色情霊
んっふぁ……
あふ……
なんとも重く湿った空気が部屋を満たしている。
あっあふーー
んん……
厚手のカーテンで薄暗く締めきった部屋にジジジ……と、古ぼけた蛍光灯が瞬いた。
汗と埃の臭いが入り混じった部屋に、花の腐ったような甘い匂いが混じり、顔をしかめたくなる。
んむっは
部屋の中に、なんとも淫猥な吐息が漏れた。
はっ、はっむんあぁぁ
ァァァあああぁ〜!
発情した猫のような絶叫が迸ると、白いブリーフ姿の男がベッドの上で大きく身をよじらせた。
ギシギシと、シングルのパイプベッドが壊れそうなほど軋む。
はふはふはふ、はぁぁ〜ん
おふ。
信楽焼のタヌキのような腹を突きだした脂ぎった男が、まるでセクシー女優のように身をくねらせ喘ぎ声を迸らせる。
だが、当然のことながらその声は艶のある色っぽい声などではない。焼酎焼けした野太い中年男のものだ。
そんな信楽焼のタヌキのような男が、まるでAV女優にでもなりきっているかのように、薄くなった髪を振り乱し腰を大きく突き上げる。
壁際にある安いパイプベッドが、ギシギシと軋みをあげた。果たしてこの狂態が終わるのとベッドが壊れるのはどちらが先だろうか。
男がベッドの上で身をよじるたびに、フレームの四隅でなにやら白い紙がひらひらと揺れる。
細い竹がベッドの四隅にしびりつけられ、その上に白い紙を折ったもの…紙垂が挟んである。
その細い竹の外がわを、ぐるりと一周囲んでしめ縄のようなものが結ばれていた。
それはベッドに張られた結界だった。
信楽焼の男はその中でひとり狂ったように痴態を演じているのだ。
「あんた…こんなになっちまって」
その様子を部屋の隅に立ち、金浦兼子は痛ましい眼で見つめていた。