第11話 「恋の気配で上昇!? 魔王復活の兆しと断罪回避大作戦」
学院の朝。
セシリアはノートを抱え、廊下を歩きながら眉をひそめる。
昨日からなぜか、うっすらとゲージのようなものが見えるようになったのだ。
おそらくこれは、ゲーム内のパラメータ、闇ゲージと呼ばれるものに違いない。
闇ゲージが100%まで達すると、魔王が復活してしまうという設定だった。
「……ふむ、状況整理」
「リリアさんが誰かに恋している……
それによって闇ゲージが上がっている!」
(誰に向けられた恋かはわからないけど、恋心そのものは把握できる……!)
「これは危険です! 断罪回避どころか、魔王復活フラグが立ちかねません!」
セシリアは廊下を全力疾走。
通りすがる生徒たちはまたしても目を丸くする。
「セシリア様!? また何か……!」
「魔王フラグです!!」
リリアが教室の窓辺で花壇の手入れをしている。
セシリアが息を切らしながら駆け寄る。
「リリアさん! 大変です! 闇ゲージが急上昇しています!!」
「えっ……?」
「誰かが誰かに恋をしているせいです! おそらくあなたの恋心が原因……」
「えっ、私の恋心?」
「……いや、誰に向けての恋かはわかりません!」
リリアはぽかんとして、頬を赤らめる。
セシリアは天然鈍感のまま、
「誰に向けての恋かは不明だけど、魔王復活を防ぐため全力で行動しなければ!」
セシリアはリリアの周囲を警戒する。
「誰かに恋をされている……魔王フラグに関係している!」
「……私?」
「はい! でも誰に向けられた恋かはわかりません!!」
その背後で王子リオネルが軽やかに登場。
「セシリア嬢、また騒いでるね」
「王子殿下、魔王フラグが!」
「魔王?」
「誰かの恋心で闇ゲージが上昇しているんです!!」
王子はくすくす笑う。
「……君は全力だな。見ていて飽きない」
セシリアはさらに慌てて図書館へ向かって走り出す。
セシリアは資料を広げ、ゲージの上昇を分析する。
「数百年前、女神に封印された魔王……
封印解除には闇ゲージ100%必要。
現在、誰かの恋心によって30%上昇」
アランが静かに登場。
「……セシー、また大騒ぎか」
「お兄様! 魔王が!」
「誰が誰を……?」
「それは……わかりません! でも上がっています!!」
アランはため息混じりに肩を叩く。
「……俺がついてる限り、お前は守れる」
リリアが花の手入れをしていると、セシリアが全力疾走で飛び込む。
「リリアさん! 危険です! 闇ゲージがさらに上昇中!」
「え、私……?」
「誰かの恋心による影響です!!」
「……そ、そうですか……」
庭の石像が赤く光る。
セシリアは慌てて聖水を取り出す。
「退魔っ!!」
「やめて! 服が濡れる!!」
リリアと王子が同時に叫ぶ。
アランは遠くでため息。
「……妹、今日も全力で空回ってるな」
(でも少し楽しそうでもある……)
月明かりの下、セシリアは疲れた顔で座る。
アランがそっと寄り添い、手を取る。
「……今日も無事だったな」
「はい……魔王フラグもなんとか30%で抑えました」
「……俺がついてる限り、何とかなる」
「お兄様……」
セシリアはまだ天然にぼんやり笑う。
アランの目には静かに炎が灯る。
(お前が俺のそばにいる限り、誰にも渡さない……)
本人は意味を理解していない。
ただ「安心するなぁ」と思っただけだった。




