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お兄様と共に断罪ルートを潰してみせます  作者: AAA
第一部

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8/19

第8話 「学院祭と護衛任務、そして気づかぬ修羅場」

学院祭当日。


「……お兄様、まさか本当に同行されるとは」

「言っただろう。護衛だ」

「でもお兄様、黒い軍服に銀の飾緒って、護衛というより……舞台の主役です」

「目立つ護衛は抑止力になる」

「(完全に目立ち目的では……)」


セシリアは内心ため息をついた。

断罪回避のため、地味に過ごすはずが——

お兄様がついてきたせいで注目の的になっている。


「見て、あの方がアーデルハイト公爵家のご子息よ」

「お兄様って呼んでるあの美人、妹さん?」

「本当は義兄妹らしいわよ」


(やめてください、噂の火種が! 燃えてる!)


◆屋外広場・王子の出店前。


リオネル王子が爽やかに笑いながら手を振った。

「セシリア嬢、来てくれたんだね」

「えっ!? いえ、通りすがりです!!」

「通りすがりにしては見事なタイミングだ」


横からアランが低い声を差し込む。

「……殿下、妹を見つける嗅覚が鋭すぎでは」

「偶然だよ」

「偶然が多すぎますね」


(お兄様、言葉にトゲが! トゲが出てます!!)


リオネルは苦笑して、軽く話題を変えた。

「学院祭、楽しめているかい? セシリア嬢」

「はい! とても平和で、まだ断罪もされていません!」

「……断罪?」

「え!? な、なんでもありません!!!」


(しまった、つい口が……!)


王子は小さく吹き出した。

「君と話していると飽きないな」


(それ誉めてない気がします!)


アランの眉がぴくりと動いた。

「殿下、妹をからかうのはご遠慮願いたい」

「からかっていないさ。むしろ興味がある」

「……興味?」

「彼女の考え方に、だよ」

「(お兄様、めっちゃ睨んでる……! 怖い!)」


◆一方そのころ。

屋台裏でリリアが屋台の花飾りを整えながら小声で呟く。


「セシリア様……今日もすごく綺麗」

隣の友人がにやにやしている。

「また見てる〜! リリアちゃん、まるで恋する乙女だねぇ」

「そ、そんなつもりじゃっ……!」

(いや、でも……見てるだけで胸が痛くなるのはなぜ……?)


その時。

人だかりの向こうで、アランと王子が軽く火花を散らしているのが見えた。


「……あれ、もしかして、修羅場……?」


◆昼過ぎ、広場の中央。


セシリアは王子の出店でティーサービスを手伝う羽目になっていた。


「セシリア嬢、カップをもうひとつ」

「は、はい!」

(まさか護衛に来たお兄様の目の前で働かされるとは……!)


アランは少し離れた場所で腕を組み、無表情で見守っている。

(守っているというより監視している……)


客の笑い声の中で、セシリアの背後からリオネルがそっと声をかけた。

「君、笑うとき本当に嬉しそうな顔をするね」

「えっ? あの、笑ってましたか? 営業スマイルですが」

「……君に“営業スマイル”は似合わない」

(ちょっとドキッとする言い方やめてください! シナリオ外なのに!!)


その瞬間、氷点下の気配がした。

視線の先に——お兄様。


(お兄様が笑ってない!! 笑ってるけど目が笑ってない!!)


「セシー、そろそろ休憩だ。こっちへ来い」

「ひゃいっ!?」


お兄様に手を引かれ、観客がどよめく。

(え、手を取られた!? しかも自然に!?)


裏庭に避難して一息。


「まったく……お前はトラブル体質だな」

「違います! 殿下が勝手に絡んできただけです!」

「“勝手に”絡まれる時点で問題だ」

「うう……」


アランはふと目を伏せ、囁くように言った。

「……お前が笑うと、周りが騒がしくなる」

「え?」

「皆、お前を見てる。俺も含めて」


(な、何そのセリフ!? お兄様、今ほんのり乙女ゲームの台詞みたいなこと言いました!?)


顔を赤くして固まるセシリアを見て、アランはふっと笑った。

「……何を想像してる」

「な、なんでもありません!!!」


その少し後、リリアが花束を抱えて現れた。

「セシリア様! 差し入れを……」

「あら、リリアさん! ありがとうございます!」

「い、いえ……アラン様の代わりに見張りを……じゃなくて、お手伝いをと思って……!」


アランがわずかに眉をひそめる。

王子が遠くからこちらを見つめる。

セシリアは花を抱えながら笑う。


——そしてその瞬間。

まわりの三人の心拍数が、同時に上がった。


誰も言葉にはしない。

けれど確かにそこには、ひとつの“戦場”が生まれていた。

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