第14話 「お兄様とお出かけ」
学園の昼下がり。教室の窓から柔らかい日差しが差し込む中、セシリアはノートを手にしていた。
「ふむ……今日の修行予定は……でも、少し休憩してもいいかもしれないわね」
天然な彼女は、修行と日常の切り替えが曖昧だ。
そのとき、静かにドアが開き、アランが顔を覗かせる。
「……セシー、今日は少し外に出てみないか?」
セシリアの目がぱっと輝く。
「お兄様、お出かけですか?」
アランは微かに笑みを浮かべ、頷く。
「そうだ。たまには学院の外で息抜きも必要だろう」
「わぁ……楽しみです!」
セシリアは嬉しそうに飛び跳ね、後ろ姿に心臓が少し早鐘のように打つのを感じた。
(……お兄様と一緒に歩くだけで、なんだか胸が……熱くなる……)
自分でも理由はわからない。だが、なぜか胸の奥がじんわり温かくなるのを感じる。
街に着くと、セシリアは目移りするものすべてに興味津々で、小走りに店を覗き込む。
「あのお菓子屋さん、かわいい! あ、あそこの雑貨屋さんも!!」
「……セシーは全力で目移りするな」
アランは苦笑しながらも、しっかりと手を差し伸べ、転ばないよう支える。
セシリアの心臓は、アランの手の温もりにぴくりと反応する。
(……手を握られてるだけで、なんだかドキドキする……お兄様って……やっぱりすごい……)
天然ながらも、自分でも少し恥ずかしい気持ちが込み上げる。
二人はカフェの窓際に座り、紅茶を前にほっと一息。
「お兄様、外に出るのって楽しいですね!」
「そうだな……」
アランは一瞬真剣な表情になる。
「……セシー、無茶をするな。あの時のことを忘れたわけじゃない」
セシリアの顔がわずかに強張る。
「あの時……?」
アランは視線をそらし、低く語る。
「昔、君が誘拐されたことがあっただろう。あのとき、俺は全力で君を守れなかった……だから、今は必ずそばにいる」
セシリアは胸がぎゅっとなるのを感じる。
(お兄様……いつも私を守ってくれる……そして顔がいい……)
小さく笑いながらも、心臓は高鳴り、頬が少し赤くなる。
「……お兄様、ありがとうございます」
天然に言葉にする彼女の声は、少し震えていた。
帰り道、セシリアがふと目を輝かせる。
「お兄様、あそこに猫が!」
「危ない、道路に飛び出すな!」
セシリアは小走りで猫に近づこうとし、アランは慌てて追いかける。
「こんなに危なっかしいと、1秒たりとも離してやれなくなるぞ。」
そう言ってアランは、セシリアの手を強く握って引き寄せた。
アランの腕に触れるたび、セシリアの胸は小さく跳ねる。
(……お兄様の腕の中にいると、なんだか安心する……そして……顔がいい……)




