接する機会が無かった人はこんなイメージを持たないだろうか?
裏仕事のような。
そう、例えばホルマリン漬けとか。
私自身も入社前まではそういったイメージが強かったものだ。
それ故に他人にこの仕事をしているとは言い難かった。
私はどう思われてもあまり気にしない人間なのだが、話した相手に気を使われるのがひどく面倒だったからだ。
どうしてこのような仕事をする事になったのか。
理由はいくつかある。
20代前半という若さで結婚し子供も産まれ、私の人生プランは順調だった。
けれど、計画通りにいかないのもまた人生である。
当時24歳だった夫に悪性腫瘍が見つかったのである。
誰が予想したであろうか。
24歳という若さでガンが見つかろうとは。