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お兄様と共に断罪ルートを潰してみせます  作者: AAA
第二部

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第4話「嫉妬と微笑」

朝の訓練場。

青空の下、セシリアは魔法陣の調整をしていた。

魔法学の教師が言っていた通り、封印を保つには精密な魔力制御が必要だ。


「セシリア嬢、やはり手際がいいですね」


柔らかな声。

顔を上げると、そこにはエドワードが立っていた。

黒髪が陽光を受けて輝き、真っ直ぐな瞳が彼女を見つめている。


「え、えっと……まだ失敗ばかりです」

「そんなことはありません。あなたの努力は、誰よりも見えています」

「……あ、ありがとうございます」


自然と笑みがこぼれる。

だが、その瞬間――背後に“氷のような気配”が走った。

「……楽しそうだな、セシー」

「お兄様……!」


振り返ると、アランがそこにいた。

柔らかな笑み――のはずなのに、どこか張り詰めた空気がある。


エドワードが礼を取る。

「アラン殿。彼女の訓練を見ておりまして」

「そうか。ずいぶんと熱心なことだな」


声は穏やかだ。

けれど、セシリアの背筋にぞくりと冷たいものが走る。

「……お兄様?」

「いや、別に。ただ――妹を褒められるのは、悪くないと思ってな」

その口元の笑みが、妙に“壊れそうなほど静か”だった。

昼下がり。

訓練を終えたセシリアは中庭を歩く。

アランの様子が気になって、胸の中がもやもやしていた。


(お兄様……怒ってる? なんでだろう。私、何かした?)


「セシー」

また声がした。

今度は木陰に立つアランがいた。


「少し、いいか?」

「はい」


アランは静かに彼女の隣に腰を下ろす。

風が二人の間を通り抜けた。

「……あの騎士団長の息子。お前の訓練に付きっきりらしいな」

「え、えっと……はい。先生から、補助を頼まれて……」

「……そうか」


沈黙。

アランの手が、セシリアの髪に触れた。

そっと、指先で一房をすくい上げる。


「……お前が他の男に笑いかけるたび、胸が焼けるようだ」


セシリアは一瞬、言葉を失った。

「え……お、お兄様?」

「いや、忘れろ」

アランは手を離し、目を伏せた。


夜。

アランの中で、再び魔王が囁く。

『嫉妬だな。美しい感情だ。お前の闇が、また少し育った』

「……黙れ」

『だが認めたほうが楽だろう? 彼女を他人に渡す気などないのだろう』

「違う……俺は、そんなつもりじゃ……」

『では、なぜ苦しい? なぜ笑顔を見るたび心が疼く?』


沈黙。

アランは拳を握り締めた。

「俺は、妹を……守りたいだけだ」

『守りたい? ならばその笑顔を独り占めしろ。

 お前が望むまま、俺が力を貸そう』


魔王の声が闇に溶ける。

その瞬間、アランの瞳が微かに赤く光った。


翌朝。

セシリアは学院の渡り廊下でアランとすれ違った。


「お兄様、おはようございます!」

「……おはよう、セシリア」


彼の声はいつもより低く、熱を帯びている。

ほんの一瞬――その瞳の奥に赤い光がちらりと走った。


(え……? 気のせい?)

セシリアは小さく首をかしげた。

胸の鼓動が、なぜか落ち着かない。


アランはゆっくりと微笑む。

「……今日も綺麗だな」


セシリアは顔を真っ赤にして、思わずうつむいた。

そして、知らない。

その瞬間、アランの心の奥で、魔王が満足げに笑っていたことを――。

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