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お兄様と共に断罪ルートを潰してみせます  作者: AAA
第一部

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9/19

第9話 「夜会と秘密のワルツ」

学院祭の夜。

煌びやかなシャンデリアの光が、ホールを照らす。

貴族子女たちの笑い声とワルツの音が、静かに混ざり合っていた。


セシリアは壁際で小さく息をついた。

(はぁ……なんとか今日も断罪されずに終わりそうです)


お兄様は会場の隅で腕を組み、警戒中。

王子リオネルは中央で社交の花形として踊り続け、

リリアは緊張気味にグラスを手にしていた。


完璧な平和。……の、はずだった。


「セシリア嬢」

「ひゃっ!? は、はいっ!?」

背後から現れたのは王子リオネル。

きらきらオーラ+微笑みの全力攻撃である。


「よければ一曲、私と踊ってもらえないかな」

「えっ!? だ、だめです!」

「どうして?」

「私、ダンス下手ですし……あと災害体質でして!」

「災害?」

「わたしが踊ると周囲がざわつく呪いが……っ!」


リオネルは困ったように笑った。

「君の冗談はいつも斬新だな」

「冗談じゃなくて真実ですぅ!!」


だが、もう遅い。

音楽が変わり、リオネルが彼女の手を取ってしまった。


(ああああああ! 触れられた! 触れた時点でフラグが!!)


彼の手は優しく、けれど迷いがない。

「君は思っていたよりも、軽やかだね」

「わ、わたし……いつの間にか歩いてました!?(逃げてるはずなのに!)」

「君と踊ると、世界が明るく見える」

「そ、それは照明のせいです!」


周囲がざわつく。

「殿下があのセシリア様と……!」

「まさか、まさかのペア!?」


(うわぁぁ……噂が量産されていくぅぅ……!!)


音楽が終わると同時に、静かな声が響いた。

「……楽しそうだな」


振り返ると、お兄様がいた。

笑顔だが、目が全然笑ってない。


「アーデルハイト殿、護衛任務中では?」

「護衛対象が王子と踊っていれば、監視対象も変わる」

「え、監視って言いました!? 今、監視って!!」


リオネルが少し挑むように微笑む。

「君の妹君は、本当に魅力的だ」

「……その言葉、撤回を」

「褒めただけだよ?」

「褒める対象を選ぶことをお勧めします」


(やめてぇぇ!! 静かな火花やめてぇぇ!!)


気まずい空気を察したのはリリアだった。

慌てて駆け寄る。

「セシリア様っ! お疲れでしょう!? こちらで少しお休みを!」

「リリアさん、救いの女神……!」


リリアはグラスを渡しながら、少しだけ頬を染めた。

「……今日のセシリア様、とても綺麗でした」

「ありがとうございます! でも、汗で前髪がはりついてて……」

「そういうところが、好き……じゃなくて! 素敵です!」

「えっ? いま好きって言いました?」

「言ってません!!」

(あ、リリア嬢、耳まで真っ赤になってる!?)


そんな平和な(?)やり取りのあと。

夜会も終盤、最後のワルツが流れる。


「セシー」

呼ばれて振り向くと、お兄様が立っていた。


「一曲だけ。俺とも踊れ」

「えっ!? お兄様まで!?」

「護衛の一環だ」

「それ護衛って言い張ります!?」


けれど——お兄様の手は、意外にも優しかった。

背筋を支えるその掌の温度が、静かに心臓を乱す。


「……お兄様?」

「お前は、本当に鈍い」

「え? なんの話ですか?」

「いや……なんでもない」


彼の笑みはいつもより穏やかで、少しだけ寂しそうだった。


(あれ……なんか、いつもと違う?)


ワルツが終わり、手が離れる。

その瞬間、セシリアは胸の奥がふっとざわついた。

けれど、理由は分からない。


「……お兄様?」

「気をつけて帰れ。風が冷たい」


そう言って踵を返す背中。

その姿に、ほんの一瞬だけ“寂しさ”を感じたことも——

本人はまだ、気づいていなかった。

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