異世界にプールがないので作りました
なろうラジオ大賞6 参加作品です。
テーマは「プール」
泳ぐことが何よりも好きだった私は、大学に進学しても水泳部に所属するほど。そして夏休みは、プールの監視員のバイトをするまでの水泳女子。
あっ! 男の子が溺れてる!
私はすぐさま飛び込み、暴れる男の子をすくい上げる。
そして……
気がついたら異世界だった。
あぁ……私、溺れ死んだんだな。
ここから私の第二の人生が始まった。
貧しい男爵家の娘として産まれた私は、この世界でも水泳がしたくて、幼い頃から町の子たちとともに川で泳ぎまくる。
「なんてはしたない!」
「下賤な者と川に入るなんて!」
「人前で肌をさらすなんて!」
散々、周囲から怒鳴られる毎日。
だって、泳ぎたいんだもん。
この世界、プールも水着もない。
仕方なしに薄着で川に入るしかない。
そんな生活が続き、年頃の娘になると、
「お前、いい加減にしろ!
そんなことだから婚約もされないんだ!
我が家の恥だ! もう出て行け!」
追い出された。
私は彷徨った果てに、水の都と呼ばれる王国へと辿り着いた。
そこは水源が豊富で、馬車道よりも水路が発達し、運河が張り巡らされていた。
もちろん皆、泳ぎは達者で、常夏の環境も影響してか、水路で泳ぐ人が絶えなかった。
なにこの国!
まるで天国じゃない!
迷わず私はここに移り住んだ。
そして生活が安定したら一大決心して、屋内プールを建設することに!
空き倉庫を改造して作ったプール。
水着は、布に水を弾く魔法をかけて作成。
天候や昼夜関係なく入れるプールに利用者殺到!
しかも魅惑的な水着姿の女性により、おっさんもホイホイ!
なにより、私自身が泳げる喜び!
私はそこで水泳教室を開き、競泳の面白さを教えた。
そんなある日、この王国の大臣が訪ねてきた。
「実はお前に頼みがあってだな」
「はい?」
そう言ってもう一人現れた人物は……
若く麗しい、この国の王子様!
「これは秘密だが、陛下はこの国の王族にも関わらず、水が苦手なのだ。泳ぎを指導してくれぬか?」
それは致命的ね。
王子様が恥ずかしそうに口を開く。
「昔、プールで溺れたトラウマがあり……」
プールで?溺れて?
「もしや、王子様は?」
「君は! あの時のお姉さん!?」
そっか、二人とも助からなかったんだ。
でもこの世界で……
「会いたかったよ! 君が側にいてくれたら心強い!」
命の恩人と称えられた私は、
そのまま王宮まで連れてかれ?
泳ぎを教える中で?
「僕の妃となってくれないか?」
「こ、婚約!?」
嬉しすぎて目が泳いでしまう!
あぁ、王子様の愛で溺れそう!