第17話 「恋と安心の午後」
学園の庭園に、静かな午後の光が差し込む。
セシリアはベンチに座り、手にした本に目を落としていたが、心ここにあらず。
(……お兄様……本当に私のこと……?)
昨日のアランの言葉が、まだ胸の奥で柔らかく響いていた。
「誰よりも、君を守る。そして必ず、そばに置く」
その言葉に、セシリアの頬は自然と赤く染まり、手元の本を握る指先が小さく震える。
(……そんなこと、現実であっていいの……?)
アランは庭園の小道をゆっくり歩きながら、セシリアにそっと近づく。
「……セシー、心配事はないか?」
「え、あ……はい……」
天然な声ながらも、心臓は早鐘のように打つ。
アランは微かに笑みを浮かべ、手を差し伸べる。
「なら、いい。今日からは、何があっても俺がそばにいる」
セシリアはその手の温もりに思わず息を飲む。
(……お兄様と……こんなに近くに……胸が……)
庭園の片隅に立つ石像を見つめながら、アランは低くつぶやく。
「……闇のゲージも、順調に落ち着いているな。セシリアの感情の乱れも、今のところ大丈夫そうだ」
セシリアは首を傾げ、まだ理解しきれない表情でつぶやく。
「え……闇のゲージ……?」
アランは少し眉をひそめ、無意識に口を滑らせたことに気づくが、言葉を濁す。
アランは軽く肩を叩く。
「……細かいことは気にするな。重要なのは、君の安全と、二人の未来だ」
その言葉に、セシリアは心の奥の不安がふっと軽くなるのを感じた。
(……お兄様がいれば、怖いことも、もう……ない……?)
セシリアは自然に微笑み、アランの腕にそっと手を触れる。
アランはその手を優しく握り返し、軽く微笑む。
「……今日も無事だな」
「はい、お兄様と一緒なら、何も怖くないです。」
夕陽に染まる庭園の中、二人の距離は自然に縮まり、静かな幸福に包まれる。
過去の誘拐事件や婚約の噂も、今では二人の絆を確認するきっかけとなっていた。
(……お兄様……これからもずっと……私のそばに……)
セシリアの胸の高鳴りは、もう抑えきれない。
アランもまた、静かに心の中で誓った。
「誰よりも、必ず君を守る。そして、絶対に渡さない」
夕陽が二人の影を長く伸ばす中、学園に静かで確かな平穏が戻っているように見えた。
断罪イベントは回避され、二人の未来はゆっくりと、しかし確実に始まろうとしていた。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
評価ポイントやブックマークして頂けますと、励みになります。
また、続きの2部はnoteにて先に公開されております。
マイページにリンクがあるので、合わせてぜひよろしくお願いします!




