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雨の日はカタツムリが多い

作者: いばらうに
掲載日:2026/06/12

かたつむり


晴れ間が続く初夏であったが今日はそうではないらしい、庭の紫陽花は綺麗な雨化粧がなされており心なしか嬉しそうに映った。



「うん、洗濯しなくて正解だったなこれは」


軒下で庭を眺めていた


「よっこらせっ」


立ち上がり麦茶を入れに台所へと向かう



台所では母さんが夕ご飯の準備をしており、視線はそのままに質問を投げかけてくる


「雨はどんな感じ?」


「強くはないけどまだ降るだろうね」


ジョロロ 冷蔵庫を開けて麦茶を注ぐ。


「今日のご飯なに?」


「肉じゃがよ、あんた好きでしょ」


「うん、じゃあ待ってる」


麦茶を持って居間へ足を向ける


居間には誰も居ない。


「独り占めだな」


扇風機の前を陣取りつつジャ◯プを探す


「あったあった。ってこれ先週号じゃねぇか、まち子に任せたのは間違いだったな」


先日妹のまち子に買っておくよう言ったジャンプは用意されていなかった


「まったく、この雨の中買いに行くのかよ。」


悪態を吐きつつ、長靴も履く。そういう男、雨宮小雨(あめみやこさめ)はまるで梅雨にでも愛されたかのような名であった


「母さん、ちょっとコンビニ行ってくるね」


「何しに?」


「ジャ◯プ買いに」


「そう、早く帰ってきなさいよ」


玄関から母さんに声をかけておく。これがないと叱られる


「よいしょっ いってきまーす」


雨の日に着る雨ガッパはおせっかいな母が目立つからと派手なオレンジ色をしている

歴史だけは重ねた我が家の門をくぐって近所のコンビニへと足を向け歩き始める


「ったくまち子のやつめ、、俺がうっかり転んで頭でも打ったらどうすんだ」


古民家と稲畑が広がるこの小さな町では最寄のコンビニまで歩いて30分かかる。


充電不要というメリットだけを切り取っていつまでも使い続けている有線イヤホンを装着。今日はA◯B48だ


「あいうぉんちゅー」


誰もいない田舎道では即席カラオケと化しており、雨の野暮ったい雰囲気を取り払った


「おっと、珍しい」


雨水で溢れた側溝から逃げるようにカタツムリの親子がノソノソと俺の前を通る


「やぁどうも、俺は先を急ぐよ」


雨の日にしか挨拶できない町民に声をかけ、足早に先を行く


「ふんふんふーん♪」


あと二つ信号を過ぎれば目当てのコンビニというところまで来ていた。


「おーい小雨ー!」


「おー、流鏑馬」


鎌倉武士のような名前の友人、流鏑馬やぶさめは高校の同級生。雨の日には毎回カタツムリ柄の傘をさしている


「こんなとこで何してるんだ?てか目立ちすぎだよそのカッパ」


「俺に言うなよな、このカッパは母さんの趣味だ。それにお前の傘も大概だぞ。俺は今からジャンプ買いに行こうと思ってるんだよ」


「なるほどね〜、僕も今週号持ってないから一緒に行くよ!」


「いいけど俺のA◯B48メドレーの邪魔するんじゃねぇーぞ?この時間だけが幸せなんだからな」


「はいはい、じゃあ僕もXJ◯PANメドレー聞くから邪魔しないよ」


派手なオレンジカッパとカタツムリ傘のコンビは何も話さずにただ音楽を聴きながら歩いて行く


牛乳瓶の看板が目印のコンビニへと到着した


ウィーン


「いらっしゃいませー」


店員が挨拶する


「ふぅ、店に入るとこのカッパ脱ぐかどうか迷うな」


「店内びちょぬれになるのもあれだし、脱いだら?」


「それもそうだな」


派手なカッパをコンビニの軒下に置き、カタツムリ柄の傘はすでに傘立てに置かれていた


「売り切れてないと良いね、ジ◯ンプ」


「売れ切れてたら俺が来た意味が無くなるからそれだけは勘弁だな」

  

マガジンコーナーへと歩く2人


「ねぇ小雨、これって先週号だよね?」


「ああ、そうだな」


「今日って何曜日だっけ」


「日曜日だな」


「もしかして、今週号はまだ売ってない?」


「ああ、そうだ」


それから同じようなやり取りを3回ほど繰り返した


ウィーン


「ありがとうございましたー」


オレンジ色の雨ガッパとカタツムリ柄の傘を取り、来た道を戻る


二つ目の信号機のあたりで流鏑馬とは分かれた


「またねー、明日買いに行きなよー」


「おう、またな」


足をあの古めかしい我が家へと向ける



道中、側溝は依然として溢れたままだった


カタツムリの親子はまだそこにいた


「やあどうも、どうやら先を急いでも意味はないらしい。人生ゆっくりが一番だね」


まるで自嘲するかのようにカタツムリへと話しかける


「それじゃ、またなお二人さん」


カタツムリの親子へと別れを告げて帰路に着く


「ただいまー」


肉じゃがの美味しそうな香りがただよっている


「おかえりなさい、ジ◯ンプは買えたの?」


居間の方から母さんがやってくる


「いや、明日だった。」


「あらそう、取り越し苦労ね」


長靴とオレンジ色のカッパを脱いでジャ◯プより重要なことを聞く


「ご飯、できてる?」


「できてるわよ、まち子呼んできてちょうだい」


ジ◯ンプを買えなかったことはどうでもよくなった


「はいよー」



雨宮家は今日も平和です。


おわり



小説って難しいね

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